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533.第三回イベント、十三日目・ギリギリの勝敗

「確殺、当たれぇ!!」


 りんりんの何度目かの一撃。

 ティンダロス交雑種が間に入っていた時だったために、元プレイヤーが死に戻り、出来た隙にテインさんの反撃が襲い掛かる。

 空間を越えて襲い掛かってくる青い触手と思しき物体がりんりんへと迫る。


「甘いある!」


 が、りんりんに当たる直前に割り込んできたレイレイが触手の先端を蹴りつける。

 触手はダメージを負うと空間の中へと引っ込んでいった。


「レイレイ、ありがと」


「確殺持ち守りながらじゃないとすぐ死ぬね。なの、こっちは任せるある!」


「りょーかいなの」


 不意に聞こえたなのの声、それはテインさんのすぐ近くからだった。

 テインさんは慌てて体をひねる。

 そこに目を瞑ったままのなのが背後に現れ鎌を振るう。


「外したの!?」


『目を閉じたまま攻撃してくるか。確殺持ちは面倒な……空間捻転』


「ほにゃっ!?」


 テインさんの攻撃でなのの周囲が空間ごと捩じられる。


「なんなのぉ!?」


 慌てて攻撃を繰り出すが、なのの周辺空間から抜け出すことができなくなったらしい。

 攻撃もねじれた空間内部から先へは届くことはなく、なのはねじれた空間の中に閉じ込められたのだった。


「まだ新スキル持ってたのかよ!?」


「今動画確認組と連絡取ったんだけどねぇ、テインさんのスキルはこれで全部出たっぽいわよ未知なるモノさん。問題は外神眼と位相転移、それから人間特攻ね」


「ヒバリだっけか、空間捻転とかいうのは問題じゃねぇのか?」


「ええ。アレは対象を空間に閉じ込めて攻撃不能にするだけだから、なのさんは動けなくなるけど他のメンバーに使われることがなくなったから私たちは問題ないわ」


「尊い犠牲だなオイ」


「それよりも丸いモノ以外からの攻撃を回避しやすくなる外神眼と位相ずらしで物理攻撃を無効化する位相転移、そして人間であるだけで特攻が入ってしまう人間特攻がプレイヤーにとって大問題よ」


「なるほど……ん? 俺は人間特攻入るのか?」


「さぁ?」


 プレイヤーたちにとっては同レベル帯だとしても人間特攻持ちのテインさんは天敵みたいなものなのだろう。

 どうにかダメージを与えられるものの、相手からの襲撃が有利に働きすぎてプレイヤーの被害だけが拡大してしまっている。

 このままだとテインさんを削り切ることは不可能で、確殺攻撃に賭けたいプレイヤーだったが、それもそれで難しい。


「今は真なる姿で正気度消失値がものすごく高いから、正体見ただけでイカレてしまうのね」


「なんか手はねぇもんか……」


「そうねぇ……ちょっと時間かかるけど、やってみようかしら。無防備になるから守ってくれるかしら?」


「できれば可愛い女の子を守りたいんだがね。まぁいい、やれるってなら守り切るぜヒバリさん」


「あら、頼もしい。じゃあお願い、しちゃおっかしら」


 ぱちん、っと一つウインク送り、ヒバリは天界で覚えたスキルを発動する。

 その場にしばし硬直させられるが、チャージタイムさえ終われば後は……


「30秒、身じろぎできないわ」


「了解。おちゃらけ大根、戻って来たなら手伝え!」


「ええ、理不尽!?」


 死に戻りから帰ってきたプレイヤーたちを巻き込み、未知なるモノはヒバリの警護を強化する。

 しかし、テインさんも何かしら感じるものがあったのだろう、ヒバリに向ける攻撃が徐々に激化していく。


「って、ちょっと未知なるモノさん、時間、時間ヤバいある! あと30秒くらいしかないあるよ!」


「は? ちょ、待って、嘘だろ!?」


 戦いに夢中だったせいもあるが、レイレイの声に未知なるモノは驚いた。

 時間的にはギリギリヒバリの攻撃が発動することは確定だ。

 しかし、本当にギリギリ過ぎて相手に当たるかどうか、当たってテインさんが死ぬかどうか、あまりにも時間がなさ過ぎてわからない。


「ああもう、とにかくヒバリの一撃に賭ける、皆ヒバリを守れ!」


「不良少年守れとか、あ、やべ、見ちゃっおぽろべあ――――っ」


「ああ、世紀末に出てきそうな下っ端系少年が走り出した!?」


「奴はダメだ、気にせず守……のっぴょろーん」


「ひぃ!? 何で今脱いだ!? っていうかこのゲームって全裸に成れたっけ!? なんで下腹部モザイク状態で走れるの!?」


 ヒバリを守るために集まった有志たちだったが、数が多かったがために一部プレイヤーがテインさんを直視してしまい精神を崩壊させてしまう。


「充填完了、行くわよテインさん! 神罰覿面!!」


 背中に光の翼を広げたヒバリ、手のひらをテインさんに向け、スキルを発動する。

 収束されし光の奔流がテインさんへと放出される。

 テインさんはすぐさま回避に移るものの、その光は対象に向かうホーミング式だった。


『不味い、これは……』


 驚愕するテインさんの声が光に飲まれる。

 どうなったのか、未知なるモノは確認しようとテインさんを見た。

 見て、しまった。

 光に包まれた見てはならない何かを見て、そして――――今回のイベント時間が、終了した。

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