61.正義の味方 対 秘密結社の怪人・3
「ふはははは、正義の味方敗れたりぃぃぃッ!!」
蜘蛛男が勝利を確信して嘲笑う。
壁に向って投げ飛ばされたグレートマンさんは受け身も取れる状態じゃ無い。
誰も助けに入れず。壁に当たれば正義の敗北、このままじゃ……
そう、誰もが絶望した。
もはやグレートマンさんは助からない。
悪に屈しなければならないのか?
「そんなわけ、ないだろう?」
壁に激突する寸前、ソレは颯爽と現れグレートマンを受け止めた。
「良く頑張った。後は、任せてくれ」
傷ついたグレートマンをその場に寝かせ。ソイツは蜘蛛男へと視線を向ける。
「貴様は……」
「皆、遅れて済まない。秘密結社アルセーヌの妨害に遭っていたんだ。だが、間に合ってよかった」
その男は人ではなかった。
人型ではあるモノの、スーツを着た戦隊モノヒーローでもなく、怪人たちのように人造人間として作りかえられたようでもない。
武骨で錆ついた装甲を組み合わせて作った旧時代のカラクリ。あるいはデストピアあたりで廃材使って組み上げた鉄骨ロボ。そんな表現がしっくりくる、蒸気機関を搭載する、人型機械。
「人々を攫って何をするつもりかは知らんが、俺がいるかぎり貴様等の好きにはさせんッ! 俺の煙が猛って唸る。蒸気戦士キカンダーッ!!」
ばばーん、ってそのまんまかよ!?
蒸気機関を使ってるらしヒーローは出現ポーズを決めると早速蜘蛛男向けて走り出す。
ようするに、今回のイベントを何とかしてくれる正義の味方がようやくやってきたってことか。
そのためだろう、今までグレートマンと蜘蛛男の戦いで存在していた謎の違和感が消えた。
きっと餅は餅屋。グレートマンが対応しやすいのは怪獣や宇宙人系。怪人系の敵にはこのキカンダーたちのようなヒーローに特攻が付くのだろう。
今までの苦戦が嘘のように、キカンダーに押されていく蜘蛛男。
もともとのHPが半分切っていたおかげかすぐに瀕死になってしまった。
「随分と疲れているな怪人蜘蛛男」
「黙れキカンダーッ、貴様に負けているのではない。グレートマンと数の暴虐に押されているだけだ」
負け惜しみが過ぎる。まぁ俺達も動けるようになってからもレーザーで援護はしてるから数の暴虐あながち間違ってないけども。
「くくく、だが、我が倒れようとも、我が秘密結社の怪人はこれで終わりではない。ならば、我は貴様を道連れにしてくれよう」
「むっ。いかん!? 誰か、誰か石炭を持ってないか!?」
なんで石炭!? いや、蒸気機関だからってのは分かるけども!?
「キカンダー、新しい石炭よーっ」
なんでさ!?
どこからともなく投げられた石炭一つ。
受け取ったキカンダーはお腹部分の扉を開く。なんか焼却炉みたいな小さい扉付いてるし。
受け取った石炭を扉の奥へと放り込む。
「うぬぬぬぬ、良い石炭だ。我が蒸気機関が灼熱する!!」
全身の装甲が灼熱して真っ赤になる。そして。機関車みたいに蒸気を一気に噴き出した。
「蒸気機関全力全開! 貴様の野望もここまでだッ!! 爆熱ッ! 燃え盛る機関車の如く」
って、体当たりかい!?
高温と化したキカンダーが一気に加速して蜘蛛怪人に激突。
どうでもいいけど高温の鉄って融解するから凄く軟いのでは?
「ぐあぁーっ!?」
激突されて撥ね飛ばされた蜘蛛男が地面を転がる。
そして、力なく立ち上がったあと、なぜか大の字に両手を突き上げ、爆散した。
あの爆散、様式美かな?
「成敗ッ!」
まぁなんっつーか怪人の爆発背にしたら確かにカッコイイなキカンダー。
蒸気機械のヒーローとか、普通に弱そうなんだけど、いや、あえて何も言うまい。
他の人も皆拍手したり歓声上げてるし。
おっと、怪人倒したからか残ってた戦闘員が逃げてくな。
ハナコさん、ちょっとお願いしていい? こいつ等の後追ってほしいんだけど
『私が? まぁ面白そうだから行ってくる』
ふよふよーっと戦闘員達に付いて行くハナコさん。偵察よろしくです。
「あの、グレートマンさん助けてくださってありがとうございました」
「キミは? いや、気にしないでくれ。共に悪と闘う仲間だ。助け合うことに問題があるわけがないだろう」
「はい、できればこれからも共に戦い合えたらと思います。それで……」
なんか、マイネさんが新しい正義の味方と交渉始めたぞ?
「あー、しまったな」
「未知なるモノさん? どったの?」
「蜘蛛怪人、食うの忘れてた」
うわぁ。怪人も食べる気なのかこの人。
そういえば戦闘員にも食い付いてた気が……その内幽霊まで食べださないよね?
ハナコさんは絶対に死守する、絶対だ。たとえテケテケさんが食われたとしても守り切るからなッ。




