567.第三回イベント、十六日目中央収束広場
「ふ、ふふふ、うふふふふふ。来たわね哀れな子羊君たち、ふ、ふひひ」
奇襲目的だったプレイヤーたちが、中央広場へとやってくると、黒い壁と壁の合間に存在していた通路から、二人の女性が現れる。
「あれは……」
「ルルルルーアだっけ? それとローリィとかいう魔術師だ。ヒロキの異世界紀行とかいうチューブ映像に出てきてたぞ」
「ってことは魔法使いと回復役か。あんな二人じゃプレイヤーのゾンビアタックこらえきれないんじゃないか?」
「それにルルルルーアって確か味方殺しがどうこう言ってなかったっけ?」
「待て、なんか二人が左右にずれたぞ」
プレイヤーたちが広場に足を踏み入れ切ったのを見て、ルルルルーアさんが左に、ローリィさんが右に体をずらす。その中央から、がしゃり、がしゃり。金属音を響かせて一体のナニカが現れる。
ソレはブルーメタリックの兜を被り、ブルーメタリックの重鎧を纏い、全身を覆うフルプレートモードで登場する。
右手の手甲には丸盾。その手に同じくブルーメタリックのバスタードソードを握り、プレイヤーたちの前に歩みでる。
「え、スケルトン?」
バイザー付きの兜から見える顔はどう見ても骸骨。
ただのスケルトンの出現に、プレイヤーたちは困惑を隠せない。
「ふ、ふふふ、うふふふふ。さぁ哀れな子羊たちよ、絶望に沈みなさい、これこそは我々の叡智の結晶。すーぱーヘンリエッタさんMARK-Ⅱよ!!」
「あ、あれ? ローリィさん、すーぱーヘンリエッタさん改じゃなかったでしたっけ?」
「こっちの方がカッコイイじゃない。さぁゆけすーぱーヘンリエッタさんMARK-Ⅱ!!」
何やらいろいろと強化されたらしいヘンリエッタさんがプレイヤーたちに対峙する。
「うわー、なんか強そう」
「逆に弱そう、強いと見せかけて雑魚だったりするんだぜ」
「瞬殺されたらおもろいんだけどな。誰か神聖スキル持ってね?」
「あ、俺除霊スキル持ってる。くらえ! キリエライト!」
プレイヤーの一人が開幕一撃、とばかりに聖属性魔法を放つ。
が、ブルーメタリックの兜に触れたその刹那、ガィンっと変な音と共に放ったプレイヤー向けて聖属性魔法が跳ね返った。
「ぎゃぁぁ、昇天しちゃうぅ」
「跳ね返されて死に戻りやがった!?」
「あの魔法、普通にダメージも受けるのか、ナムー」
「成仏しろよ、ナムー」
哀れな犠牲者に追悼を捧げ、プレイヤーたちはヘンリエッタさんを見る。
「聖属性対策の鎧か」
「どうやらガチガチに対策されてるみたいだな。ほら、バイザー閉じちまった。これで聖魔法は届かなくなったぞ」
「あの鎧、どういう属性が乗ってんだ? とりあえず聖属性反射はあるみたいだが」
「待て、鑑定してみる、武具鑑定は任せな!」
鑑定したプレイヤーだったが、目を細めて眉根を寄せて、さらにしばし、鑑定結果を精査する。
「どうした?」
ヘンリエッタさんが動き出し、タンク役が前に出てヘンリエッタさんと戦い始める。
中衛を担うプレイヤーの一人が鑑定中のプレイヤーに尋ねた。
しかし、むぅっと唸るだけで返答がない。
「おーい?」
「リフレメタルとかいう意味不明な素材で作ったリフレクションメイルだ。魔法全反射に加えて物理耐性、衝撃耐性、耐熱耐冷。それから……確殺、無効」
「嘘……だろ?」
「兜もひでぇぞ。耐熱耐冷状態異常無効化、打撃耐性、腐食吸収、視覚拡張」
「嘘だろ。魔法反射で状態異常無効で物理に耐性!?」
「ダメージエフェクト!」
格ゲー少女はいないが、前回大会を経た今、ダメージエフェクトによるHPやダメージの視覚化はプレイヤーたちにとって必須事項となっていた。
数は少ないながら、補助目的で入手済みのプレイヤーがいるのだ。
「げぇ、あれだけ攻撃してまだ1ドットすら削れてねぇ!?」
「こりゃ単純に硬い敵だな。攻撃は単調だが強いぞヘンリエッタさん」
「初めて出会った時はルルルルーアさんに即殺されてんのにな」
「ってかヘンリエッタさんと言えば死にまくって戻ってくるゾンビアタック使えるんだよな、個人で」
「ほんと、長丁場になりそうだなこれ……仕方ない、他のプレイヤーが来るまでとにかく削りまくるぞ!」
「俺らでも十分戦えるのはいいな。というかヘンリエッタさん放置して先に進むとかできねぇか?」
「ヘンリエッタさんが出てきた道、黒い壁に塞がれちまってる。ここにいる三人を撃破しないと先へは進めないみたいだぞ」
「ヘンリエッタさんだけじゃなくローリィさんやルルルルーアも倒さなきゃいけないのかよ」
「今は未だ彼女らには触れるな。下手に攻撃して参戦されると厄介だぞ」
「ヘンリエッタさんのHP半分切ったくらいで参戦しそうだな」
「それでも今の状態で参加されるよりはマシだろ」
結果的に、ローリィさんやルルルルーアさんには、参戦してくるまで触れないことに決めたプレイヤーたちであった。




