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571.第三回イベント、十六日目すーぱーヘンリエッタさんMARK-Ⅱその1

 ヘンリエッタさんは狂喜乱舞していた。

 今まで活躍の場はほとんど存在せず、なんならルルルルーアさんに味方殺しされて死にまくっているだけの存在だったのだ。

 もともと女性騎士だったこともあり、戦力として皆に貢献したくてたまらなかった彼女としては、ようやく本領発揮が出来るようになり、気合十分戦場に立っていた。


 盛りに盛ったバフ付き装備はかなり重く、動きが鈍重になるものの、その防御力と体力はあまりに硬く、そして多い。

 振り上げる剣は避けられるのを前提に、真空波が飛ぶ仕様で遠くに離れた相手まで届く。

 ゆえに近場の敵に回避されても遠距離攻撃組を先に撃破できるのだ。


 近場の敵に関しても、攻撃時に行うシールドバッシュを使えばスタンを入れられるので、動けなくなったプレイヤーを上段打ち下ろしで真っ二つにぶった切ることはできる。

 トロいが確実に敵を屠れるヘンリエッタさんと、犠牲を伴いつつも少しずつダメージを与え続けるプレイヤー奇襲部隊。

 奇襲失敗の代わりに他プレイヤーより先んじてヘンリエッタさん撃破に貢献しているが、あまりの硬さに他のプレイヤーが追い付くのを待った方がいいのでは、と思い始めていた。


「むっちゃ硬い!」


「吹き飛ばしで黒い壁にぶち込みたいけど微動だにしねぇ!? ノックバック効かねぇの!?」


「グリーブにノックバック無効と吹き飛ばし無効が付いてんぞ。どんだけバフ装備着込んでんだよ!?」


「そりゃ、ヘンリエッタさんだけだと聖魔法一撃死だからなぁ。むしろここまでやってようやく俺らと普通に戦えるって、それはそれでどうなんだ?」


「それは言わないでくださいまし!」


「うおお!? ヘンリエッタさん喋れたの!?」


「喋れましてよーっ!!」


 きぃーっとばかりに怒りの一撃。

 横薙ぎに放たれた一撃に真空波が乗って広範囲攻撃へと変化する。


「ちょ、ま!?」


「あら、振り下ろすよりこちらの方が回避難しそうですわね」


「やべぇ、今まで気付いてなかったのかヘンリエッタさん。これから薙ぎ払い系が多くなるぞ!?」


「ええい、いらんことに気付きやがって!」


「ふふふふふ、こうですわね、こうですわね、こうですわねぇーっ」


 右に左に真空波付きの薙ぎ払いを放ち始めるヘンリエッタさん。

 調子に乗った次の瞬間のことだった。


「ちょっと!? こっちに飛ばしてくるんじゃないわよ!?」


 薙ぎ払いの一撃がローリィさんに直撃しそうになって、尻餅を付くローリィさん。

 その頭に乗っていた魔女帽子といえる三角帽子の上半分が切断された。


「あ、ご、ごめんあそばせ」


「あぶないなー。味方殺しはやめてくださいよー」


「おまいう!? ルルルルーアさんから野次飛んだぞ今」


「ヘンリエッタさんが何とも言えない顔してるぞ。骸骨なのに表情豊かとか……」


「というか、さすがに奇襲部隊少人数だったから俺らの残り人数も少ないぞ」


 すでに数えるほどの少人数となってしまった奇襲部隊は、ヘンリエッタさんの薙ぎ払いによりさらに数を減らしつつあった。

 軒並み強者が存在しないため、ヘンリエッタさんへのダメージがほとんど通らず、いたずらに殺されるだけになってしまう彼らは、徐々に抵抗をあきらめ、いったん死に戻ることで各地にヘンリエッタさんの強さや攻撃方法を伝えに向かうことになる。

 自分たちによる攻略は諦め、強いプレイヤーたちに情報を流してさっさと倒してもらおう、という魂胆らしい。


「まぁまぁ、抵抗なさいませんの? 歯ごたえがありませんわねぇ」


「あー、クソ、奇襲してヒロキの度肝抜いてやろうと思ったのによぉ。また別の切り口考えねぇとな」


 最後の一人が唐竹割りで死に戻る。

 あまりにも簡単に負けてしまったプレイヤーたちに、ヘンリエッタさんは憤慨する。


「抵抗なしとかありえませんわーっ」


「奇襲部隊だったみたいですし」


「これから忙しくなるわよ。ほら、そこに立ってプレイヤーを待ち望んでいなさいな」


「どんなポーズがいいかしら? ローリィ、ルルルルーア、何かいい案あるかしら?」


「広場中央で剣を地面に突き刺しておけばいいんじゃない? 持ち手の先端に両手置いて、そう、仁王立ちするの。うんうん。なんか歴戦の猛者っぽい」


「あー、確かに歴戦兵士の死後って感じしますね」


「このまま直立不動は辛いですわ」


「それじゃー、肩に剣を担いで待つとか?」


「重いですわっ」


「えーっと、胡坐掻いて座って、そう、それで地面に突き刺した剣の柄を片手で掴んで、待っとくとか?」


「立つ前にだいぶダメージ受けそうですわ」


 アレもダメ、これもダメ。死に戻ったプレイヤーたちが来るのを待つ時間、彼女たちはひたすら待機ポーズの練習をし始めるのだった。


「救世主様ー。何かいい案ありませんか?」


 結果、ヒロキに聞いてみよう、ということになり、ヒロキのアドバイスを貰った結果。

 剣を地面に突き刺し、持ち手の先に肘をついた状態でジョジョ立ちする、という謎の待機方法になり、一周回って最初の待機方法が一番無難だと確定するヘンリエッタさんたちであった。

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