545.第三回イベント、十四日目・ラスボスは悠然に
十四日もついに終了した。
とはいえここまでのプレイヤーたちの動きを鑑みるに、少々危うい感じがしなくもない。
なので、状況を考える。
アイネさんが十四日最後の方で撤退することになった。
時間的にはちょうどプレイヤーも合流地点に向かう辺りだからそこまで問題はない。
けれど森の中でプレイヤー狩りしていたメンバーが居なくなるのは少々問題だ。
そこに割かれていたプレイヤーまで集結してしまう。
ヒロキは特別室の玉座に腰掛け目の前の映像たちを見据える。
画像は九つ存在し、今はこの玉座の有る場所の左右の森で二つ。
芽里さんステージ、レムさんステージ、スレイさんステージで三つ。
そして中央の森を映していた映像は先ほど森での撮影を終え、次に控える広場へと向かっている。
あとはスタート地点とこの最終拠点入り口。
そして最後に各メンバーと会話できるように待機メンバー雑談室が映っている。
『ヒロキー、どんな感じー?』
その待機所から暇を持て余したらしい妖精さんが聞いてくる。
向こうでも同じ映像が流れているはずなんだが、と呆れるヒロキ。
それでもちゃんと所感を答えることにする。
「そうだな。プレイヤーが当初の予定よりもかなり進んでる。正直俺としては十四日目でここまでこられてるのはかなり後手に回り始めている状況だ。後七日あると余裕ぶっこいてたら即ここまで来られる」
『えー、でもまだこっちは20名以上残ってない?』
「ああ。でもここで芽里さんメリーさんレムさんスレイさんが突破されるとあの大群を撃破し続けるにはメンバー的に心もとない。妖精さんだってスプリガン使っても二日と経たずに倒されるよ。妖精さんが倒れればスプリガンもここから立ち去るみたいだし」
『こっちに奥の手は無いの?』
「とりあえずローリィさんたちがなんかやるって言ってたからそれが一つ。ナスさんの死霊が一つ、エルエさんの付属パーツで一つ。アカズさんの旧校舎で一つ、全部で五つか。これで持てばいいんだけどなぁ」
今回運営やハナコさんたちからきつく厳命されてることがある。
つまり、ハナコさんが倒されても暴走しないでってことだ。
ハナコさんが倒されるのは辛いが、これがイベント、悪役を行って倒されるのが確定してるし、この敗北でハナコさんが永久に消滅するわけじゃない。
それを脳内で繰り返してなんとか気持ちを落ち着かせている。
さて、後七日。
おそらく明日にはメリーさんたち三方向が突破されるだろう。
んー。いや、むしろここで一日伸ばしておくか?
助っ人を投入すれば多分行けるはず。
いや、中央の広場に森から突破してくる奴が出てきそうだな。これは誰が相対すべきだろう?
『くっくっく、困ってますな?』
「お前は!?」
『ダーリン、見て見て、ローリィとルルルルーアが手伝ってくれてついに出来たの!』
「できたって? 何が?」
画面越しに話しかけてきているのは黒い影。
別に周辺が暗いわけではないので、彼女はどう考えてもティリティさんだろう。
真っ黒少女は凄く楽しそうにじゃじゃーんっとソレを披露する。
甲冑を身に着けた骸骨だ。
うん、これヘンリエッタさんの御遺体だ。
つまりヘンリエッタさんが入ってるだけだ。
「ヘンリエッタさんがどった?」
『違うっ! これはヘンリエッタではないのだよ。これこそが我らの知恵と科学と魔法の結晶! すーぱーヘンリエッタさんだ!!』
す、すーぱーヘンリエッタさんだとぉ!?
いや、普通のヘンリエッタさんとどこが違うの?
ま、まぁいいや。
「じゃあ中央任せて大丈夫?」
『すーぱーヘンリエッタさんが居ればプレイヤーなんぞちょちょいのちょいよ!』
なんか随分と入れ込んでるようだからとりあえずお任せしようか。
「あー、ディーネさん、稲荷さん。大丈夫だと思うけど、最悪彼女たちのフォローよろしく」
『任せたまえ!』
『大丈夫かなぁー。稲荷さんもなんだか虫持ってるし不安だよ?』
おい、稲荷さん、まさかここで虫相撲しようとか考えてないだろうな。
そんなすぐ負けるような戦いは挑まないでくださいよ。
「あ、あの、旦那様……」
「あ、コトリさんお帰りー。大変だったでしょ」
「い、いえ、でも……申し訳ございません」
戻って来たコトリさんがいきなり土下座。
あー、こりゃだいぶ責任感じちゃってるな。
「レベル999になっておきながらあまりの体たらく。申し開きようもなく……」
「ほら、顔を上げてコトリさん。せっかくのイベント楽しまないと。どう、明日は隣で一緒に見る?」
「よ、よいのですか?」
しばらく、コトリさんの心のケアでもしておこうか。
真面目過ぎるよコトリさん。こういうのは負けても悔しがったりしなくていいの。負けちまったぜ皆、めんごっ。くらいの軽いノリでいんだよ。
今日はこれで俺もログアウトするけど、明日は一緒に見よう。見てたらプレイヤーへの対処法とかなんかわかって来るかもだし。




