548.第三回イベント、十五日目熊決戦1
レムさんステージではメカニカルベアの群れに加え、リビングアーマー、リビングソード、ガラクタの巨人が猛威を振るっていた。
プレイヤーはなんとか倒そうと必死に戦ったが、十四日目のイベント中に殲滅することはできなかった。
しかし、死に戻りを覚悟した死なば諸共攻略法は未だに有効的であり、メカニカルベアは着実にその姿を消して行っていた。
ガラクタの巨人はその巨体で多くのプレイヤーを一気に屠るだけでなく、相手の攻撃が確殺だろうと即死だろうとガラクタ一つを犠牲にするだけで滅ぶことなくその場に居残っている。ゆえにこの巨人を倒し切る術が存在せず、プレイヤーの快進撃を阻む要因となっていた。
「あの巨人、どうにかならないもんか……」
「メカニカルベアもだいぶ減って来たけど、アレが出てからほとんど減らなくなっちまったな」
「ったく、俺が来たってのに辛気臭ぇ顔さらしてんじゃねーよテメェら」
「だぬさん! そっか朝だからだぬさんがいるんだ!」
「しかし、アレは自爆突攻じゃ死にそうにねぇな。何が一番効果的だぁ?」
だぬの言葉に、誰も何も返せない。
つまり、沈黙こそが答えであった。
「雁首揃えてまだ攻略法見つけてねぇのか? 案内人の奴はどこだ?」
「案内人さんなら確か人形の方に向かってましたよ」
「あっちかよ。しゃーねぇ。取りあえず確殺攻撃はガラクタ一つ倒すだけになるんだったな。つまりありゃ巨人に見えるが群体って訳だ」
「そうなりますね」
「ってこたぁ、各個の耐久力はそこまでねぇはずだろ。範囲攻撃に巻き込んじまえばどうだ?」
「何度か範囲攻撃使ってるんだが……ほら」
プレイヤーの指さす方には、巨人に向かって範囲火炎魔法が放たれたところだった。
巨人に直撃するも、そこまで気にした様子が見られない。
「馬鹿野郎か!? 火炎魔法なんざ機械相手に意味ねぇだろ。やるなら雷撃か水だ!」
「あ、確かに!」
「おい、水か雷属性の魔法かスキル使える奴ーっ」
どうやら頭の回ってないプレイヤーが多いらしい。
だぬは思わず頭に手をやりため息を吐く。
プレイヤーだけで何人いるのだ、と思わず嘆きたくなった。
皆死に戻りのゾンビアタックに慣れ過ぎてしまい考えることを放棄したバーサーカーが大量に出没してしまっているのだ。
ちょっと考えれば弱点くらい想像できそうなものなのに、冷静に分析できる余裕を自分から捨て去ってしまっているのである。
「おお、水だ! 水で電気経路がショートするぞ!!」
「レムさん焦りだした!」
「巨人が崩壊し始めたぞ! 押せ押せーっ」
「メカニカルベア爆殺ーっ、また来るぜーっ!!」
一部プレイヤーは変わらずこのステージにやって来てはメカニカルベアに特攻自爆、死に戻り、スタート地点から駆け抜けてステージへ、を繰り返している。
リビングソードやリビングアーマーも徐々に数を減らして始めており、レムさんを守るモノがだんだんと少なくなっていた。
無数のメカニカルベアの隙間から、レムさんに届きかねない致命的な隙が増えていく。
弓使いのプレイヤーがレムさんを狙い、一射。
開かれた隙間を通り抜け、一筋の矢がレムさんへと届く。
次の魔改造へと取り掛かっていたレムさんの眉間向け、ソレは一気に加速した。
「おしっ、行ける、ジャイアントキリングやったれ!!」
矢を放ったプレイヤーは思わずガッツポーズ。レムさん討ち取ったりと早々に喜んでいた。
「接近は、禁止です」
が、レムさんに当たるその刹那。
上空より飛来したナニカが矢を巻き添えに着地する。
ずどんっと地面に着地した重量物にその場のプレイヤーたちが、なんだっと視線を集めた。
「レムさん、助っ人しマす、です」
機械音を響かせて、重そうな鎧と盾を装備し、ヒートサーベルをブゥンと振るう女が一人。
「え、エルエさんだァッ!!」
「助っ人参戦だと!?」
「バーニア起動、加速システム発動。ナット連射機換装確認、ボルト射出機換装確認、肩部、腰部、上腕部実弾用砲塔換装確認、リビングメイル生成OK、ヒートサーベル出力OK、機械用大型盾換装確認、システムオールグリーン。乙女型LXT-21cエルエ、出撃しマす!」
バーニアを吹かし、エルエさんが飛翔する。
すぐさまナットとボルトをそこかしこに射出し始め、近づく者にはヒートサーベル。攻撃は全て盾で受け流し、プレイヤーを駆逐し始めた。
「ぬあぁ!? 浪漫機体だぁちくしょうめ!」
「ぐあっ!? ボルト刺さった!?」
「ボルトくらいなんだよ、俺はナットがめり込んだぞ!」
「チャージ率100%、一斉射、開始シます」
「あ、ヤベ……」
全ての砲塔を前方に向け、エルエさんの一斉放射。
あらゆるレーザー実弾魔法弾が一斉にプレイヤーを抹消していく。
あまりにも凶悪な一斉射に、エルエさんの前方一直線にいたプレイヤーの悉くが一瞬で消え去った。




