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553.第三回イベント、十五日目人形決戦3

 一進一退の攻防が続く。

 人形たちはそこまで脅威ではなくなりつつあった。

 復活はしてくるものの、全身を破壊してしまえば何とかなるし、最悪一部でも破壊できればその分復帰する個体数が減る。


 徐々にだが確実に、人形たちの数は減りつつあった。

 ただ、やはり芽里さんメリーさん、そしてニャルさんと思しきメリーさんと同じ容姿の人形に関してはダメージ自体未だに一撃たりとも与えられていない。

 どうにか彼女たちにダメージを与えたいプレイヤーたちだったが、メリーさんの神出鬼没さに芽里さんを守る三体の人形、そして得体の知れないニャルさん、となかなか攻めきれないでいたのである。


「おーし、今回はここ攻めっぞオルァ!」


「芽里さんステージ、なんかメリーさんが二体いて両方普通に動いてないか?」


「不思議なこともあるものねぇ。あら? 攻撃仕掛けてるメリーさん、なんだか神聖な気配と呪物の気配があるわ」


「お。マジだ。なんかまた変な混ざり方してんな。天界での行動のおかげで見えるようにはなったが、どうなってんだありゃ?」


 そんな戦場へとやって来たのは、別の場所で死に戻ってからやって来た、ヨシキ、ヒバリ、ユウの三人だった。

 戦場へと入り込むと同時に、近くにいた人形を撃破していく。


「よぉ、未知なるモノさんよ」

 

「おっと、君らはヒロキの友人の。どうだ、楽しんでるか?」


「めちゃくちゃ死に戻ってるよ。んで、ここはどんな感じだ?」


 未知なるモノから状況を教わったヨシキたちは、すぐさま作戦を練り始める。

 

「どうするよ?」


「とりあえずあの操り糸が邪魔だな。芽里さんから撃破必須か?」


「でもぉ、それには周囲を倒さないとじゃない? ヨシキ、ここはあんたの出番でしょ」


「マジかぁ……俺が覚えた天界スキル、死に戻り前提だから嫌なんだよ。ったく、めんどくせぇ」


「ま、お前の自滅特攻が輝くんだ、やってやれよリーダー」


「おま、こんな時だけリーダーにすんじゃねぇ!」


「ユウはこっち。しっかり守ってね」


「あいよー、せいぜい固定砲台やってくれや」


 ヨシキが気合を入れ、ヒバリがチャージを開始する。


「よし、ヒバリさんの警護手伝うぜ。糸を斬れる奴が居た方がいいだろ」


「ぬかるなよ未知なるモノ、なんかメリーさん知らない間に這い寄ってんだろ」


「それに関しちゃ(V)o¥o(V)さんがいるから任せてる」


「索敵要員ではないんだがな」


 ぶつくさいいながらも遠距離から人形たちを打ち抜いていくマタギの男。

 正確無比なヘッドショットにユウが感心していると、何かに気付いたように身構えるマタギの男。

 ひたり、ひたり、自分よりも大きな鋏を引きずりながら、メリーさんがこちらに近づいてくるのが見えた。


「来るぞ!」


「見りゃわかる。ヒバリのチャージ完了まで守り切るぞ!」


「ワタシ、メリーさん。ヒバリ、今から、会いに行くね」


「あら、なんか状態異常? ちょ、ターゲッティングされてる!?」


 ヒバリが驚く。

 メリーさんによるスキル、今宵貴方をターゲットが発動。

 すぐさま走り出すメリーさん。


「チィッ、普通に突撃してくるのかよ!」


「私は芽里ほど甘くないのよっ」


 巨大な鋏で攻撃を仕掛けてきたメリーさんに、未知なるモノが鉈で応戦。


「おい、それは耐久力あまりないんだぞ!?」


 持ち主である(V)o¥o(V)が思わず叫ぶ。

 しかし気にせず未知なるモノは鉈を振るう。

 

「守るための犠牲だ、死に戻られるよりはマシだろ」


「ふざけんな、それ造るのにどれだけ熊狩ったと思っている! 壊しやがったらテメェをヘッドショットするぞ!」


 マジギレしていたので仕方なくメリーさんを蹴り飛ばし、武器をしまう未知なるモノ。

 右手を剣へと変えて再びの切り結びを行い始めた。

 

「これやるといろいろ減るんだよっ」


「ならやらなきゃいいのよ。おとなしく狩られなさい」


「そりゃこっちのセリフだ! つかメリーさんには誰が入ってんだ?」


「さぁて誰でしょう。シュレディンガーの猫は開けないからこそ期待値が存在するのよ」


 答えは教えてくれそうになかった。

 メリーさんの攻撃を受け流していると、じれたらしいメリーさんが一度引く。

 距離を取ったメリーさんが何をするかと身構える未知なるモノ。


「馬鹿者ッ、敵に隙を与えるなッ!」


 (V)o¥o(V)がとっさに叫ぶ。しかし未知なるモノがそれに反応して距離を潰すより早く、メリーさんの新たなスキルが発動した。


「心象具現・電話墓場」


「なんっ!?」


 空間が塗り替えられる。

 広場だった場所は一瞬にして切り替わり、おどろおどろしい曇天世界へと切り替わる。

 地面は赤茶けた荒れ地に変わり、そこかしこに、無数の電話が打ち捨てられていた。

 そして、悪夢の呼び出し音が、鳴り響く――――

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