597.第三回イベント、十七日目人形遣いのアンプロンプチュ
状況的に言えば、ニャルさんにとっては勝ち確の状況だった。
敵対メンバーは10人。そのうち三人が死に戻り、他のメンツはシャドウバインドにより捕縛済み。
残っているのはミツヅリただ一人であり、他のメンバーが拘束を解いて参戦するまでの時間はミツヅリを数回殺せるだけの時間があった。
ゆえにニャルさんの悪癖が出てしまうのは仕方ないことだった。
トリックスターな彼女にとって、こういう余裕が出来てしまう状況にとっては遊ばずにはいられないのだ。
だからこそミツヅリは未だに死に戻ることなくニャルさんと激闘を繰り広げられていると言ってもいい。
「ふははははは、圧倒的ではないか我が軍は! 一人しかいないけどね!」
「クソッ、なぜ当たらないっ」
「当たらない? 当てようとして狙いが外れてるんだから当たるわけもないだろう。それに物理は私に効果がないのはわかっていると思っていたのだがね」
「急にメリーさん口調から素に戻るなよ。本気で遊びだしてやがるな」
「ここまで余裕になっちまうとなぁ。ああでも足元掬われねぇようにしとくべきか」
拘束済みのメンバーを一人、また一人、ミツヅリと戦いながら隙を見て屠っていく。
ミツヅリとしては阻止したいところだが、彼一人ではさすがに外の神であるニャルラトホテプの連撃を凌ぐだけでも手一杯で、周囲の仲間を守ったり、拘束を解いたりする余裕はなかった。
徐々に味方が消えていき、案内人も悔しそうな顔で死に戻っていく。
その顔が、自分の判断ミスを指摘しているように見え、ミツヅリは何とも言えない顔になる。
事実、彼の判断ミスだった。
囲んでしまえばなんとかなると判断し、案内人の主張を封殺した。
今から思えば、味方を増やしておいたほうがニャルさん戦においては有利に働いていただろうことは、悔やんでも仕方ない。
「まだ、まだだっ、責任を取らず負けるなどありえないッ」
「ざぁんねん。責任取るなんてできずに君は負けるのさ。さぁてそろそろメインディッシュと行こうじゃな……はい?」
ミツヅリへと最後の攻撃を仕掛けよう、としたその瞬間、ニャルさんは見た。
見てしまった。
ミツヅリすらも気にならなくなるほどの決定的瞬間を。
そう、従姉妹であるマイノグーラさんがマイネさんと相打ちで死亡する瞬間を。
「し、死んどるぅ――――ッ!!?」
「は?」
そこでミツヅリも気付く。
少し離れた場所で激闘を繰り広げていたマイノグーラさんと彼女に挑んでいたプレイヤーたちの決着が着いたのだ。
すなわち、マイノグーラさんと戦っていたプレイヤーたちの手が空いたということである。
「マイノグーラさん撃破ーっ!」
「っし、俺は芽里さんに向かう、お前は?」
「状況的にニャルさんだろ、もうプレイヤー一人しか残ってねぇじゃん。俺らを見ろよ、こんなに残ってんだぜ!」
「う、うそやーん。ここでまさかの戦力増加!? ほぼ圧勝モードだったじゃん、マイノグーラあああ」
ニャルさんが思わず嘆くが、既に退場済みのマイノグーラさんには聞こえるはずもない。
当然のごとく彼女のもとへとプレイヤーの群れがやってくる。
「マイノグーラさんに続いてニャルさんもぶっ倒すの」
「当然タコ殴りにしてやるある!」
「遠距離から確殺狙っちゃうぞー」
「やっば、確殺持ちがこっちきちゃう。マイノグーラ何してくれてんの!?」
当然のごとく死に戻ったマイネを除いたプレイヤーたちが芽里さんとニャルさん討伐に振り分けられていく。
芽里さんは激戦が続いているが、メンバーは多いのでほとんどのプレイヤーがニャルさん討伐へとやってきた。残り一人にしたせいでプレイヤーの増援が増えてしまった形である。
「鬼か貴様らっ」
「やっちゃえゴブリア!」
「ぽち、行っちゃって!」
テイムキャラたちも当然のごとく戦闘に参加してくるため、ニャルさんは再び窮地へと陥ってしまった。
魔法を使ってけん制を行うも、既に一度体験済みのミツヅリからシャドウバインドについて聞いていたプレイヤーたちは当然のごとく対処してきてほとんど捕縛できなかった。
さらに捕縛されたメンバーも他のメンバーにより解除されてしまい、すぐさま戦線復帰を行ってくる。
「あーもう、マイノグーラのせいだ」
嘆くニャルさんへとりんりんの、なのの、ミツヅリの確殺攻撃が襲い掛かる。影を跨いで逃げてきた技後硬直で逃げることもできず、ニャルさんは恨み言を吐きながら光へと変わっていく。
「ニャルさん撃破!」
「皆さん、助っ人ありがとうございます。助かりました」
「ニャルさん強かったみたいですね。うまく倒せてよかったです」
「さって、これで残るは……」
戦いを終えたプレイヤーたちが一点へと視線を向け合う。
そこでは、唯一生き残っている芽里さんが数多のプレイヤーを翻弄し、今、勇者ブレイドを撃破したところであった。




