539.第三回イベント、十四日目・物量大戦3
「く、っそぉぉぉっ」
未知なるモノは人形の群れに飲まれそうになりながら、かろうじて押し返していた。
初手で格ゲー少女が死に戻ったのがかなり痛い失態だ。
油断していたとはいえ、メリーさんの接近に気付けなかったせいで彼女が死に戻り、その動揺の隙を突かれて人形の群れによる波状攻撃。
プレイヤーたちはなんとか相対するものの、物量になすすべなく粉砕されて行った。
戻って来た死に戻り組もステータスの低下が響き次々に潰されていく。
何とか持ちこたえていた未知なるモノもまた、圧倒的物量差に押しつぶされるように死に戻った。
「あ、お帰りなさい」
スタート地点に戻ってくると、先に戻ってきていた格ゲー少女が出迎えてくる。
どうやら死に戻った後はここで未知なるモノが戻ってくるのを待っていたらしい。
別に待たずとも救援に向かってくれていれば多少の持ち直しは出来たかもしれないのだが、言葉には出さず未知なるモノは不満を飲み込む。
彼女が返って来ていたとしても趨勢はすでに決まっていた。
おそらく再び死に戻ることになっていたことだろう。
残念ながら今回は人形を出来るだけ削っていくしかないらしい。
「さすがに本日のイベント中に芽里さんまで辿り着くのは無理そうだな」
「人形の数多いですしね。私も即死しましたし」
「人形たちに紛れてメリーさんが襲ってくるとか、また酷いステージだな、まったく」
と、言いつつ二人は燃え盛る森を見る。
「なぁ格ゲー少女君。これ、なんぞ?」
「私が戻って来た時にはすでに燃えてました。全焼するまで多分燃え続けますねぇ」
呆れた顔で告げる格ゲー少女。
他の死に戻りプレイヤーたちもあんぐり口を開けて呆然としている。
そして、歓声。
少し前方の方で一部プレイヤーが湧いていた。
話を聞くに、ようやくギーァを撃破出来たらしい。
そんな彼らにも聞いてみたけれど、森が炎に包まれている理由は全く不明なようだ。
それと、これから空中戦が始まるらしい。
さすがに手伝えるわけではないのだが、アイネさんを倒すために空を飛べるメンバーが結集するのだとか。
「やぁ未知なるモノさん」
「勇者ブレイドか。ギーァ倒したんだって? おめでとう」
「ああ、なんとか撃破出来たよ。誰かわからないが森に火をつけてくれたおかげでギーァが逃げれなくなったんだ」
「ああ、それで倒せたのか。俺はもう一度芽里さんに突撃するつもりだけど、あんたはどーすんだ?」
「やるべきことはやれたからね、手伝おう」
勇者ブレイドも芽里さん攻略を手伝ってくれるらしい。
道中芽里さんステージについて伝えていく。
格ゲー少女も付いてきており、能力こそ半減しているものの、やる気は十分。
未知なるモノも落ち着いて状況を把握してからの参戦となるのでどれほど敵を倒せるか、今からワクワクしていた。
「おお、凄いな」
すでに死に戻ったプレイヤーたちが次々とゾンビアタックを行っているようで、人形たちとの激闘が始まっていた。
人形たちには遠距離こそないものの、接近戦はメカニカルベアやグラサンマッチョよりも秀でているようで、近接戦闘職が軒並み苦戦しているようだ。
ただ、遠距離攻撃部隊は近づかれるまでかなりのダメージを与えられるようで、人形たちの攻略方法が見えてきた気はする。
ただ、さすがに遠距離一辺倒で倒せるようなタイプでもないだろう。
おそらく最初は遠距離部隊で数を減らせる。おそらく勝負は半分以上人形を削ってからになる。
「伝令! 芽里さんステージは遠距離部隊が有利。タンク役揃えて遠距離で潰してみてくれ、おそらく半数くらいまでは減らせるはずだ」
戦闘中のプレイヤーたちに伝わるように大声で叫びながら掲示板などに書き込んでいく。
これで遠距離特化型がこっちに集まりやすくなるはずだ。
他のチームがどうかは知らないが、芽里さんステージは多少早めに撃破出来ると思われる。
しばし待つ。
どうやら情報が共有され始めたらしく、死に戻りから芽里さんステージにやってくるメンバーが遠距離特化型の占める割合が増えてきた。
早速遠距離攻撃で人形たちを撃破していくプレイヤーたち。
タンクやアタッカーはすぐさま遠距離部隊が自由に固定砲台出来るように必死に押し留める。
「すごい勢いで人形たちを消し飛ばしていくな」
「未知なるモノさんの想定通りですね。さすがです」
「全体の戦いを見ただけでここまで的確な配置ができるのか。勉強になるな」
褒められたからか何ともむず痒い気持ちになりながら未知なるモノは次の変遷に意識を集中させる。
そろそろ、変化があるはずだ。
このままやられっぱなしにはならないだろう。
それがヒロキクオリティ。芽里さんにはまだまだ何かしらの攻撃方法があるはずだ。




