554.第三回イベント、十五日目人型機械決戦3
「カルカさん、覚悟ーッ!!」
死に戻って来たマイネが再びカルカさんへと突撃する。
マイネにかかりきりになるカルカさん。
おかげで他のプレイヤーたちの死に戻りが少なくなり、自爆特攻が再開される。
グラサンスーツたちはガッツで一度死ななくなるとはいえ、二度自爆特攻を食らったり、一度目の自爆でガッツが発動した後にダメージを受けるなどで少しずつ数を減らしていた。
すでに半分を切っており、カルカさんによるブーストがあっても徐々に駆逐速度が上がっている。
スレイさんもそれを理解しており、触手を増やしたり雷撃を増やしたり妨害をしているのだが、プレイヤーたちにはあまり効果が出ていなかった。
「くっ、頃合いか」
「姉上、合図は私にやらせてくれ」
「いいのか?」
こくり、頷いたスレイさんが纏っていた白衣のボタンを取っていく。
「おい、スレイさんが脱ぎだしたぞ!?」
「ま、まさかここでストリップショーして俺たちの目をくぎ付けに!?」
「な、なんて悪辣な罠! そんなコトされれば罠とわかってても目が離せない!?」
「誰がやるか!」
勘違いしているプレイヤーたちに怒鳴りつけながら、スレイさん変身を行う。
人の体より怪人形態へ。
ゼリー状に変化を始めた体が青みがかった透明な水生生物を模した女性フォルムへと変化する。
「スレイさんの怪人形態!?」
「やっぱり電気クラゲだ!」
「いや待て、あの色合い、頭に烏帽子被ったような姿、多分だけどカツオノエボシだぞ! クラゲじゃなくヒドロ虫系の奴だ!」
「ヒドロ……なんて?」
「知らないのか? クラゲの仲間みたいに言われてるが、カツオノエボシはヒドロ虫の群体で出来てる生物だぞ?」
「しらそん」
「マメ知識とかどうでもいいんだよ。結局どう変わってどう危険なんだ!」
「毒性がヤバい、あと麻痺する、触手巻き付く、マジヤバす」
「ちょ、なんか触手が変化してる!?」
「あばばばばばばば」
「ええい、スレイさんは無視でいい、もうほとんどグラサンスーツがいなくなってんだ。さっさと駆逐し……ぐあぁ!?」
「なんだ、どうし、ぎゃあぁ!?」
「おい、今のどっから……か、体が勝手に浮き上がって!? ま、待て、そっちの方には曲がらな……ぎゃばぁっ」
突如、プレイヤーたちの死に戻りが加速する。
異変に気付いたマイネが慌ててカルカさんから距離を取る。
「ちょっと、何したの!?」
「合図を送ったのさ。機械人形が少なくなったから、人数の補充って奴だね」
「そういうことだ、マイネ君」
不意に、マイネの背後から声が聞こえた。
はっと気づいたマイネが振り向けば、そこにはありえない存在が立っていた。
「馬鹿な!? カイセイジャー!?」
「あら、私たちもいるわよ?」
「助っ人で悪の首領と手を組むことになるとは、まぁ祭りらしいから楽しくやろうか」
そこには、多種多様な正義の味方が集結していた。
マイネは衝撃の余り棒立ちになってしまう。
自分の憧れの存在達が勢ぞろいなのだ。夢の光景過ぎてしばし見とれてしまった。
はっと気づいて我に返った時、すでにカルカさんは背後からマイネを殺す七連撃を叩きこんだところだった。
死に戻るマイネは悔し気に呟く。サイン色紙、持ってくればよかった、と。
「ちょ、ここでさらに増援!?」
「正義の味方が群れ成してきたんですが!?」
「しかもカルカさんの指揮下に入ったせいで軍団ガッツ掛かってる!?」
「ば、ババァ!? ババァ強ぇ!? なんだあの魔法少女服のババァ!?」
「きゃあぁ!? 変態がいる!? 魔術師フトシ? 知らないわよ、死ねぇ!」
無数に現れた正義の味方を前に、プレイヤーたちがパニックを起こす。
「キャプテンバイアスロン、正義の味方参加者は以上です」
「よかろう。諸君、此度は祭り、敵はプレイヤーたちだ、思うところはあるだろうが、今宵は遊び、遠慮なく相手を倒してしまおう。全員散開! 日頃の欝憤を存分に晴らしてくるがいい」
キャプテンバイアスロンの演説が終わり、正義の味方たちが我先にと戦場に突撃する。
プレイヤーはせっかく人型兵器たちを減らしたというのに、再び増えた敵を前に、一気に押し込まれ始めるのであった。
「クソ、なんで正義の味方が怪人助けてんだよ!?」
「正義の味方に交じってスレイさんの触手が襲ってくるとか何この悪夢!?」
「うおぉ!? なんか俺宙に浮いてる!?」
「あいつらだ! 超能力少年隊だ! テレキネシスで操られてるぞ!」
「ハルトきゅん可愛い! 写メ取っていい?」
「え? あ、はい」
プレイヤーの一部が正義の味方と写真撮影を始めてしまう。
意外と頼めば一緒に映ってくれるようで、撮影会が始まってしまった。
「いや、戦えよ!?」
「写真撮影時に襲っちまえばよくね?」
「正義の味方相手に悪人にも悖る行為、お前人としてどうなの?」
「えぇ!? なんでそうなる!? え、俺が悪いの?」
戦闘そっちのけでヒーローショー撮影会が始まってしまった戦場で、カルカさんとスレイさんは何とも言えない顔をするのであった。




