627.第三回イベント、十八日目巨大人型兵器大決戦6
「やりやがったっ!!」
応援とバフを送り続けるだけのプレイヤーたちは、エルエさんエクスカイザーに捕まってしまったタンク役の彼にはらはらしながら見守っていた。
そして、ついに未知なる肉塊の触手が彼を掴んでいたエルエさんの腕を粉砕したのだ。
思わず歓声が上がり、その場で喜び合うプレイヤーたち。
美少女二人が両手を組んでぴょんぴょんと喜ぶ姿に周囲の男性陣が思わず胸に集中する。
「って、こら、どこ見てんのよ!?」
「すまんつい、というかあのタンクどうなった!?」
「見ろ、まだ生きてる!」
エルエさんの巨大な腕が落下していき、ふら付きながらもトリモチに体を引っ付かせたおかげで落ちることなくエルエさんの頭にくっついているタンク役の少年が見えた。
彼はすぐにかぶりを振ると、盾を構えてタウントを発動する。
「マジかよ。あの状況で粘るのか!?」
「めっちゃカッコイイ、俺がやりたかったアレ」
「クソ、今回のMVP絶対アイツだろ。未知なるモノさんじゃ俺納得しねぇぞ」
「まだ終わりじゃないのよ、ほら皆、バフ続けて!」
歓声も冷めやらぬまま、プレイヤーたちは再びバフの付与を開始する。
タンク役にもバフは入るが、微々たるものだ。
未知なる肉塊のステータスが上がれば彼が同様にステータス増加をしてもその差は月と鼈。バフを盛るほど差は広がり、それはそのまま肉塊から受けるダメージへと直結する。
直撃を受ければ確実死。
それをタンク役の彼はパリィと見切りで躱していく。
当然、何度か食らうことはある、それでも直撃を避け、攻撃を逸らし、ダメージを分散して生き残る。
アイテムを駆使して体力を回復させ、さらにエルエさんへのダメージを積み重ねていく。
エルエさんも必死に戦うが、腕一本の消失はかなりの損失だった。
未知なる肉塊二体を相手に、片腕で必死に戦うも、足を破壊され、残りの腕を破壊され、徐々に巨大なエルエさんエクスカイザーが解体されていく。
当然未知なる肉塊もダメージを積み重ねているのだが、こちらは自動回復量がものすごく高いおかげで致命傷さえ受けなければ自己再生してくれる。
おかげで今もまだ二体存在したまま戦えていた。
特に二体が連携するような連撃をしているのが幸運ともいえる。
おかげでエルエさんからの反撃を潰せているのだ。
もちろん肩や背中から飛び出すミサイルや口から飛び出す破壊光線は防げないが、物理的な斬撃などを潰せているので未知なる肉塊の致命傷が発生していないのだ。
これなら勝てる。
皆がそんな思いを抱いた時だった。
未知なる肉塊の触手たちがエルエさんエクスカイザーの胴体に巻き付く。
完全に締め付け破壊態勢に移行する未知なる肉塊。
ここまでくればタウントを使う必要すらなくなる。
エルエさんエクスカイザーの敗北だ。
皆、そう思ったし、亀裂が増えていくエルエさんエクスカイザーの耐久値がもうなくなるのは確定だった。
まさか、そんな奥の手を使ってくるなんて、理解はしていてもこの時の誰も、思いはしなかったのだ。
粉砕される、その刹那。エルエさんエクスカイザーの全身が光り輝く。亀裂から漏れ出た光は奔流と化し、エルエさんエクスカイザーの内側から膨れ上がった。
「あ、タンクさん死んだわアレ」
いち早く気づいたプレイヤーが思わず呟く。
そして、エルエさんエクスカイザーは……自爆した。
内側から溢れ出すように破裂したエルエさんエクスカイザー。
周囲から音を消し飛ばし、光で全てを覆い尽くす。
衝撃波が木々を吹き飛ばし岩を剥がし、空気を震わせる。
衝撃音がプレイヤーたちを仰け反らせる時には、エルエさんの居た場所は爆炎に包まれ、天高く立ち上る爆煙が髑髏雲を描いていた。
「うわーお、浪漫武器……」
「たーまやー」
「かーぎやー」
「やーおやー」
「タンク役、生存は絶望的か……」
「メール来たぞ。死に戻ったって。向こう何が起こったかわからず混乱してるみたいだ」
「未知なる肉塊どうした!?」
「未知なるモノさんも死に戻ってる。アンデッドは……」
「あー、こっちも消えたみたいです。枠が空きました」
つまり、エルエさんエクスカイザーへの対抗策がなくなった。
「はっ!? エルエさんは!?」
「自爆したはず、でもアレはエルエさんが吸収した武具、すぐに生成されるかも!?」
「行くぞ爆心地へ! あとは俺らの仕事だ、絶対にここを解放する!!」
「格ゲー少女ちゃん、先行頼む」
「はい、おちゃらけ大根さんも全体指揮お願いしますね」
「やだよぅこいつら俺の話聞かないもん」
プレイヤーたちはいっせいに爆心地へと走り出す。
そこには必ずエルエさんが居るはずだ。
死んだかどうかの確認もしなければならない。
果たして、そこには……




