557.第三回イベント、十五日目人型機械決戦4
「おかしいな、さっきまでプレイヤーたちと激闘を繰り広げていたはずなんだけれど」
「スレイさん、写メいっすか」
「えぇ、私と!?」
怪人形態が気に入ったのか、結構なプレイヤーから写真撮影を依頼されるスレイさん。
さらに正義の味方たちとも一緒に撮ったりなどをして広場は撮影会場へと変化してしまっていた。
時間を稼ぎたいスレイさん側としてはむしろ願ったりなのだが、ノリについて行けずに戸惑いが勝ってしまっていた。
さらに、一部プレイヤーがグラサンスーツと写真を撮りだし、カルカさんも無理矢理参加させられてしまう。
先ほどまで押しに押していたカルカさんも撮影強制のプレイヤーたちによる押しには弱いらしく、最終的に姉妹揃ってツーショットを撮影されてしまうのだった。
撮影を終えたプレイヤーは別のプレイヤーたちの行列整理をし始め、プレイヤーの一部が商売迄始めてしまう。
戦場が一転、アイドル握手会のイベント会場みたいなノリに変化してしまっていたが、誰も先に進もうなどというプレイヤーは現れなかった。
「正義の味方は誰か死んだ? 死んでない? 良し!!」
マイネが死に戻ってきてすぐさま正義の味方一人一人と写真撮影を始める。
惜しむらくはグレートマンたちが死亡状態だということだろう。
彼らが生存していれば正義の味方全員集合写真だって取れただろうに。
「あ、やべぇ、もうすぐイベント終了だぞ」
「いいんじゃね? 今日はもう戦いって感じじゃないだろ。イベント終了まで撮影会やろうぜ。皆撮影したいみたいだし。下手にここで暴れると逆に消されるぞ」
「それもそうか。あ、ハロウィーズさん、撮影おなしゃす!」
「私キャプテンバイアスロンさんと撮りたい」
「む、私などとかね? 構わないが……」
意外とまんざらでもない顔で、いかついおっさんと美少女プレイヤーがツーショット。
それを見たスレイさんはなんとなく外人さんにネトラレ写真、という言葉を思い浮かべたが、あえて口にはしないでおいた。
それからもプレイヤーたちは撮影会を止める気はなく、盛大に賑わいを見せ、他のルートに向かっているプレイヤーたちも、騒ぎを聞きつけ顔をだすようになった。
「うーむ。どうするスレイ?」
「ホント、どうしようかな、姉上……」
正義の味方を助っ人に頼んだら戦いどころではなくなってしまった。
正義の味方たちとしても相手が悪意無く撮影お願いしてくるので無下にできないようで、盛大な賑わいになっていた。
「これ、普通に一日イベントとしてやれるんじゃない?」
「運営側でもそのうち企画しそうだな。撮影会やサイン会だけで十分に楽しめそうだということがこれで証明されたからな」
「スレイさーん、撮影お願いしまーす」
「あー、はいはい」
「誰か一人でも暗殺してくる奴が居れば戦闘再開するはずなんだが……無理そうだな」
スレイさんが撮影に向かったので、一人きりになってしまったカルカさんがため息を吐く。
ここまで戦意がなくなってしまえば、このステージではあと数分もないイベント終了時まで戦闘が再開されることはまずないだろう。
つまり、ここから先の戦いは次のイベント開始に持ち越しということだ。
「まぁ、たまにはこういうイベントでもいいか。という訳だヒロキ、問題はあるか?」
『ないね。そのままプレイヤーを足止めしてくれれば問題ないぜ』
携帯電話でヒロキと連絡を取る。現状は既に向こうで見られているだろうが、実際に報告して判断を仰いでおくのは悪くない。
しかし現状は予想していた報告と対応だけである。
『ああそうだ。運営の方からカルカさんに連絡入ってるよ』
「ん? 運営から?」
『ここで写真撮影会に移行するのはどうなのか、ってさ。なんか涙目だったよ』
「私のせいではないだろう、確かに正義の味方たちを扇動したのは私だが、こうなるとは思っていなかったぞ」
本来ならそのまま戦闘に入ってプレイヤーと正義の味方の潰し合いになるはずだった。
まさか写真撮影にサイン会が始まるなんて予想できるわけがないだろう。
「あ、カルカさーん、全員集合写真撮るからこっち来てッて」
「全員集合写真……正気かこいつら」
『ま、イベントなんて楽しめりゃいいだけだし、プレイヤーが楽しんでるならそのまま楽しませてやっとくれ』
そして集合写真が一枚、二枚、全ての正義の味方とプレイヤー、中央にスレイさんとカルカさん、両端にグラサンスーツという素敵な集合写真が完成した。
「お、そろそろイベント終わりだな。3……2……1、んじゃまた次のイベントで!」
「次は容赦しないぜ正義の味方!」
「望むところだ。存分に戦い合おう。君たちの力を示してくれ!」
カルカさんは友情が生まれた正義の味方とプレイヤー陣営の挨拶を見てあっけにとられる。
そんな彼らを見つめたまま、イベント終了となり、十五日目が終わりを告げた。




