541.第三回イベント、十四日目・物量大戦5
「さぁどうしたどうした! 貴様らの力はこの程度か!」
スレイさんステージではグラサンスーツの機械兵たちにより、プレイヤーが悉く殲滅させられていた。
あまりにも一方的過ぎるのだが、プレイヤーたちは気持ちが折れることなく何度だって殺されに走る。
「せめて一撃ぃっ!!」
「過剰火力なんだよクソが!」
「スレイさん踏んでくださいっ」
「確殺攻撃なら一体くらいは!」
一部おかしいセリフが聞こえたスレイさんだったが、プレイヤーたちに注意は向けない。
なぜなら彼らは悉くグラサンスーツに駆逐されるからだ。
スレイさんは動くことなく、ひたすらにプレイヤーを狩りまくっていた。
このステージの問題点としては未知なるモノや案内人のような司令塔がいないこと。
そして敵の防御力が異常に高いことだろうか。
高火力と攻撃速度はいわずもがな。高機動に硬質ボディ。機械的な反応で動く軍隊を相手にしては、さすがのプレイヤーたちもなすすべなく……
「確殺、一射!」
「一体撃破なの!」
「なんで私が避けタンクさせられるあるかーっ!?」
レイレイをグラサンスーツたちの前面に押し出し集中砲火を避けさせ、出来た隙をついてりんりんとなのが一体ずつ確実に破壊していく。
全体から見れば雀の涙ではあるものの、少しずつ、少しずつプレイヤーの反撃が始まっていた。
ゆえに、余裕を見せているスレイさんだったが、その内心はかなり薄氷の上を綱渡りしている状態だった。
グラサンスーツは数が多いとはいえここにいる個体が全て。破壊され尽くした時点で補充はない。
つまり、確実に消耗すればするほど加速度的にプレイヤー有利になっていくのである。
ならばこそ、最終的にスレイさん本人が全力で戦うことになるだろう。
ドクターということもあり、まず戦いに出ることはないスレイさん。
一応怪人として変身できるとはいえ、戦闘力はほぼないともいえる状態だった。
グラサンスーツたちが壊滅した時点でスレイさんも倒れるのはほぼ確実なのである。
「そらそらどーしたプレイヤー。我が科学の叡智に敗北かぁ? いいぞいいぞ、盛大に死にたまえ。君たちはここで足止め、この先に向かうことは不可能なのだよ」
「ふざけんな、不可能なわけがあるか!」
「いちいち耳を傾けんな。スレイさんの思うつぼだぞ!」
「増援の気配がない、こいつらは壊せばそれで終わりだ。確殺持ちを中心に一体一体確実に処理するぞ!」
「今日がダメでも減れば減るほど有利になるしな」
よくわかっているじゃないか。
内心舌打ちしつつ、スレイさんは無数の思考を開始する。
どう攻めるのが一番時間を取れるか、灰色の脳細胞が動き出す。
「よし、ここで一体、確さあばばばばばばばばばっ!?」
「おい、何遊んでい、ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」
「どうした? なにがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
突然、戦いのさなか、棒立ちになって小刻みに震えだすプレイヤーが出始める。
何が起こったのかわからない中、グラサンスーツに攻撃されて死んでいく。
「ちょ、なにあるなにある!?」
「ともかくひたすら狩るのぉぉぉぉぉぉぉ、お゛?」
突然、なのが動きを止めて痙攣。そのまま口から破壊光線を直撃されて死に戻る。
「なの!? 一体何が……ん? 足に何かからんでえええええぇぇぇぇぇぇ!?」
「りんりん!? っとぁ!? なにこれ、透き通った長い……触手?」
ぎりぎりで足に絡みつこうとしていた触手から難を逃れたレイレイ。
その合間にりんりんが死に戻る。
しかし、ここでようやくタネが分かった。
「皆、グラサンスーツの合間から透明な触手が来てるある! 捕まったら多分痺れるね!」
プレイヤーたちに注意喚起。
意識したプレイヤーたちが触手に捕まったプレイヤーが痺れるのを確認する。
レイレイの言葉が真実だと分かったプレイヤーたちが声高に叫び情報が共有されていく。
触手の先を辿ったプレイヤーから触手がスレイさんから伸びていることが知らされ、怪人能力だと把握、すぐさま対策が練り上げられていく。
無数の被害を出しながら、プレイヤーたちは少しずつ、少しずつスレイさん攻略に向けて進みだす。
しかし、無数のグラサンスーツの攻撃を掻い潜りながら隙間から襲い掛かる電撃触手まで注意を払うこととなったプレイヤーたちは、対策法が確立されるまで、かなりの苦戦を強いられることとなったのだった。
「さて、これで多少は時間が稼げるみたいだけど……これは明日の最後までは持たないかも」
単純計算を行ったスレイさんが一人言ちる。
思い返すは自身の覚えたスキルたち。
改造やプログラミングに関してはかなり強化されている。
治療術も覚えた。
しかし、攻撃に関してはほとんど覚えていない。
つまり、個人戦闘力はレムさんよりも弱いのが、スレイさんなのだ。
怪人化できるとはいえ、おそらく自分に攻撃が届くようになった時が詰むときと思っていいだろう。




