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532.第三回イベント、十三日目・三様の戦場10

 させるか、という叫びを聞いた。ヒバリは目の前に迫って来たテインさんに食い殺されるモノと思っていただけに、割り入って来た未知なるモノの背を見て思わずトゥンクとトキめいた。

 男性アバターを扱っているが、心は乙女なのだ。

 ヒバリとしても一度はされたいシチュエーションを目の前で見せられれば、少しは惚れそうになるというもの。


「やだ、惚れそう」


「マジでやめてくれ、オルァ!」


「チッ」


 未知なるモノを警戒し、テインさんがバックステップ。

 そのまま角を通り……「確定スキル封印、角を通るッ!」


「なんだと!?」


「やったぜ! 皆遅れてすまない! 用事は済んだし封印確定だ!」


「鋭角通られる可能性が潰れた! テインさん補足完了!」


「ここが年貢の納め時よ! 片腹痛いわテインさぁん!!」


「片腹に風穴開ければいいのかぁッ!?」


 襲い掛かって来たプレイヤーに舌を突き刺し、テインさんが大きく飛び上がる。

 円弧を描いて遠くに降りると、その場周辺に青い膿をまき散らす。


「仕方ない。あまりやりたくはなかったが、ここから先は正気を潰す【真なる姿】」


 テインさんを構成する要素が鋭角へと分解されていく。

 未知なるモノとヒバリは、即座にソレから視線を逸らした。

 本能的に、見てはならないと確信したのだ。


『さぁ、人間共、第二ラウンドを始めよう。猟犬も追加してやる』


 周囲全体に響くようなテインさんの濁った声に、プレイヤーたちの背筋が凍る。

 ヤバい生物が本気になった。それだけは理解できた。


「あ、あばばばばばばばばばっ」


「おぴ? ぴひゃははははっはははははっははは!!」


 テインさんの姿をまともに見てしまったプレイヤーのアバターが突如奇声を発して走り出す。

 目の前にプレイヤーがいようとティンダロスの猟犬が居ようと関係なく、何をしたいのかすらわからぬまま、ただひたすらに走り続ける。

 

「まともに見るとああなるのか?」


「おかしくなったプレイヤー、アバターからはじき出されたらしいぞ」


「アレどうすんだ? 邪魔だぞ」


 ところかまわず走り回るアバターたちが徐々に邪魔になっていく。

 とはいえ、攻撃してくるわけではなくただ走り回ったり体掻き毟ったり絶叫したりでうざったいだけなので放置しておくプレイヤー多数。


 ティンダロスの猟犬たちも気が触れたプレイヤーは対象外らしく放置を始め、交雑種だけが襲い掛かるようになったため、交雑種からの攻撃が減ったプレイヤーたちの動きが多少良くなる。

 それでも正気を消失するプレイヤーが増えていくと、死に戻りも出来ないため戦闘参加人数が徐々に減っていく。


「クソ、このままだとじり貧だ」


「確殺攻撃持ちが来てもすぐにテインさんに殺されちまう。テインさん確殺持ちに容赦なさすぎだろ」


「気持ちはわかるわぁ。自分だって死にたくないもの」


 そりゃそうだ。と未知なるモノは納得しながら考える。

 テインさんは今、見つめただけで精神をぽんっと破壊してくる状態だ。どんな形状になったかの確認すら不可能で、相手を見ずに攻撃を当てていかないといけない。


「心眼!」


 りんりんが戻ってきたとたんスキルを唱える。


「案内人君、今の状況でツァーコンダクター出来る?」


「さすがに相手見えないのは無理ですっ」


「マジかぁー。やっぱりこれで何とかするしかないか」


 りんりんは弓を装備し、眼隠しの帯を結わえ、矢を番えると、キリキリと引き絞る。


「心眼スキルはあんまし上げてないのよねー。でも、確殺一射……いけっ!」


 目をつむることで使うことができる心眼スキル。

 簡単に言えば目が見えない状況で周囲の状況を感覚で理解するスキル、らしい。

 上位スキルにエコーロケーションなどがあるので扱えるスキル持ちが居ても伸ばしていないことが多い。

 特に目をつむって戦う必要性などがないのでほとんど使われてないのだ。

 しかしながら、今、目を見てしまうと精神汚染が発動する相手と戦うには重宝するスキルであった。


「いいな、俺もアレ取ろうかな」


「あなたならエコーロケーション捕食した方がいいんじゃない?」


「それもそうか」


 ヒバリを警護している未知なるモノは直感だけを頼りに今、テインさんからの攻撃を払い落としているのが現状だ。出来れば相手を見て攻撃してやりたいが、自分でも見た瞬間精神が汚染される可能性が高いため、ヒバリの警護には直感に従って反応するしか手がなかった。


 ゆえに、今はただりんりんがテインさんを確殺してくれることだけを切に願う。

 しかし、当たらない。

 心眼のスキルが育ってないこともあるが、命中率が低いのが一番のネックなのだ。

 りんりんもそれは理解しているようで、少し焦りながらも二度、三度と確殺攻撃を行っていくのだった。

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