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547.第三回イベント、十五日目人型機械決戦1

 スレイさんは焦っていた。

 プレイヤーの動きが今までと違う。

 それというのも、前回のイベントから掲示板などで情報共有がなされ、自爆攻撃が一番有効だということが三ルートで共有されてしまったのだ。


 おかげでこのルートでも死に戻り覚悟で自爆特攻が横行し始めたのである。

 こうなると痺れる触手を向かわせても諸共に爆発して死に戻ってしまうので麻痺が入る前にスレイさんの触手まで粉砕されてしまうのである。

 さすがにこのままでは不味い。


 さらに面倒なことに、このルートに奴がやって来たのだ。

 そう、マンホール少女ことマイネである。

 正義の味方三人と共に獅子奮迅の活躍を始めたこいつのせいで瞬く間にグラサンスーツ部隊が消滅しているのである。


 しかも、キカンダーには触手による麻痺が効かないし、グレートマンは飛行して空から光線を撃ってくる。

 マンホールは鉄壁だし、ソレに守られたジェイクが遠距離攻撃でヘッドショットをかましてくる。

 おかげで触手もあまり意味をなさなくなった。

 これはもう雷球を投げまくるくらいしかできない。


「スレイさんが雷球飛ばしてきてるぞ!」


「なんっつーか、攻撃が地味だな。他の場所と比べると特に」


 うるさい。思わず反応しそうになる口をぎりぎりできつく結んで押し黙る。

 いちいちプレイヤーの挑発に乗ってやる意味はない。

 しかし、自分の攻撃手段が少ないことも理解はしている。


「変身、するしかないかぁ」


 あまり好きではないのは変身後の姿が非常に自分好みではないからだ。

 それでも、ここで使わないわけにはいかない。

 せっかくの自分の力を出し惜しみして負けました、では示しがつかない。

 そう決断し、変身しようとした、瞬間だった。


「随分と焦っているなスレイリーア」


「え? あ……姉上!?」


 宙空より飛来してきた女が一人、プレイヤーの頭に着地、そのまま押し潰して鞭を振るう。

 周辺にいたプレイヤー十数名を死に戻りさせ、カルカジーナ・アルセーヌが現れた。


「カルカさん乱入!?」


「ちょ、まっ!?」


「待つわけがない! 瞬間奇襲は私の専売特許なのだよ」


 突然の戦力投入に浮足立つプレイヤーたち向けて超高速の鞭が振るわれる。

 

「さぁ機械兵共、随分な体たらくではないか! 我が妹を守るため、死力を尽くせ!!」


 ぶぅぅんとグラサンスーツの目が赤く光る。

 カルカさんの乱入により、彼女のパッシブスキル、軍団死兵と軍団ガッツがグラサンスーツたちに強制発動。

 組織力Ⅾだったスレイさんから組織力Bのカルカさんに指揮権が移り、統率スキルによりグラサンスーツたちの能力値が増加する。


「嘘だろ!? グラサンがガッツ使いだした!?」


「死に戻り特攻で向こうが生き残っちまう!?」


 急激な変化についていけないプレイヤーたちから徐々に脱落していく。

 さらに……


「竜墜とし!」


 攻撃範囲が拡張されたカルカさんの鞭捌きで、飛行属性のテイムキャラたちが次々に餌食になっていく。

 さらに立体機動を使い地上空中問わず走り始めるカルカさん。

 鞭の範囲に入るほどにプレイヤーの数が減っていく。


「不味い、立て直せ! カルカさんを止めろ!」


「マイネ、形勢が変わった! 不味いぞ!!」


「わかってるけど、ええい、グラサンスーツ共が無駄に強くなってる!」


「焦るな皆! 結局死に戻り特攻すれば相手の数が減るのは同じなんだ。カルカさんだぐあああっ!?」


「クソ、死に戻り特攻しようにも銃弾の圧がさっきまでとちが、あばばばばばばば!?」


「っちょ!? スレイさんも能力値強化されてね!?」


「カルカさんの指揮下に入ったからだろ。さすがアルセーヌ首領様だよちくしょう!」


 グレートマンが縄に巻き取られてキカンダーに激突。重量武器として振り回され多くのプレイヤーを圧殺して死に戻る。

 さらにジェイクの足にスレイさんの触手が巻き付き雷撃と麻痺の二段攻撃。

 マイネがフォローに入ろうとするも、グラサンスーツのせいで近づくことすらできず、ジェイクの死亡を見つめるしかできなかった。


「がふっ、マイネ、先に行く」


「キカンダーさん!?」


 さらにグラサンスーツの口からレーザー砲を避けきれなかったキカンダーも死に戻り、マイネのテイムキャラが全て死んでしまった。

 これで十五日目はどれだけ死に戻りしても彼らが手伝ってくれることはなくなったのである。


「ああクソ、たった一人増加しただけでここまで戦局変わるの!?」


「マイネ、随分と口調が悪くなっているな」


「大きなお世話よ! 悪の首領なら正義の味方に倒されなさいよ!」


 マンホール片手に鞭の連撃をいなしながら、カルカさんへと肉薄する。

 しかしカルカさんも手慣れたもので、近接戦闘でも気にせずマイネと戦えている。


「マンホールでよくもやる。しかし、これは受けきれるか!」


「ご丁寧にどうも、何が来ようとマンホール持った私は負ける気しなっ!?」


「七ツ星之軌跡!!」


 刹那、七つの連撃がマイネを襲う。

 避けきる余裕など存在せず、最後の一撃を食らってしまう。そして、運悪く付与されていた即死で死に戻るのだった。

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[一言] コレが姉妹の絆
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