576.第三回イベント、十六日目ツワモノ共が夢の跡
「キマリスさんの最後の一撃で全滅しちまったからなぁ」
「もう誰も残ってないはずだよな」
「スタート地点から離れているからここまで来るのに結構時間かかるな。もうイベント終わりかけだぞ」
「もう十六日目も終わりかぁ。こうしてみると、イベント結構短いなぁ」
「俺としてはヒロキぶっ倒したいんだが、あと四日、五日でクリアできるのかこれ?」
「結構メンバー出てるからあと少しっちゃ少しなんだよな。これからはひとまとまりになるし、総力戦で一気に押せるんじゃないか?」
プレイヤーたちは世間話をしながらキマリスさんと激戦を繰り広げた広場へと辿り着く。
そこには誰も存在しておらず、メカニカルベアの残骸だけが残されていた。
「うわー、なんっつーか、今更だけどよく倒せたなこいつら」
「ツワモノ共が夢の跡ってか。ほんとガラクタ広場になってんな」
「メカニカルベア、強敵だったな。マジであんだけ数いたら死に戻り前提じゃなければ勝てなかった」
「生き残りは……いないな」
広場には誰もいない、それを確認したプレイヤーたちは、頷き合い、新たな通路へと向かう。
「一応、行っとくか」
「合流地点でヘンリエッタさんが待ってるだけだろうけどな」
道の先の予定はわかっているが、皆揃って歩き出す。
その道の先、それは案の定、一つの広場へとつながっていた。
周辺が焼け野原になっているので広場に辿り着く前から広場で待ち望むそいつを目視確認できる。
骸骨戦士が一人、広場の中央で暇そうにぼけーっとしていた。
プレイヤーたちに気付いたのか、慌てて取り繕う様に地面に突き刺した剣の柄に両手を乗せて仁王立つ。
しかし、すでに先ほどの暇そうな骸骨を見てしまったプレイヤーには滑稽にしか映らなかった。
「やっぱ残念娘だよなヘンリエッタさん」
「骸骨だから余計残念だよヘンリエッタさん」
「生前に戻れればなぁ。残念だよ」
「皆さん揃って残念とか言わないでくださいましっ!!」
「ぎゃあぁ!? ヘンリエッタさん喋ったぁ!?」
「しゃれこうべしゃべったぁぁぁ!!」
「一度やったけどそういや伝えてなかったなぁというわけで、しゃべったぁぁぁ!!」
「ノリがいいなぁ。あ、そうだ。一応伝えとくけどルルルルーアさんとローリィさんには攻撃しない方がよさそうだぞ。多分当てたら参戦してくる」
「各個撃破が理想だよなぁ」
「他のメンバーが来てるなら全員纏めてもありなんだけど……」
「とりあえず一当たり行っとく?」
軽いノリで戦闘開始。
ヘンリエッタさんも剣を引き抜き戦闘態勢。
そして、イベント終了の合図が鳴った。
「いや、ここで!?」
「待って、まだ戦いすらやってない!?」
「あああ、らめぇぇぇ」
プレイヤーたちがイベント会場から次々と弾かれていく。
武器を手にしたまま固まるヘンリエッタさん。
そして、最後の一人が……
「ヘンリエッタさん、ほんと……残念っす」
退去していった。
「キ――――ッ! なんってことですの! 私の活躍があぁ」
「残念娘……」
「あはは、ほんと残念でしたねヘンリエッタ様」
「残念娘じゃありませんわーっ!」
地団太を踏む骸骨戦士に、ローリィとルルルルーアが笑い合う。
「さて。残りは誰々だったかしら? イベント終了まで持ちそう?」
「明日からはここも戦場ですよね?」
「そうねぇ。しかし、あれだけいたテイムキャラも残すとこ……いや結構いるわね」
「これ、全滅より先にイベント終りません?」
「ヒロキはその辺り調整するって言ってたわよ、えーっと残ってるのは……」
現在残っているメンバーは芽里さん、ナスさん、ニャルさん、カルカさん。
ローリィさん、ルルルルーアさん、ヘンリエッタさん。
撤退中のメンバーがエルエさん、アカズさん、テケテケさん、ハナコさん
まだ待機中のメンバーがユウキさん、ディーネさん、稲荷さん、ティリティさん、妖精さん。
「あと五日だっけ、だから……明日ヘンリエッタ様が一日持たせるとして、あれ、意外と日数ヤバいかも?」
「あら、そうですの?」
「団体戦は済んでますから、あとはアカズさんによる旧校舎、エルエさんたちが踏ん張って一日と換算しても、三日、いえ、多く見積もって四日ですね。あと一日足らないかも?」
「後半戦に入って向こうの戦力も集中するしねぇ。私たちも、下手したら明日持たないかもしれないんだから、ルルルルーア、ヤバいと思ったらあんただけは撤退ね」
「ですが……」
「最終防衛ラインはお任せいたしますわ」
ヘンリエッタさんの言葉に不承不承頷くルルルルーアさん。
そんなルルルルーアさんを見ながら、ローリィさんは自分とヘンリエッタさんのステータスを確認する。
「果たして、上手くハマるかなぁ……これ」
ちなみに、ローリィさんとしては早々に自分やルルルルーアさんを戦闘参加させられていた方が不利だったのだが、そこはプレイヤーたちが警戒してくれたおかげで第一段階はクリアできたと安堵するのだった。




