583.第三回イベント、十七日目骸骨戦士戦闘開始
イベントもついに十七日目。
未知なるモノたちが芽里さん討伐に向かったものの、他のプレイヤーたちは当然のように開かれたルートを通って順当に次のステージへとやって来ていた。
すなわち、ヘンリエッタさんステージである。
ステージ中央で大剣を地面に突き刺し、両手を柄に添えて待っていた骸骨戦士は、プレイヤーの団体が二方向からやって来たことで、剣を引き抜き戦闘態勢へと至る。
「ヘンリエッタさんは今までと違って一体のみでのレイドキャラになるんだよな?」
「大振りだけど装備のバフが酷いせいで後衛は一撃死確定だ」
「ってことはタンク役がいかに耐え切るか、後衛に攻撃を届かせないかがカギになるのか」
「確殺無効とかクソじゃね?」
「でも強いボスも一撃死の確殺攻撃がチートだし、ボスが確殺無効持ってる方が普通じゃない?」
「とにかく防御が硬いボスヘンリエッタさん。ようやく正当なボスキャラの出現にオラわくわくすっぞ」
「できればもう少し早めの戦いであって欲しかった。時間が惜しいんじゃい!」
「可能なら今日中にヘンリエッタさんを倒す。出し惜しみはいらない、一気に減らすぞ!」
「っしゃ、まずは近接部隊の必殺叩き込んでくぜぇ!!」
プレイヤーたちは団体戦を経たおかげか、レイド戦での協力の仕方などを覚え、ヘンリエッタさん戦で大いに活躍を始めた。
普段目立たないようなプレイヤーも、攻撃に補助にとせわしなく動き、攻撃チームは大技必殺技のオンパレード、撃っては次のプレイヤーに任せて退がりを繰り返し、ヘンリエッタさんのHPを一気に削っていく。
「って、なんかドットすら削れてなくない?」
「でもダメージ自体はかなり入ってるぞ。コトリさんみたいに全部1じゃないし」
「単純にHPが阿保みたいに多いってことだろ。こっちは数万、向こうは一人だ。必殺終わった奴はいったん下がれ、遠距離部隊の攻撃行くぞ!」
「案内人さんが居ればいいんだけど、芽里さん攻略に向かっちゃったからなぁ」
「案内人さんがおらずとも、これだけプレイヤーがいるんだぜ」
「そうだ、俺らだって主役張れるんだってところみせてやろうぜ!」
「硬い敵には、そう、貫通攻撃だ!」
「任せろ、俺の貫通突撃でまとめてぶっ倒してやんぜ!」
「ぎゃあぁ!? こっちに突撃してくんじゃねぇよ!?」
「同士討ちしてどーすんだ!?」
ぎゃあぎゃあと喚きながらも少しずつ少しずつヘンリエッタさんのダメージを蓄積させていく。
しかし、HPの減り具合はかなり緩い。
「これ、今日中に倒せるのか?」
「倒すしかねぇだろ。他に何か方法でもありゃ別だが」
「確殺無効が痛すぎる」
現状はひたすらダメージを与えて撃破する、それしか方法はない。
ヘンリエッタさん自身もHPが高いだけなので、ダメージさえ与えれば十分勝てる存在なのである。
「準備完了、遠距離、行くぞー!」
ヘンリエッタさんは移動も鈍い。
鎧の重量のせいで速度が死んでいるんだろうが、回避すらも出来ない様子なので、魔法や遠距離スキルは基本その身で受ける耐久方法しかとらないようだ。
むしろ防御すら捨ててひたすらに剣を振るっている。
「ダメージが一気に入るのは見てて爽快なんだけど……体力が化け物過ぎる」
「うおぉ!? 風圧来た!?」
「タンク、真空波攻撃が中衛まで来てんぞ! 何やってんの!!」
「うるせぇ! こっちも必死なんだよ!」
「動きは遅いが威力がパネェ!」
「パリィ時間もほとんどないから失敗続きだ。あんな遅い攻撃なのにっ」
ヘンリエッタさんの攻撃は単調だ。
真上に掲げてからの打ち下ろし、横から横への薙ぎ払い、斜めから袈裟懸けに切り裂き、たまに刺突攻撃を行う。
盾を使うのは稀だが、その盾に受け止められてしまうとシールドバッシュで吹っ飛ばされるか、スタン状態に陥る。
待っているのは高威力の打ち下ろし攻撃で両断される未来である。
「動きは遅いし、単調なのに普通に強い」
「あれ、実は一番の正統派なのでは?」
「一番基本に忠実だけど一番硬い。つまり、クソうぜぇ」
「なんてこと言いますの!?」
「ぎゃあぁ!? しゃべったぁぁぁ!?」
「いや、前々からわかってただろ!?」
「そんなことよりタウント使ったりカバー使ってくるのなんなの? 自分一人なんだからターゲット集中させても無意味だし、味方いないからカバー不発じゃん」
「多分だけどローリィさんやルルルルーアさんに攻撃仕掛けたら二人が参戦して意味が生まれると思うな」
「つまり、あの二人は巻き込まず半分くらいまで減らすのが吉、ってことか」
すでに前回ヘンリエッタさんと相対したメンツが下した判断を、ここで万人規模のメンバーが理解する。
「ようやくHPバーに白地が見えてきたぞ推定HP億越えじゃねぇのこれ?」
「鎧の耐久値入ってたりして」
まだヘンリエッタさん戦は始まったばかり、プレイヤーたちも探り探り有効な手段を模索し始める段階であった。




