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623.第三回イベント、十八日目降福妖精地雷原5

 死に戻ったマイネは、スタート地点に戻ってきていた。

 まさか再戦数秒で死に戻ることになろうとは想定もしていなかっただけにただただ茫然とその場で佇むしかできなかった。


「あ、マイネさん早かったね」


「行ってすぐ戻ったあるか? まぁスプリガン相手じゃ分が悪いあるな」


「あいつ腹パンしてきたの、ゼツユルなの!」


 マイネの元へ、りんりん、レイレイ、なのの三人がやってくる。

 三人ともスプリガン相手に死に戻ったクチなので、相手の脅威はしっかりとわかるし、マイネの気持ちもよくわかる。


「なのさんなんて全力疾走で戻って来た途端に腹パンされたらしいですからね」


「ほんとなの、影から襲ってやろうとしたらカウンターくらったの、死んだの」


 死に戻ったプレイヤーの一部がお腹を押さえて蹲っているのが見える。

 彼らは確実に腹パンを食らったプレイヤーだろう。

 衝撃自体は一瞬で消えるけれど、なんとなくお腹に鈍痛が残ってる気がするのだ。

 なのも今もまだお腹をさすっていたりする。

 

「乙女のお腹は大切なの、人としてあいつ最悪なの!」


「いや、あれ妖精だから、人じゃないかなぁ、なんて」


「どうでもいいの、リベンジするの!」


「でも今向かったところで死亡確定なんだよねぇ。何か作戦とかない?」


「ネット見てみたんだけど、他のチームは結構順調に進んでるみたいある」


「そう……あー、もう、なんなのよあいつ! カルカさんでも結構やれたのに、スプリガン強すぎっ! 動き全然見えなかったし!」


「なの!」


「普通なら運営にクレーム入ってナーフされるんだろうけど……」


「別に放置して進んでもいいからナーフされたりはしないんだよねー」


 つまり、妖精さんステージは自力でクリアしなければならない。


「わかってることは?」


「妖精さんを倒せばいいかな、くらいある」


「レイレイと話してたんですけど、スプリガンって妖精の守護者なんですよね。だから守る対象が居なくなれば動き止めないかな、と」


「アレ、倒せる気しないある。となるとギミックボスか、打倒不可能ボスのどっちかある。ギミックボスなら何かしらのギミックで倒せるあるが……妖精さんのトラップに引っかかる気配もないし、デバフ弾くあるよあいつ。となるとギミックがあるかどうか微妙。要するに打倒不可能ボスの可能性大」


「イベントボスである以上打倒不可能なボスは出現しないなの。つまりアレを倒す方法はないけれど、動きを止める、あるいは戦線から遠ざける方法があるはずなの。それが……」


「「「妖精さんの撃破」」」


 悔しいが、現状プレイヤー側にスプリガンを打倒できる術がない。

 おそらく確殺ダメージも食らわないだろう。

 むしろ誘導系スキルすら避けられている状況だ。被弾を許さないスプリガンに確殺攻撃などまず当たらない。


「つまり、あのステージはスプリガンの猛攻を潜り抜けて妖精さんを撃破しろってことね」


「じゃなきゃすでにスプリガンにナーフ入ってるはずある。プレイヤーが頑張れば倒せるくらいのナーフが。コトリさんですらあのレベルで何とか戦える状況だったからスプリガンもそれくらいの能力低下がなければ勝てないね」


「同じ妖精ぶつけるとか?」


「その妖精と繋がりのあるプレイヤーが今のところゼロなんですよねー」


「スレで聞いてみたけど今のところ一切妖精キャラテイムしてる奴がいないね。ゴブリンを妖精とカウントするならゴブリアはいるけど、スプリガン遠慮なく腹パンで沈めてたから妖精扱いされてないある」


「ふむ……妖精ねぇ」


 考えうる限り、確かに妖精をテイムしているプレイヤーは見た覚えがない。

 つまり、今回のイベントで妖精を味方にしてスプリガンに攻撃できないようにさせる方法は使えない。

 

「やっぱり妖精さん撃破しかないか」


「問題はスプリガンの移動速度よね」


「マイネとなのでスプリガンを受け持つの、多分5秒くらい稼げるの」


「少ないある!?」


「実際マイネに2秒、なので2秒、移動1秒なの」


「腹パンは確定なのね」


「一応顔は狙わないくらいの紳士的思考はあるらしいわね」


「それ、大して意味ないある。腹パンくらった人凄い顔と声出して散るある」


 実際問題、そんな声を出したマイネたちは笑えない。

 むしろスプリガンへの怒りを増大させ、互いに頷き合う姿に、りんりんは一抹の不安を覚える。

 この二人、スプリガン狙いで襲い掛かるつもりじゃなかろうか、と。

 せっかく妖精さんを狙うという意見にまとまりかけているのに、二人がそちらに向かうと自分とレイレイだけが妖精を狙うことになる。


 ほぼ確実に妖精さんに届く前に全滅する可能性は高かった。

 全員の思考も未だ統一できず、妖精さん攻略という理想は空想のさらに先に見え隠れしているのだった。

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