66.普通の馬じゃなかったのか……
「はーい、皆のウンディーネさんだよーん。呼ばれてないのにじゃじゃじゃじゃーんっ!!」
突如、泉が渦巻き水柱が飛び出す。
驚く馬が立ち上がり、イケメン河童が落下して来た水に直撃してずぶ濡れになる。
やだ、水も滴る良い男っ!?
河童だからずぶ濡れになっても全く気にしていらっしゃらない。
水柱から薔薇のような花が水でできあがり。それがゆっくりと花開いて行く。そして、中央からせり上がるように現れた水で出来た人型生物。
髪の部分やら顔の部分やら肌の部分やらといろいろ別れてるみたいだけど構成物質全部水なので透明な女の子としか認識できません。
「おっまたせー。皆のアイドルぅウンディーネさんだよーっ!!」
アイドル? アイドル……まぁ可愛らしい女の子に見えるけども?
水で出来てるからイマイチわかりづらいというか、透明過ぎるというか。
「ディーネが輝く場所があるんでしょ? マネージャーさん。ディーネなら脅かすいたずらいろいろ考えてあるよ! しかもこんなに、か・わ・い・い。きゃーっ。やるじゃんマネージャーさん。お買い得ぅー。ディーネをテイムできるなんて滅茶苦茶幸運なんだからねーっ」
はて、幸運も何も自分から勝手に仲間になりに来てませんでした?
「ふむ。では俺は用事が終わったと見ていいかな? ツチノコよ、また酒でも酌み交わそう」
「シャーっ」
ツチノコさんがばいばい。と告げるように全身を左右に揺らす。
イケメン河童が去っていき、泉には姦しい自称アイドルと白い角生えた馬。そして俺達だけが残った。
「えーっと、とりあえずテイム出来たってことでいいんだろうか?」
「また変わったのが仲間になったわね。精霊ウンディーネ。まさかこの泉に住み付いていたとはねー」
「知っているのかテケテケさん」
「さすがに名前しか知らないわよ。詳しくは輝に聞きなさいよ。おねーさんは管轄外の事は知りませーん」
お手上げ状態のテケテケさん。霊体化してるからか地面から少し浮いているようだ。
手、地面に着けてなくても浮けるのかよ!?
「ねぇねぇねぇねぇ。ディーネのデビューはいつ? いつやるの? 今よね? 今だよね。今でしょ! あ。でも枕営業はしないからねっ。ディーネは清純派アイドルなのよっ」
知らんがな。
「デビュー云々は置いといて、肝試しはもうすぐかな。とりあえず。これからよろしく」
「はーい。握手は30秒ですよー。それ以上はお金取ります」
なんでだよ!?
アイドルの癖にセコいな。
即座に握手を終えたので無料だった。
ちぇーっとウンディーネが残念がる。マネージャー呼ばわりするなら金取るなよ。
「あ。ディーネ移動の際水場が必要になるから空きビンがあるならここの水汲んでおいてほしーな。マネージャーさんにぃディーネの、お・ね・が・い」
にゃーっ!? 耳元で囁くなっ!? 今ぞわっと来たわっ。
美少女にされたことだけど流体なうえに水だから冷気というか水気が声と共に入って来てなんとも……
あ、あぶねぇ、変な扉一瞬開きかけた気がする。
「きゃははははっ」
「精霊はいたずら好き、みたいね」
あー、だから肝試しと聞いて味方になりに来た訳か。
「とりあえず人材一人確保出来たし、神社に行くか」
まだ稲荷さんが無反応のままだから戦闘中みたいだし。上手くいけば決着前に着けたりしないだろうか?
「それじゃー、お邪魔しましたー」
未だにリラックスモードの馬が居残っていたので、一先ず退出する旨を伝えておく。
すると、何故か立ち上がる馬。
だんだん近づく馬に一瞬困惑するテケテケさんだったが、敵意が無かったからだろう。攻撃はせずに放置することにしたらしい。
そして馬は俺の目の前に。
ん? なんすか?
―― ユニコーンの角を貰った! ――
何か貰った!?
用事が済んだようで馬は再び先程の位置まで戻ると、その場に座り込む。
うとうとと昼寝を始めてしまった。
うん、まぁあんまり騒がしくして起こしてもアレだからさっさとお暇しよう。
というか、ユニコーンだったのかよ。
名前見て思い出したわ。
でもユニコーンって処女の前にしか現れないんじゃなかったのか?
まぁゲームだからその辺りは普通の馬みたいなものなのかもしれないけど。
ユニコーンの角ねぇ。鑑定っと……
名前:ユニコーンの角(真)
区分:素材・聖具
使用効果:あらゆる難病を快癒させ、使用者に祝福を与える。
追記:乱獲による入手ではなく、ユニコーンより貰い受けた、効果が最大級の角
え、これ貰っちゃっていい奴? 大丈夫?
こんな最初の方の日に手に入れたらダメな奴じゃね?
これは馬さん映像から省いとかないと不味そうだな。
泉で河童さんとか映すのはいいけど馬さん部分は全部カットしておこう。




