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546.第三回イベント、十五日目人形決戦1

「随分と酷い目に遭ったな、前回は」


 芽里さんステージ手前までやって来た未知なるモノは、思わずうなる。

 隣を歩いていた格ゲー少女と勇者ブレイドが同意を示す。


「肩の辺りからメリーさんの声が聞こえた時にはもう、死に戻ってましたからね」


「あれってメリーさんの言葉だったのか」


 勇者ブレイドは自分を殺した相手すらわかっていなかったらしい。

 未知なるモノもその時はわからなかったが、後から思い返せばメリーさんだったと確信できる。

 つまり、芽里さんの意識が入っていないはずのメリーさんが単独行動を行ってきたということだ。


「一体どういう状況だ? メリーさんの中に芽里さんいなかったよな?」


「芽里さんは中央広場で他のプレイヤーを操っていただろ? メリーさんに意思がある、とか?」


「人形に意思が? そんなことあるんですか? いや、待ってください、長い年月大切に使っていた人形なら、付喪神!」


「ってことは、芽里さんだけじゃなくメリーさんにも気を配って人形たちを倒していかないといけないってことか。遠距離攻撃がないのが救いだが、プレイヤーまで操られるとなるときついな。広場から離れた場所で狙撃するにもメリーさんに襲われるみたいだし」


「何かいい方法ないですかね? 操られると戦いにすらなりませんし」


「操られる前に一撃必殺で死に戻るのが一番じゃねーかな」


「別のルートでそれやってるらしいですよ。こっちでも取り入れてるプレイヤーが出てるみたいです。一応効果は結構出てますけど……味方を巻き込んでるようにしか見えないですね」


 操られたプレイヤーが盾になるせいで思う様に人形を減らせないようだ。

 やるなら操られたメンバーが出ないうちに突攻即死亡、が理想的だろうか?

 さすがに死に戻り前提はちょっといやだな、と思いつつ、未知なるモノは考える。

 何かしらギミックはないのだろうか、っと。


「待てよ。人形使い、操糸術。糸か!」


「糸?」


「まずは糸を斬る。それから人形だ」


 操るための糸がそこかしこに存在しているのなら。まずはその糸から攻略していけばいい。

 単純明快だったのだ。

 

「なるほど、着眼点はよさそうだ。だが……」


 勇者ブレイドが広場に広がっている糸の一部を切り裂く。

 糸は切り裂くこと叶わず、ぐいっと伸ばされ剣の勢いを殺し切る。


「く、現状の攻撃で歯が立たんらしい」


「え、糸の強度おかしくね?」


「切ろうにもこの弾力だ。それとも、何かしら方法があるのかい?」


 そのような方法など未知なるモノにはなかった。

 つまり、糸も切れない以上手詰まりである。


「なんだ坊主、糸を斬ればいいのか?」


 え? 不意に聞こえた言葉に振り向く未知なるモノ。その頬を掠めるように、一筋のナニカが飛翔する。

 

「ありゃあただの糸じゃねぇ。が……儂の勘がこいつが効くと言っとる」


 何の話だ? 未知なるモノが小首を傾げた瞬間だった。

 先ほど、勇者ブレイドの一撃に弾力ある状態を見せつけていた糸が、一筋の矢に切り裂かれていく。


「これは!?」


「鹿の角で作った矢だ。儂ら猟師にとっちゃ獲物を素材に武器を作るのはよくあることでな。そら、ブレイドとやら、こいつを貸してやる」


 と、鉈のような武器を投げ渡してくるマタギスタイルの……もしかしてこの人、大会にも出てた……


「おお、普通に切れた!? なんだこれ。(V)o¥o(V)さんありがとうございます!」


「あとで返せよ」


 かっこぶいかっことじ……え、なんだその長い名前。いや、聞き覚えあるな。やっぱあの時のマタギじゃねーか。未知なるモノは相手が何者かを理解して何とも言えない顔になる。

 名前の呼び方がわからないのだ。


「糸が特殊なんだろぉな。だが、まぁ……狩れる」


 今度は猟銃を取り出し構える(V)o¥o(V)。

 狙いすました一撃が、芽里さんの髪の毛を打ち抜く。


「避けたか」


「お、おいおい、あんだけ離れてるのに、ほぼヘッドショットかよ!?」


「途中で気付かれて避けられていればヘッドショットとは言わん」

 

「凄いです!」


「いつものことだ。それより小さいのに気を配れ、近くにいるぞ」


 小さいの? と言われて三人して慌てて周囲を探る。

 メリーさんがこちらに来ているらしい。

 しばし警戒していると、(V)o¥o(V)が構えを解いた。


「逃げおったか。随分と慎重ではないか」


「いなくなったのか」


「はぁ、心臓に悪いです。メリーさんどっから出てくるのかわからないのホラーですよ」


「人形だからね。でも動きが素早すぎる気がするんだけど……」


「ッ! また来た!」


「捉えた! そこ!!」


 飛びかかって来たナニカに向けて、勇者ブレイドが剣を突き刺す。

 貫通したソレは、人形の腕だった。

 人型大のほうである。つまり、メリーさんではなかった。


「ええい、ややこしい!」


「糸で操られてる奴をこれで切り裂いていこう」


「俺らももらえたりするか?」


「貸すだけだぞ。絶対にやらん」


「じゃあお願いします」


 未知なるモノと格ゲー少女も鉈を借り受け、糸の撃破を開始するのだった。

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