60.正義の味方 対 秘密結社の怪人・2
「マンホールゥゥ・スラッシュ」
マンホールで戦闘員切った!? 血飛沫が舞って一体の戦闘員が倒れ、泡となって消え去った。
おおぅ。人の死に方じゃねぇ。
つまり、戦闘員はもう、人間じゃないってことなのか。
「そこのプレイヤーさんも手伝って!」
「お、俺もか!? ただの学生だぞ!?」
戦闘員がそっちに向い、思わず抵抗の一撃を与えるが、戦闘員にあんましダメージ与えられてない。本当にレベル1の学生さんが学校抜けだしてただけらしい。
テケテケさん助けたげてー。
「ほら、こいつはおねーさんが対処するから、キミは避難誘導お願いッ!」
「ひぃっ!? て、テケテケ? あ、りょ、了解ですっ」
テケテケさんの容姿に驚いた彼は、慌てたようにNPCたちの避難を誘導し始めた。
「さ、キミもあっちに避難して。ここは危ないからね」
幼い女の子が戦闘員に拉致されそうになっていたので間横からヤクザキックかまして撃破。
助けた少女を避難誘導してる中学生の元へ送る。
「しかし、数が多いのぅ」
風魔法ではさすがに対処しきれないと、稲荷さんは何時かの緑の狐さんを召喚して手数を増やしていた。
意外と強かったんだなぁあの狐。
俺らと闘った時には一撃で首ちょんぱされてたから強さも何もあったもんじゃなかったけども。
「ウァッ!?」
「ふはは、どうしたグレートマン! それでは手も足も出まい!!」
うげ!? いつの間に。
グレートマンさんファイティングポーズのまま蜘蛛糸でぐるぐる巻きじゃん。
フォローに向いたいけど戦闘員の数が多い。誰か……ええい仕方ない。
「ツチノコさん、グレートマンのアレ、解ける?」
「シャーッ!!」
任せろっとばかりに俺の肩から飛び降りると、尻尾咥えて転がりながらグレートマンへと向っていくツチノコさん。
手が出なくなったグレートマンさんは苦戦一方だ。このままだと恐らく近いうちに負けるだろう。
何か援護できれば……
待てよ。そういえばあるじゃん遠距離武器!
「くらえ!」
俺は近くの戦闘員を蹴り倒し、蜘蛛怪人が後ろを向いた瞬間を見計らってレーザー銃で攻撃。
おお、すっげー、光線がピシュンって飛んでった。
「ぐおぉ!? なんだ!?」
「成る程、レーザー銃か!」
「いいじゃない。私でもグレートマンさん援護できるわね!」
さすがに他のプレイヤーに貸すのは危険だよな。借りパクされそうだし。
「おのれっ。飛び道具とは卑怯な!? 貴様一対一の闘いに水を差すとは人間の風上にもおけんな! さすが外道少年」
がふっ!?
やめろ、その言葉は俺に効く。
「う、うるさいっ! こんだけ戦闘員引き連れといて一対一もなにもねーだろっ! 卑怯なのは突然一般人攫いに来たお前たちだろうが!!」
「ぐぬぬっ、減らず口を」
一瞬俺が外道扱いされかけたが、正論ぶちかましてやっぱりこいつ等の方が悪いよな、という空気に戻せたので良し! 危なく悪者にされるとこだったぜ。
未知なるモノさん、マイネさん、俺からレーザー銃による射撃援護が始まり、ツチノコさんが必死に口で糸を噛み切ってくれた御蔭で、ようやくグレートマンさんも戦闘に復帰。
手にはレーザー銃を構えて自分も射撃に加わった。
「ええい、正義の味方の癖に遠距離射撃か!」
「うぁっ」
ふはは、勝てばよかろうなのだ!
レーザー銃でちまちま削ってやんぜ!
お前よりレベルの高い宇宙人どもから鹵獲した武器だから。かなりダメージ高いだろ。
「ぐぅぅ、ええい、こうなれば!! くらうがいいっ」
っ!?
レーザーに撃たれ続けHPが半分以下になったのかもしれない。突然動きが変化して、真上に向けて口から糸を大噴出。
そして、戦場に居た俺達全員が蜘蛛糸の餌食となった。
戦闘員達も動けなくなったが、味方全員が動けなくなったのは大ピンチだ。
しかもこの糸、動くほどに絡まって来るっ!?
「テケテケさん、一度霊体化してから脱出を、皆が動けるまでハナコさんお願いしますッ」
「いやー、べとべとするぅー」
『了解っ。鬼火ッ』
「ふはは、ただの火炎弾なら避けるのもたやすいぞ!」
ハナコさんが攻撃をし始めるものの、蜘蛛男は軽々回避してグレートマンに踊りかかる。
あいつ、霊体も見えてるのか!? 鬼火も霊体だから霊視か霊感持ってないと見えないのにっ。
「ウァァッ!?」
ああ、不味い、グレートマンさんが倒されるっ!?
大ピンチに陥ったグレートマン、必死に糸を引き剥がそうとするが、それより早く近寄った蜘蛛男により殴られ、蹴られ、再びぐるぐる巻きにされてモーニングスターのように振り回されて投げ飛ばされた。
「グレートマンさんっ!?」
マイネさんの悲痛な叫び。
建物の壁に向って投げ飛ばされたグレートマンさん。
おそらく、壁に激突すればグレートマンさんのHPはなくなるだろう。
回復アイテム、せめて一回でも投げつけていれば……




