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584.第三回イベント、十七日目人形使いのボロネーズ

 マイネ率いる女性陣部隊がマイノグーラさんと敵対する。

 今回マイノグーラさんは影グラから実態を得た様子で、小柄な美少女になっていた。

 銀メッシュの入った活発な髪はまるで自分の意思があるかのように、不思議な動きをしている。


 背中には蝙蝠羽。

 獰猛な蛇みたいな瞳を笑みに変え、女性プレイヤーたちの前で仁王立ちしている。

 どうやら自分から攻撃する気はないらしい。


「ヒナギさんたちも手伝ってくれればいいのに」


「向こうは向こうでやってるんですから無茶言わないで上げてください」


「ま、なんだ。あーしとマイネで突撃、格ゲー少女は隙を伺って参戦、リテアさんは後方から頼む、って感じか。バランス悪いな。もうちょい補助とか回復とかいないのか?」


「こっちに来てくれた女性プレイヤーが少ないからね」


「あーし男だけど?」


「アバター女にしてんならいいのよっ」


 ユウはマイネに言われて周囲を見回す。

 たった三人を討つのに数千人もいらないだろう、と付いてきたプレイヤーは二百人程。

 そのうちの女性プレイヤーはといえば、十名に満たない程度だった。

 そのうち、ヒナギ、キョウカ、アミノサンがニャルさん撃破部隊に向かってしまったので、マイノグーラさん撃破部隊はマイネ、ユウ、格ゲー少女、リテアパトラ七世、と残り二名のプレイヤーが参加してくれた。


「よし、ゴブリア、タンク役お願いね」


「ぽち、ゴブリアさんのフォローして」


 テイムキャラもフル活用で敵へと当たる。

 ただ、マイネの持ちキャラであるジェイクたちに関しては、男性ということもあり、万全を期すために今回はニャルさん撃破チームに参加させている。

 

「回復役、誰もいないのね」


「あの、貴女は何ができます?」


「接近戦ね。後は遠距離用の弓を少々」


「りんりんさんたちが今回居ないのがきついわね。あの三人娘揃ってイベントブッチってどういうことよっ」


「はずせねぇ用事があるんだからしゃーねーだろ。ゲームより現実世界優先だぜ普通」


「私はこっち優先よ!」


 マイネさんの叫びに、周囲の女性陣ばかりかマイノグーラさんまで呆れた顔をする。


「いや、さすがに現実疎かにすんなよ、ヒロキみたいになっちまうぞ」


「え、なに、ヒロキみたいってどーいうこと?」


 マイノグーラはあったことないはずだが、と思いつつ尋ねてみれば、AIとしての知識共有で今のヒロキの状況はしっかり把握できているとのこと。

 全裸でゲーム機に接続し、生きる上で大切な排泄行為は全自動。運動もそのまま行え、さらに食事も点滴で補っているそうだ。

 まさに人生をゲームに捧げているらしい。


「ってかあいつ、そこまで堕落してんのかよ?」


「基本寝る時も同じ寝台使ってるし、買い出し行く時くらいらしいわよ、服着るの」


「人としての生活が終ってやがる。ちょっとあーし家まで行って叩き起こしてこようか? 外出さないと寝たきり生活になりそうだぞ」


「あー、そんときは私も手伝うわ。大馬鹿野郎を救ってあげましょ」


 ユウとマイネが呆れた顔で家庭訪問を決める。

 場所に関しては本人から直聞きできているので、後は日取りを決めて突撃するだけである。

 

「んじゃま、そろそろ始めるかァ?」


 にひっと獰猛な笑みを見せるマイノグーラさん。

 その表情を見たニャルさん、芽里さん攻撃部隊の男性陣の一部がぐはっと心臓を押さえてのたうち始める。


「異国情緒漂う美少女の獰猛な笑みとか、ご褒美か!?」


「襲ってください今すぐに!」


「俺の心が石のように固まっちまいそうだ」


「全員、戦闘態勢! やるわよ!!」


 男たちは放置して、マイネたちが武器を構える。

 

「オラ、出番だぞオマエタチ」


「ちょ、なんかマイノグーラさんの影がせり上がってる!?」


 マイノグーラさんの影が盛り上がり、一体の犬型生物へと変化する。

 影の犬が影から飛び出すと、再び影が盛り上がる。


「ちょ、待って、まさか、まだ団体戦残ってる!?」


「オイオイ、情報不足じゃねェのかァ? マイノグーラさんっつったらヘルハウンズの生みの親だぜェ。シュブ=ニグラスと結婚した覚えはねェけどなァ!!」


「ちょ、なんかヘルハウンズの中にティンダロスの猟犬っぽいの紛れてる!?」


「これはさすがにこのメンツじゃ無理よ!」


「いきなりだけど手伝ってプリーズ!」


 ニャルさん攻略に向かっていたグレートマンさんたちを呼び戻す。

 さすがに十人足らずで十数体に増えたヘルハウンズたちとティンダロスの猟犬は荷が勝ちすぎであった。

 

「ハハハハハ、いいねぇいいねぇ、楽しくなりそうじゃないかァ!! 皆で踊ろうぜェ、死へのダンスをよォ!!」


 マイノグーラさんが体半身を影へと変える。

 鋭く尖らせた影の腕を掲げ、好戦的な笑みを浮かべるのだった。

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