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538.第三回イベント、十四日目・ギーァ対勇者ブレイド3

 ソレは未だ、討伐されずに生き残っていた。

 残りHP自体はもう雀の涙。

 しかしながら再生を行いすばしっこく動くことで攻撃がなかなか当たらない。


 超再生のせいでHPは変わらずとも肉体はほぼ常に五体満足。

 四肢を斬り飛ばして動けなくなったところを集中攻撃、なんてこともできないのだ。

 勇者ブレイド、そしてアイドル服を着たゴブリンがギーァを追いまわしていた。


「そっち行ったわよゴブリア!」


「ふんぬっ」


「くぅっ、今のでまた見失った!?」


 しかしながら脳筋のゴブリアの動きを御しきれず、プレイヤーたちは彼女の攻撃のたびにギーァを見失い、懐に入られて致死の反撃で死に戻る。

 もう少し、ギーァの動きが遅ければ、捕捉して撃破も可能だっただろう。

 しかしプレイヤーたちの意識の隙間を搔い潜るギーァは捕捉された時にはすでに数人のプレイヤーを屠ったあとで、そこに出来た穴からさらに被害を拡大させては森に逃げ込んでしまうのだ。


 が、今回はそんなリセット行動が行えなくなった。

 森が、燃えだしたのだ。

 瞬く間に燃え広がる森に、ギーァが焦った様子を見せる。


「好機! 合わせろゴブリン!」


「ゴブリアよ!!」


 逃げ出すギーァの四肢を勇者ブレイドが切り裂く。

 四肢が飛び散るものの、ダメージにはならない。

 すぐさま再生が始まり、地面に着地する頃には新しい足で動き回っている。

 そこへゴブリアの拳が打ち下ろされる。


「ぎ!?」


 背中から押しつぶすような一撃が地面を割り砕く。

 倒した、とは誰も思わない。すぐさま周囲に視線を走らせる。


「そこだ!」


 走る影を見つけて勇者ブレイドが踵を返す。

 残像と気配消失で逃げ延びたのだ。

 押し潰したはずのギーァの体が霞のように消え去る。


「ギーァ! ここで仕留める!!」


「ギーッ」


 秘剣が走る。

 また大量のプレイヤーが死に戻った。

 必死に逃げるギーァと近づいてきたギーァをなんとか押し留めようとするプレイヤーたちの攻防がしばし続く。

 プレイヤーの攻撃をぎりぎりで躱したギーァ。森に飛び込もうとして、一瞬止まる。

 すでにパチパチと音を立てている炎の森に、さすがに入り込む勇気はなかったようだ。


「終わりだギーァ!」


 振り上げた剣と共に、勇者ブレイドが肉薄する。

 ギーァも覚悟を決めたらしく、反転して勇者ブレイド向けて両腕の鎌を走らせる。

 交錯する二人。

 他のプレイヤーたちが思わず固唾を飲んで見守る。


 カラン、と勇者ブレイドの持つ剣が地に落ちた。

 首元を切り裂かれた勇者ブレイドが崩れ落ち、光へと変わっていく。

 そして、ギーァは……その場で四肢が分離し、無数に分割されて地面に落ちた。

 残り少なかったHPがついに底を付く。


「か、勝った?」


「勇者が仕留めた! 仕留めたぞーっ!!」


「うおおおおおおッ!!」


「ギーァようやく倒せた、マジかよ!?」


「きっつ、俺もう無理っす」


 緊張が解かれ、その場に座り込む者多数。

 ゴブリアとそのテイム主も思わず息を吐く。

 勇者ブレイドが凶悪無比なプレイヤー狩りを続けていたギーァを自分を犠牲に倒した。

 あまりにも追い回し過ぎ、ギーァに狩られ続けたプレイヤーたちだっただけに、喜びもひとしおで、しばしその場から皆動くことができなかった。


「なんとか、倒せたかぁ」


 勇者ブレイドが死に戻ったスタート地点からやってくる。

 と言ってもスタート地点自体が目と鼻の先であり、歩いて数十歩で辿り着ける距離だったので、実はギーァが消える姿を自分自身で確認できていたりする。


「勇者、やったな!」


「執念だな。よくやった!」


「ブレイド、ギーァ討伐おめでと」


 プレイヤーたちが次々に声を掛けてくる。

 苦笑しながら賛辞を受け取り、ギーァが消えた場所へとやってくる。

 すでにすべて消え去り何もない場所に立ち、勇者ブレイドは空を見上げた。


 なんだかしばらく見てなかったような青い空。燃ゆる森。空の上で戦う二つの影。

 どうやらあそこでも誰かが戦っているらしい。


「あー、飛行持ち誰かいるか?」


「ん? 私のテイムキャラならいるよ? 鷹だけど」


「あ、俺カラステイムしてる」


「私もなんかよくわからないのテイムしてるよー」


「あそこの手助け、頼めるか?」


「「「あそこ?」」」


 勇者ブレイドが指さす先、そこはアイネさんと戦いを繰り広げる、グレートマンとマイネペアが微かに見えた。


「まだまだイベントは終わってない。次の戦いが待ってる。ヒロキさんの元に辿り着くために。皆、力を貸してほしい!」


「勇者ブレイドマジ勇者!」


「勇者プレイかよ。ちょっとやる気になるなー」


「中二病野郎め、行くのか? 俺も同行しよう」


「何キョウインかな? こんなの放置して俺らも少し休んだら最前線行こうぜ。ギーァにかなり時間かけ過ぎたし」


 ギーァを倒すのに一体何日足止めを食らったことか。

 被害が出ても放置して最前線を目指しても良かった。

 どうせそのうち倒されると、ギーァを見逃しても良かった。

 それでも、放置したくなかった、倒したいと思ったのが彼らだ。

 ゆえに何日かかっていたとしても、皆目的を成し遂げることができたと満足げな顔で、次の戦場へと向かいだすのだった。

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