表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/1100

56.運営さんはがんばっている

「ふぅ、バグ取り終了か」


 一通りの仕事を見て回り、問題がないかを確認するのが彼の仕事だ。

 このほのぼの日常オンラインの開発チーム室長である彼は、これから始まるイベントの進捗作業を確認し終え一息ついていた。

 メンバー全員が疲労困憊だ。

 さすがにAIに殆どの運営を任せているとはいえ、バグの除去や掲示板等の監視、イベントの作成、不正アクセス等へのセキュリティー対策など寝る間もないほどに仕事は山積みだった。


「室長、やっぱり二交代制だと対応しきれてない気がするんですが」


「これ以上人を増やしてもなぁ。このゲーム自体最新の機密満載だし、外に漏れる可能性は極力減らす方針だからなかなか人材の確保が出来ないんだよ」


 前々から上には伝えているのだ。

 新人の起用早くしてくれ、と。

 AIに任せられる権限を増やすのでもいいが、下手に増やし過ぎるとこちらからの指令を受け付けなくなる可能性が出てくるからこれ以上の権限を渡すのもマズいのだ。


「うわー、それ入手しちゃうのかよ!?」


「ヒロキン担当、どうしたー?」


 思わず声を上げたのは、開始直後にヒロキンなる人物をずっと観察していた職員だ。ハナコさん好きでハナコさんの作成から何から全て任せていた彼は、余りにもヒロキンの行動見過ぎて仕事そっちのけに成り始めてたのでそれならもうヒロキン専属で変な行動起こしたりした時の対処頼むわーと担当者にしておいたのだ。


 ヒロキン、ただの一プレイヤーなのだが、なぜか初回からいろいろやらかしていて目が離せないプレイヤーの一人だ。

 そもそもこちらが想定していたイベントをなんでそうなる、といった攻略をして来るプレイヤーが幾人もいるせいでその対応やそこで発見されたバグなどの直しで残業が捗る捗る。


「あー、室長、心を強く持って聞いてください」


「おい、何やらかした? ハナコさんにテケテケさん、稲荷さんまでテイムしといて七不思議暴露して本来30レベルが平均攻略レベルだったかくれんぼイベント最難関を三人でクリアしておいてこれ以上何をするんだそいつは? というかなんであのイベント攻略出来たし?」


「え、そりゃハナコさんテイムでテケテケさんもテイムすることになったでしょ、テケテケさんがいたことでツチノコさんテイムできて。幸運持ってたのとスキル構成の御蔭で稲荷さんから貰える神通力が不要になってテケテケさんの提案で稲荷さんまでテイム。その下地があったことでかくれんぼの異変を途中で止めれて、何故か手に入れてた悪魔召喚の書で一番適任を召喚して適正アイテム捧げて、UFOの居場所を見付けたっしょ。その後冒険者仲間集ったらハナコさんの一声で集まったのが攻略組トップクラスの二人だし。ピンポイントで宇宙人特攻のグレートマンテイム済みマイネさんとか呼べちゃうかな? なんで未知なるモノさんは未知なるモノだった者を食い殺して種族変化起こしてるのか不明だし、本来なら数カ月後くらいのイベントで種族変化体験みたいなのする予定だったのに。ですよ」

 

 そうなんだよなぁ、あいつ意味不明だよなぁ。正体不明のバケモノに食われたならそのまま死亡1回だろ。なんで内部から相手食い破って生き残ろうと思えるんだ? 相手の容姿見ろよ、ヤバいって分かるだろ、食う気にもならんだろ。というか正気度抉れるわっ。


「マイネマイネさんも異常っすよね。なんでボディーランゲージで本来仲間になる予定が無かった正義の味方をテイムできちゃうのか。正義の味方は対抗組織や宇宙人を全て撃破した後に味方になる予定なんですけどねぇ? 丁度タイミング的にテケテケさんがAI側からテイム要請出来るようにした後だったからなぁ。運営側も想定外だったんですよねー。あの後で対策はしましたけどグレートマンはすでに彼女にテイムされてたからそのままにしたし。御蔭で本来メレオン星人を発見出来ずに奇襲されて全滅パターン入るはずだったのにグレートマンが見破って未知なるモノさんがメレオン星人捕食して完全擬態手に入れちゃったでしょ。アレの御蔭で本来届くはずのなかったノーデンシス星人を倒せた訳で。本来なら巨大化したスーパーメレオン星人にノーデンシス星人が喰われてスーパーメレオンシス星人に成るはずだったんですよねー。そうなってたら確実にクリア不可能で詰んでたはずだったのになぁ」


 ほんと、どれ一つ欠けてもクリア出来ないはずのピースが全て揃ってやがる。


「なぁ、やっぱ宇宙人に幽霊弱点属性付けるのやめない?」


「何言ってんですか室長、各種族に弱点種族と得意種族付けようぜって言ったの室長ですよ。アレの御蔭でそっちのチーム死に体ですからね。今日休んでるのもそのせいです」


「うぐ」


「そもそも、そこの弱点だけ消すとバランス悪くなるでしょう。円環状に宇宙人は幽霊に弱く幽霊は妖怪に弱くとか決めたっしょ。向こうのチームせっかく作ったシステムやっぱ止めるとか言ったら全員辞めるとか言い始めますよ」


「それはマジやめて!?」


 そういえば俺が発端だっけ? と室長は考える。

 確か、得意種族と弱点種族を円環になるように繋げたんだったか。

 宇宙人、幽霊、妖怪、都市伝説、魔法、自然・奇跡、科学、古代、宇宙人だったかな。

 他にも神や悪魔、外なるモノなどがあるが、それは輪からあえて外してある。


「んで、結局何が入手されたんだ? 開かずの間でも攻略されたか? 七不思議テイムくらいなら驚かんぞ?」


「……っす」


「あん?」


「宇宙船っす」


「……なんて?」


「ノーデンシス星人の乗ってた宇宙船がヒロキン専用宇宙船になったんですよ、ありえねぇーっ」


「はぁぁ!? 宇宙船なんて数年後を目途に配置予定のシステムだぞ!? なんでこの時期に手に入れてんの!?」


 ヒロキン、一体お前は何処に向ってんだよ? まだ開始数日しか経ってねぇんですが!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ