560.第三回イベント、十六日目正義の味方決戦1
ついに十六日目に入った。
昨日一日で倒し切れるはずだったスレイさん、カルカさんステージには、人型機械の残りと共に、無数の正義の味方が敵側として参戦していた。
昨日は撮影会になってしまったので対戦する状況ではなかったものの、さすがにプレイヤー側もこのままでは不味いということもあり、ゲーム時間内で一日経ったイベント十六日目、ついに正義の味方との闘いを決意したのである。
「いいか皆、このまま撮影会をいたずらに伸ばしても俺たちが不利になるだけだ。ここはもう涙を飲んで正義の味方たちを撃破、全ての恨みをヒロキにぶつける!!」
そう、正義の味方と戦うことになったのも全てヒロキのせい。
プレイヤーたちはヒロキを悪役に仕立て上げることで一致団結したのである。
広場へとやって来たプレイヤーたちの目を見て、正義の味方たちも昨日の和気藹々とした光景はもうここにはないと戦闘態勢に入る。
「さぁ始めようプレイヤーたち。我が名はカルカジーナ・アルセーヌ。秘密結社アルセーヌ首領である! この首、取れるものならば、取って見せよ!」
「正義の味方として本来怪人と手を結ぶなど言語道断ではあるが、今回はイベント。これも夢のタッグバトル。昨日の敵は今日の友。覚悟はいいなプレイヤー諸君! 全軍、戦闘開始!!」
悪と正義、二人の首領級が開戦の狼煙を上げる。
プレイヤー側も何か言おうか、と思ったモノの、血の気の多いプレイヤーたちが早速突撃してしまったので誰も何も言えずに戦闘開始となった。
「まずは超能力少年隊だ! あの遠距離は不可視だから速攻で潰すぞ! 犠牲を厭うな!」
「ババァだ! ババァを止めろ。魔法老女が無駄に強ぇぞ!!」
「キャプテンバイアスロンはゴブリアに任せて!」
「ああ、戦いたくない。正義の味方と戦うなんて……」
「マイネさんしっかり、ほら、グレートマンさんたちはやる気ですよ!」
すでに戦意を喪失しているマイネが一人いるが、皆ソレは放置して激戦地向けて特攻していく。
マイネにとってはイベントと言えども正義の味方に刃を向けるなど、出来るはずがないのだ。
その場に四つん這いとなり、地面を握りしめる。
「私は、私は生まれて初めて、人を殺したいと思ったよ……ヒロキぃぃぃ、私に正義の味方を殺させること、必ず、必ずテメェの骸で贖わせてやるからなァ!!」
血涙流し、決意したマイネが立ち上がる。
「今日だけは、今日だけは、私は正義の味方を殺すモノ、邪悪なるマンホール少女、ダークマイネよ!!」
「いや、意味わからん」
「行くわよプリピュア! 我が悍ましきマンホールを、くらえぇ!!」
もはや破れかぶれ、地に堕ちたマイネが正義の味方に牙を剥く。
全ての罪をヒロキに被せ、悪堕ち少女が参戦した。
「マイネさんがなんか弾けた!? アレはアレでヤベェ、近づきたくねぇ!!」
「とりあえず戦力が増えたんだ、喜ぼうぜ」
「おいたわしやマイネさん」
「一番大好きなモノを自分の手で壊さないといけないなんて、ヒロキ、なんて悪辣な」
とはいえ、マイネさんはまだ正義の味方を倒す覚悟は決まってないようで、戦う相手は基本グラサンスーツたち。
あるいはカルカさんへと突撃するが、やはり七連撃を避けきることができずに死に戻ってしまう。
「マイネさんが死んだ!」
「テイムキャラは三体とも健在だぞ。グレートマンさんたち、いったん下がってマイネさん来るまでそっちで待機、下手に殺されないようにしてて!」
「クソ、カルカさんさえ撃破できれば……」
「正義の味方クソ強ぇ!? なんでお約束な動きして隙だらけなのに勝てねぇの!?」
「ポーズ取られるとつい見ちゃう。俺たち自身で隙作っちまってんだよ!」
「ハロウィーズだ、俺ファンです、サインお願いします。あとトドメ刺すときはランタンレッドさんの必殺お願いします」
自ら殺されに行くプレイヤーもしばしば。
おかげでプレイヤーの動きもバラバラになり、なかなか攻略に至らない。
正義の味方は連携も上手く、自爆特攻を受けてもカルカさんの軍団ガッツで復活。さらに回復スキルが飛んできてHP全快。
「回復役を倒さないと!」
「いや、遠距離タイプだろ!」
「タンク倒さねぇと届かねぇよ!!」
プレイヤーによって狙う相手も様々、集中すれば少しずつ倒せるところが、ばらついてしまうためどうにもあと一歩敵を倒すに至らなかった。
「ごめん、死に戻った!」
マイネさんが復帰し、再びカルカさんと激闘を始める。
本来、正義の味方さえ来なければ、少なくなったグラサンスーツとスレイさんをプレイヤーたちが叩き伏せ、マイネさんが戦うカルカさんだけになったところで全員でボコ殴りしてクリア、となるはずだったのだが、まだまだこのステージを超えるには時間が掛かりそうだった。




