63.クリア報酬?
「う、うぅん、気を失ってたみたいだ」
「なんか胸に穴が空いた記憶が、気のせいかな?」
なんとか嗣朗と呉弟栖だけは生還させられた。
残念ながら残りの二体はゾンビ化して即行天に召されたので手の施しようがなかったのだ。
「なんか、複雑ね」
「一万円浮いたと思えばいいんだ。それ以外は考えちゃダメだと思う」
神父さんにお礼をいって教会を出た俺達は、ハナコさんと合流して嗣朗と呉弟栖を家まで送ることにした。
といっても選択肢の住宅街を選んで飛べば勝手にこいつ等の自宅前に跳ぶからすぐなんだけどね。
「いやー、なんか長い間帰ってなかった気がするよ。今日は遊んでくれてありがとな」
今日じゃ、ないんだけどなぁ。かくれんぼしたの。
「これ、友達の証って奴だね。貰ってくれよ」
―― 特殊アイテム、クワガタムシを手に入れた! ――
アイテム!?
嗣朗と別れた後はすぐに呉弟栖の家へと跳ぶ。
おお、なんか滅茶苦茶凄い家だな。高級住宅じゃん。
こういう家、住みたいなぁ。
「今日はありがとね。朱莉ちゃんたちが居ないけど無事帰ったんだっけ? まぁいいや、僕からはこれを」
―― 特殊アイテム 超限定生産プレミアムプラモデルを手に入れた! ――
なんかすげーの手に入った!?
「まぁあの二人蘇生させたのはヒロキンさんだし」
「さすがに二万だしたヒロキからそれは貰えねぇよ」
「でも、宇宙船もこれも、ってなるとなんか悪い気が……」
「二万円で買った商品だと思えばいいんだよ」
「そうそう、私達出さなかったから本来失うはずの一万円浮いた訳だし。充分充分」
まぁモメる訳じゃないからむしろありがたいんだけど、なんか申し訳ない気になるなぁ。
これは宇宙船早めに操作覚えて空の旅くらい連れて行ってあげないとだな。
とりあえず宇宙船出せる場所を輝君に聞いてみるか。
「ん? おい二人とも、なんか運営からお知らせ来てんぞ」
「え? あ、ほんとだ」
「なになに? あ、イベントの告知かぁ。これってやっぱり戦闘職取ってないプレイヤーは不参加になるのかな?」
『あー、それは大丈夫、そっちはそっちで別のイベントらしいわよ。確か西の山に遠足じゃなかったかしら』
ほのぼのしてんなぁ。神社参りと遠足かな? 稲荷さんの神社に参ってお弁当食べて帰って来るくらいの簡単なイベントらしい。
ほのぼのとした人生を送りたい場合は確かにソレでいいとおもうよ。
さて、そっちはそっちで楽しんでもらうとして、俺達戦闘スキルを持つメンバーを待ちうけるイベントは……各学校での肝試し? 普段は即死フラグとかがある夜の学校が、このイベント中の時だけ死亡無しになる。
へー。スタンプラリーみたいなイベントみたいだな。
学校の七不思議を巡って戻ってくるイベントのようだ。
安全に見回れるならこの時期まで探索は控えようかな。
幽霊たちは脅かすだけの役割となり、驚けば驚くほど正気度ポイントが減り、手持ちの正気度ポイントを使い切ると気絶。その日のイベントはそれ以上参加できなくなるらしい。
七日間を掛けて回れるらしいんだけど、一日で回れるんじゃないの? 七日も必要か?
「面白そうじゃない。お化け屋敷みたいなもんでしょ。普段は攻撃的な幽霊が脅かすだけになるんならそこまで恐くなさそうだし」
「あー、俺は中学校のしか参加できないのか。ヤミコさんとかいろいろあるみたいだし、取り合ず巡るだけ巡ってみるか。あ、違うな。一応全部回ることはできるのか。最初に自分のとこクリアしないとダメみたいだが」
……うーむ。二人はただ巡るだけのようだな。つまり、俺に来た通知は彼らとは違うってことか。
どうやら俺の場合ボスキャラというか脅かす側のテケテケさんやハナコさんをテイムしちゃってるので脅かす側やってもらえないか、という依頼が来ちゃっているのだ。
しかも報酬もでるらしい。
「どう思いますハナコさん?」
『もともと私はこれやる予定だったから問題無いわよ。それにヒロキの場合だと普通に回りそうだから面白いイベントにはならないんじゃないかしら?』
「それもそうですね。んじゃ、お願いしますっと」
了承して送っておいた。
これで俺は最初のイベントを脅かす側で行うことになるのだ。
んー。そうだ。折角だし運営さんに提案してみよう。
うわ、秒で返信来ちゃった。
「あー、未知なるモノさん、ちょっといいっすか?」
「ん? 俺にか?」
「あ、じゃあ私はちょっと落ちますね。勉強しなきゃ」
どうでもいいけど、今って朝から昼にかけての時間だよな。マイネさん学生? どこからアクセスしてるんだろう? まさか授業中にフルダイブゲームしてる訳じゃないよな?
「んで、俺になにか用事か?」
「あ、そうそう、運営から提案が来たんすけど、折角だし未知なるモノさんも推薦して見たんですよ。どうですこれ、参加します?」
「これは……おいおい、俺がこっち側に行っちまったら、正気度なんざ即死しちまうぜ?」
俺達は互いに顔を見合わせニタリと微笑んだ。
互いに手を差し出しがっちりと握手する。
ここに史上最悪の肝試しチームが結成されたのである。




