64.新しい味方を探そう
マイネさんと未知なるモノさんと別れた俺は、一先ず自室へと戻ることにした。
手に入れたアイテム二つを自宅の倉庫に放り込むためと、ついでにこれからの方針を決めるためだ。
折角イベントで体験する側から脅かす側になったのだから、ハナコさんとテケテケさんだけ、というよりはなんか新しい幽霊さんを引きつれて、なんて感じがいいのではなかろうか。と思いましてですね。
「えー、というわけで、新しい幽霊仲間を手に入れようと思います。皆さん誰かいい悪霊とか知ってませんか?」
「さすがに知らないかなぁ」
「んー。おねーさんも学校の幽霊しか分かんないわ」
「西の山の中腹以降に居る幽霊とかどうじゃ? ヒロキさえ命を掛ければ行けなくは無いぞ?」
「そこはまださすがにレベルが足りないと思うので」
「シャー」
「ん? そうじゃなぁ。ヒロキよ、別に霊でなくばならない、訳ではないのだろう?」
「そりゃまぁ脅かす側としてふさわしければ幽霊じゃなくてもいいけども?」
「ツチノコが当てがあるようじゃぞ」
「ほほぅ、ツチノコさんの知り合いか。折角だし最初に尋ねてみようか。あとは輝君に聞いてみるくらいかなぁ」
「何体くらい味方にする予定なの?」
「んー。でも七日もあるからなぁ。少なくとも三体くらいは欲しいかなぁ」
「そんなに要らない気もするけど、まぁいっか」
「とりあえず探すだけ探してみましょうか」
と、自室で会議を開いた後は再び外へ。昼の部開始である。
まずは先程決まったようにツチノコさんの心当たりを探す事にする。
肝試しに使えそうな人材なら頼み込んでテイムだな。
最悪ハナコさんたちの実力ゴリ押しで追い込んで強制テイムをする必要もあるかもしれない。
まずはツチノコさんがシャーシャーと案内してくれたので、西の山の道を外れて山の中を移動。
テケテケさんがフォローしてくれるから安心だけど、熊とか出てきたら普通は詰むらしいからなぁ。恐ろしいよ山林獣道。
そういえば幽霊埋め尽くすほどいたはずなのに殆ど居なくなってるなぁ。
出会った浮遊霊もハナコさんがにこやかに挨拶すれば頷くように挨拶してくるし。
あ、鹿がいる。
じぃっとこちらを見つめる鹿はかなり高い位置にいる。
あちらに向うとすぐに逃げるんだろうなぁ。
ツチノコさんが指し示す方向は別の方角だけどね。
鹿に見守られながら俺達は森の中を歩く。
お、兎が逃げてった。
別に狩る気は無いのでそのまま放置だ。
森の中初めて入ったけど、意外と野性動物いるなぁ。
そして虫系は殆ど居ない。と。
ゲームだから小さすぎる生物を大量に配置すると処理落ちするから省いたんだろう。
クワガタはいるわけだし、どっかで虫捕まえることくらいは出来るはずだろうけど、おそらく木に蜜を付けたらとかの条件でしか出会えないんだと思われる。
そのぶん浮遊霊はいっぱいいるけどな。
悪霊の中でも凶悪な浮遊霊はハナコさんの挨拶無視して攻撃してくるんだ。
テケテケさんに狩られてるけど。
「意外と掛かって来るの少ないわね」
「ここの悪霊どもは基本儂の神社に屯っとるからのぅ」
ということは、あの埋め尽くすほどの幽霊たちは俺が居なくなった後再び神社に群がりだした訳か。
なんなんだろうなアレ? イベントなのだろうか? イベントだとしても恐らく現状では攻略不可能な奴だろうけども。
「シャー」
ん? こっちか? おお、なんか開けた場所に。
現れたのは泉のある広場だった。
滅多に人がいないからだろう。泉の傍に白い馬が一頭リラックスしていらっしゃった。
俺が来たことでびくっとした様子だが、馬には興味無いので放置。
俺達が馬を目的に来たわけじゃないと理解したようで、そのままその場に寝そべりだした。
「んで、ツチノコさん。ここにいるのか? その知り合いってのは」
「シャー」
俺の肩から降りて、水辺に転がるツチノコさん。
湖向けてしゃーしゃーと鳴く事しばし。
湖からばさぁっと顔をだしたのは……河童だ。
え? マジで河童じゃん。緑の肌に頭の上に皿。背中に甲羅あるし、なんか瓢箪みたいな酒瓶持ってるぞ。
きゅうり持ってないけど友好的に会話できるだろうか?
「ツチノコ殿に呼ばれて来て見れば、人間? どういう状況だ?」
「あ、話通じるんすね。初めまして河童さん。実は……」
俺はすぐさま今回の用件を伝えていく。
自己紹介せずに戦闘になって尻小玉抜かれても困るし、早めに用件を伝えた方がいいと思ったのである。
それは正解だったようで。こちらへの敵意は欠片もなく、腕を組んで唸りだす河童。
意外とスレンダーで背が高い。そしてイケメン系だ。嘴なのにイケメン系って逆に笑えてくるんだけど。
この河童、強そうだ。
鑑定してみたいけど、輝君の話だと意思あり系生物で敵対してない存在に無断で使用すると確実に敵意向けられるらしいから今は我慢である。
「ふむ。イベントで肝試しの脅かし役か。河童が役に立つとも思えんが?」
「ダメそうっすか?」
「暇してる奴はいるだろうが、河童の特性が肝試しに役立つか?」
うーん。腕が伸びるとか?
「一応仲間には聞いてみるが、期待はするな。しばし待つがいい」
と、泉の中へと再び潜っていく河童。期待は薄そうである。




