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544.第三回イベント、十四日目・飛んで火に入る

 アベイル星人たちとテイムキャラが戦っている。

 さすがにこうなるとアイネさんとの空中戦はマイネとグレートマン以外掛かり切れなくなってしまう。

 回復アイテムをグレートマンに使い、仕切り直しをしたマイネは時間を見て呻く。


 まだそれなりの時間はあるがアイネさんを撃破するにはちと心もとない。

 攻撃手段も限られ、回避されることも考えると、正直勝率は低いと言わざるをえない。

 加え、アイネさんの突撃だ。光を超える一撃は誰も反応できない。

 発動直前に回避行動を取っていてぎりぎり躱せるかどうか、進行方向に直進するだけ、というのがまだ回避できるというだけで、もしこの先見えないうえに追尾してくる突撃へと変化されれば、逃げきれないプレイヤーは確実に死ぬ。


「嫌になるわね。アイネさん強すぎ」


 攻撃パターンは少ないはずなのに、速度が速すぎるという一点において隔絶した強さを持っている。

 毒を受ければ痛みで動きが鈍るし、徐々にHPが減っていくプレッシャーを抱えなければならない。

 つまり、毒を全て回避したうえで知覚できない突撃を避け、すばやく空中を動き回る蜂のような生命体を撃破しなければならない。


「殺虫剤とか効かないかしら?」


「ワタシは虫じゃない、宇宙生命体。虫殺しじゃ死なない」


「言ってみただけよ!」


 マンホールを投擲して返答するが、軽々躱される。

 やはりグレートマンとマイネだけではアイネさんの回避許容範囲内なのだろう。

 せめてもう一人、攻撃できる存在が居ればあるいは……


「グァ」


 おお、そうだった。と今更ながらマイネは気付く。

 グレートマンに乗っていた先ほどまではグレートマンの能力を自分が狭めていたのだが、今は別のキャラに乗せてもらい、グレートマンの能力を最大限発揮して貰っている。

 つまり、グレートマン、マイネに加え、アイネさん攻略には、もう一人の仲間が居てくれているのだ。


 背に乗せて貰っているグリフォンが羽ばたく。

 風の魔法だろう、透明な刃がアイネさんへと飛んでいく。

 アイネさんはこれに気付いたようで、何もない場所でバレルロール。

 

 毒液を飛ばしてくるが、グリフォンの羽ばたきで勢い無くし、炎の森へと落下していく。

 防御面では多少マシになったがどうにも勝つ方法が見当たらない。


「んー、何か一気に決着つけられる高火力攻撃でもあれば……」


 不意に、降りてくる可能性。

 さすがにそれはないんじゃないかという理性とせめぎ合う。

 しかし、今回のイベント中で決着をつけるなら狙って狙えないことはなく、アイネさんを一撃で戦闘不能にできる方法でもある。

 そして、この攻撃はおそらく、今、この時しか使えない。


「あるじゃない、最高の火力が」


 武器は見つけた。ならばあとは、アイネさんへと当てるだけだ。

 

「グレートマンさんちょっといい? グリフォン君も手伝って」

  

 マイネは思いついた作戦を二人に話す。

 驚くグレートマンさんと慌てるグリフォン君。知能はいいのか言葉の意味をちゃんと理解したようだ。


「それじゃ、よろしく!」


 マイネの言葉と共にグレートマンが移動を開始。

 アイネさんを迂回するようにしてグリフォンと対面する場所へと移動すると、アイネさん向けて光線を発射。

 すぐに反応したアイネさんがこれを避け、背後から迫って来ていたマンホールをぎりぎり回避。真上を通り抜けていくマンホールを見上げる直前、背後から再び迫る風の刃を降下してやり過ごす。


「前後で挟み撃ち? その程度じゃワタシ止められ……マイネ、どこ?」


 グリフォンの攻撃をよけきり、姿を見た瞬間、アイネさんは焦りを覚える。

 グリフォンの背に乗っていたはずのマイネが姿を消していた。


「はっ!?」


 どさり、自身に何か重量物が覆いかぶさる。

 

「ふっふーん、捕まえたぜアイネさん!」


「馬鹿だマイネ。産卵で死ぬよ?」


「なるほど。でもそれはどうかしら。勝負する? 卵が孵って死に戻るのと、火炙りで虫焼きになるのと! マンホールスキル発動『巨大化』!」


 マイネが持っていたマンホールがその大きさを増していく。

 当然、重量もそれ相応に増える。


「覚えたはいいけど使いどころがなかった死にスキル。おそらく範囲魔法とかを防ぐ盾にする系スキルなんだろうけどさぁ、今はちょうど使えるスキルよね!」


「マイネ!?」


「さぁ、逃げ場はないわアイネさん。飛んで火に入る夏の虫ってね!」


 アイネさんは必死に羽を羽ばたかせる。

 しかし、自身ばかりかマイネに加え、巨大化し重量を増し続けているマンホールまでが背に乗っている今の状態は完全に過重量。

 徐々に高度が下がり始め、燃え猛る森へと下がっていく。

 熱風吹きすさぶ森の中へ。徐々に消えていく二人。

 全身の燃えやすいモノから火が付いていく。


「こ、これ以上は不味い、マイネ、貴女も死ぬよ!?」


「あたしゃぁ死んでもほら、死に戻れるからさ。悪いけど、あんたはここで退場だ、アイネさん。先に地獄で待っててね」


 燃える木へと突っ込み、二人揃って燃え上がる。

 燃焼ダメージでHPが一気に減っていく。

 先にマイネのHPが砕け散るものの、すでに死にかけだったアイネさんは羽を燃やされ飛ぶこともできなくなり、後を追う様に焼失したのだった。

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