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558.第三回イベント、十五日目熊決戦4

 エルエさんが炎をまとった。

 本来であれば燃え尽きるはずのそれは、エルエさんを保護するように燃え盛り、近づくプレイヤーを悉く焼き尽くす。

 アインシュタイゼンバーストモードにより、物理攻撃消失特性と近接時敵焼失特性を得た彼女は、飛び上がってくるプレイヤーをマグナムザッパーと斬艦刀で切り伏せ、無数の銃で撃ち抜き、ただただひたすら殺しまくるバーサーカーモードに突入していた。


 HP自体は既にほとんど消えており、多少なりと魔法で削ればそのうち死亡するのだろうが、エルエさんによる被害は甚大になりつつあった。

 レムさんこそ倒し、メカニカルベアがオートモードでの単純機動しか行わなくなったので、プレイヤーがエルエさん撃破に集中しだしたのも理由の一つになる。


 しかし、あと少しなのだ。

 あと少しダメージを与え続ければレムさんに続きエルエさんも落とせる。

 ここでエルエさんを倒しておけばかなり楽になるはずなのだ。


「時間がヤバい、もうすぐイベント終了になっちまう!」


「くっそ、俺死に戻ったらヒーロー撮影会行くんだっ」


「俺も行きてぇ!」


 そしてプレイヤーたちにとって最悪なのは、この段階に入ってゾンビアタックしてくる味方の数が一気に減ったことである。

 別ルートで正義の味方が勢ぞろいしたらしく、撮影会が始まっているらしいのだ。

 普段この世界で活躍しているヒーローたちと撮影できるということもあり、プレイヤーたちがこぞってそっちのルートに行ってしまったのである。


 おかげでエルエさん攻略を行うメンバーが徐々に数を減らしつつあった。

 なんとか削り切りたいがその火力が足りない。

 プレイヤーたちとしても他のプレイヤーのやりたいことを阻止してまでここを攻略するわけにもいかず、もどかしい状態であった。

 それでも、エルエさんをあともう少しで倒せる、そこまでダメージを与えた時だった。


宿敵穿つ聖なる刃(ブリューナク)


 想定外の一撃が天空より打ち放たれた。

 地面に突き刺さる光の槍が大地に住まう生物を悉く焼き尽くす。

 残っていたメカニカルベアは異変を察知し即座に空へと飛びあがり、エルエさんは最初から空。

 つまり、プレイヤーたちだけが不意の一撃を食らって消し飛んだ。


「ぬおぉ!? ガッツで生き残れた!? 何が起こった!?」


 ガッツ持ち、あるいは光属性への耐性が高かったプレイヤーだけが生き残る。

 そして、見た。

 空より降臨する光り輝く一人の女性を。


「エルエさん、撤退要請っす。ここは請け負うっすよ」


「却下です、レムさんの仇が打てていマセん」


「ヒロキからの命令っす。アレを起動するんで一度引くこと、と」


「……命令、了承」


 不満顔ながら、ヒロキの命令と聞いたエルエさんはそのままバーストモードを解除し撤退を始める。

 なんとか迎撃しようと遠距離スキルを放つ生き残りたちだが、助っ人に現れた天使、ルースさんにより遠距離攻撃は叩き落とされてしまった。


「さぁさぁプレイヤーの皆さん、選手交代っすよーっ。ここから先は、このルースルス率いる天使軍団がお相手するッス! 開け天界の扉! 聖なる架け橋(セラフィックゲート)!!」


 空に光の扉が描かれる。

 驚き見上げるプレイヤーたちの前で、光の扉が開かれ、そこから一体、また一体と翼をもつ人々が現れる。


「天……使?」


「やべぇ、世紀末来ちまった……」


「福音が、聞こえる……」


「天使と戦うことになろうとは……っていうかここで今日のイベント終わりじゃん! 次回に続くってやつじゃない?」


 すでにイベント時間は無くなっていた。

 現れた天使たちが攻撃に移る時間もなく、プレイヤーたちが反撃する時間もない。

 ただ、新たな増援部隊との激戦を予感させる状況を見せつけられたまま、時間が終るのを待つ状態へと入っただけである。


「つか、メカニカルベアにエルエさん、今度は天使の軍勢? どーなってんだよヒロキのテイムキャラは。どんだけ大軍戦闘に秀でてんだ?」


「これ、一プレイヤーが手に入れた戦力なんだよな? どーやったらこんな大軍勢手に入れれるんだよ。テイムキャラ一人いるだけでも十分過ぎんだろ」


「人形の方じゃ死者が蘇るし、グラサンスーツの方は正義の味方が参戦だろ。ほんと二十一日間のイベントとか持たないと思ってたのに、ここまで差が開くもんか?」


「というかどうやったらこんな多種多様なテイムキャラテイムできるんだよ。俺もハナコさんテイムしたらこんな状態になれたのかな?」


「いや、無理だろ。ぜってぇヒロキのリアルラックが関係してんぞ。幸運過ぎる気はするが」


「でもあいつ仕事クビになって定職付いてないんだろ? 幸運か?」


「自分から辞めたんじゃなかったっけ? あと俺らの投げ銭で生活問題なくなったらしいぞ」


「儲け過ぎて怖いとか前に言ってたな。なんか還元する方法考えてるらしいけど」


「その還元策でハナコさんたちのライブ企画したけど投げ銭が増えただけで還元の意味なかったってよ」


 多少の時間が余っていたのでプレイヤーたちは無駄話を始める。

 その間にも空を埋め尽くす天使の群れ。

 イベント時間が終了し、戦いが始まることなく今回のイベントが終るのだった。

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