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617.第三回イベント、十八日目降福妖精地雷原3

「ごふぁ!?」


「ちょまのばっ」


 スプリガンの猛攻でプレイヤーたちは一気に数を減らしていた。

 肉体言語なスプリガンだが、その動きが速すぎてプレイヤーは防御態勢すら満足に取れずに死に戻っていく。

 まさに情け容赦ない殺戮の暴風である。

 触れれば即死、とばかりに次々と屠られていくプレイヤーたちの中に、マイネの姿もあった。

 あっけなく腹パン食らって九の字に折れ曲がるマイネが地面に倒れ、トラップの爆破を食らって死に戻る。


 レイレイとりんりんは一瞬で起きてしまった惨状を見せつけられ、戦々恐々するしかできなかった。

 決して、この光景を作ったのは自分たちではない。自分たちのせいじゃないと言い聞かせないと、責任と失態が彼女たちに伸し掛かろうとしてくるのだ。


「ま。私が殺されそうになったら自動投入されてたんだけどねー。ちょっと早い投入になっちゃったい」


 この惨状を作るきっかけを作った妖精さんは、レイレイとりんりんの傍を飛び交い得意げに告げる。

 手が届く位置までは近づいてこないのは先ほど捕まったことで警戒しているからだろう。


「あ、あれって、なにあるか?」


「スプリガンよ、妖精の守護者。知らない?」


「妖精の守護者って……グラサンドレッドヘアの黒人さんなの? レゲエ音楽好きのおじさんとかじゃなくて?」


「レゲエ好きかどうか知らないけど、そのおじさんは目に見えない速度で移動したら女の子に腹パン決める容赦ない動きできるの?」


 出来る訳がない、というかやれるような身体速度持ってたら人間として異物である。


「それにしても、なんなのあの圧倒的威力」


「ウチの腕吹っ飛んだんだけど……これ、治るあるか?」


「一度死ねば治るんじゃない?」


 妖精さんの言葉になるほど、と頷くレイレイ。すぐに自分に死ねと言われたことに気付き憤慨する。

 しかし妖精さんは絶妙に届かない場所に滞空していたために何もできることがなかった。

 りんりんをみるも、首を振る。

 今、下手に妖精さんに攻撃をすると、暴威を振るっているスプリガンがこちらに襲い掛かってきかねないのだ。

 りんりんとしてもさすがにアレが自分たちに襲い掛かってくれば、殺される以外の未来がないのは理解している。


「あー、フェノメノンマスクも死んじゃったある」


「すごい勢いで駆逐されてる。妖精さん、これ、クリアさせる気ってあるの?」


「あるけどー、アレはほら、クリアできない系のボスキャラだからね。逃げる?」


 逃げてどうにかなるなら逃げるのだが、残念なことにこの広場にいる妖精さんを倒さなければここの解放は出来ない。

 いや、確かに妖精さんを相手にしないという方法はあるのだが、その場合ヒロキの場所に辿り着いた時点で妖精さんとスプリガンがヒロキを助けに参戦してくる可能性があるということだ。


 そうなってしまっては今目の前で起こっている光景がヒロキを目の前にして起こってしまうだろう。

 ヒロキに嘲笑われなが死に行くか、ここで抗いなんとか妖精さんを殺し切るか……

 ふと、レイレイは気付く。

 

 確かにスプリガンは危険だ。

 しかし、スプリガンがこうしてプレイヤーに敵対している理由は、妖精さんを攻撃する、あるいは殺そうとしているから。

 つまり対象となる妖精さんさえいなければ彼の攻撃対象はいなくなるのだ。


 となると、この妖精さんステージでプレイヤーが行うべきなのは、スプリガンというチート存在の攻撃を掻い潜りながら妖精さんを抹殺する。それが大正解なのである。


「ってことは……」


 妖精さんを見る。

 スプリガンの猛威に見入っているようでこちらには気づいてない様子。

 片手しかないので自分では何もできないが、りんりんならあるいは。

 りんりんも察してくれたのか、視線が合うと頷いてくれた。


 スプリガンが怖いからと何もしないでいる訳にもいかない。

 手を伸ばせば届……かないけど、矢なら当たる場所にいる。

 一撃、そう一撃だ。妖精さんならおそらく一撃当てれば、確殺じゃなくとも殺せるはずである。


 スプリガンからりんりんが見えなくなるよう、レイレイは自分の体でりんりんの姿を隠す。

 りんりんはゆっくりと弓を引き絞り、妖精さんへと構えた。

 矢を発射仕様とした、次の瞬間だった。


 レイレイのすぐ傍を黒い疾風が駆け抜け、りんりんの姿が消え去った。

 おくれ、かなり離れた場所で光が消え去るのが確認できた。


「俺の目を盗んで妖精を殺すことは不可能だ」


 真横に、ソレはいた。

 レイレイは心臓を鷲掴みにされたような絶望感を抱く。

 視線だけを向ければ、浅黒い肌が見える。

 なぜ、どうして、完全に隠せていたはずなのに……


「妖精を害する気配を察知した。それだけだ娘」


「よ、妖精最優先あるか……」


「当然だ。我が生は妖精のために存在する。ゆえに命より重きものが妖精である。さらば」


 りんりんが攻撃の意思を示したことで、レイレイもまた敵認定されてしまったらしい。

 スプリガンの一撃を避けることすらできず、レイレイはりんりんの後を追う様に死に戻るのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、スプリガンって妖精の種が他の妖精を護る守護者なので、実質的に戦闘種族なんだよね、元ネタの時点で
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