530.第三回イベント、十三日目・三様の戦場9
「ジェイク!」
「心得た!」
テケテケさん、彩良さんとの激闘を繰り広げるユウとマイネは、何度殺しても復活してくる二大怪異相手に徐々に追い詰められていた。
天界で手に入れた無数のスキルを使うものの、何度倒しても気にせず襲い掛かってくる彩良さんの攻撃を躱し切るのが難しくなってきているのだ。
マイネにしても、四対一で苦戦している。
相手が何度殺しても死なないという事実が彼女たちの戦意を挫き始めていたのだ。
それでも、ユウは諦める気はない。
最後の一人になろうとも、必ず勝てると信じてひたすらに彩良さんを殺し続ける。
「あ、居た! 居たぞ八尺!」
「あらあらあら。ようやく会えたわねテケテケさん、彩良ちゃん。ぽぽぽぽっとしにきたわ」
「げっ!? なんであんたが!?」
「都市伝説同士、仲良くしましょー!」
まさかの助っ人にテケテケさんが白いワンピースの巨女へと躍りかかる。
手が空いたマイネ、グレートマン、キカンダー、ジェイクの四人がテケテケさんを彼女に任せ、ユウのフォローにやって来た。
「なんか、あの少年がこっち任せろっていうからテケテケさんお任せしてきたわ」
「こっちはこっちで結構やべぇぞ口裂け女」
「これだけ人数いるんだから負ける気はしないわ、殺し切るわよ!」
マンホールを構え、少女が吼える。
「残念ねぇ。どれほど頑張ろうと結果は変わらないわ、私は死なず、あなた達は切り裂かれて血達磨になるのよ!」
悲鳴が轟く。
何の悲鳴だ、と思ったユウだったが、そういえばこの迷宮にはもう一人怪異メンバーが居たことに気付く。
ハナコさんは別の場所で別のプレイヤーたちを撃破していたようだ。
「ここにゃハナコさんは来ないのか? 三体で一気に潰した方が早いだろ?」
「あら、別に急いでいないもの」
「その割にゃ二人ここにかかり切りでいいのか? それとも、他に理由でもあんのか?」
ユウの問いに、無言の彩良さんが鎌を振る。
手甲ではじくものの、手甲に傷がついてしまい、ユウが舌打ちする。
「まともに弾くもんじゃないわよ!」
続く鎌の一撃はマイネがマンホールを使って弾き、ユウの前に躍り出る。
「タンク役やってあげるわ。倒し切ること、出来る?」
「ああ、そこは問題ねぇ。あとその前にちょいと掲示板に書き込んでくれねぇか」
「あら、なにを?」
「狙うならハナコさんだ。おそらく彼女だけは一度死んだら復活してこない」
「オッケー、連絡しとく」
手早く報告を済ませ、マイネは防衛を開始する。
彩良さんの攻撃からユウたちを守り、その合間からユウ、グレートマン、キカンダー、ジェイクが彩良さんを攻撃していく。
何度殺しただろうか?
確実に死んだと思えるほど跡形もなく滅しても、すぐに復活してくる。
正直、ここは一度死に戻った方が楽かもしれないとは、何度も思った。
しかし、ユウとしてもさっさと負ける、ということはあまりしたくはない。
戦うならば全力で。負けるために戦うなどあってはならない。
舐められたら、終わりなのだから。
「っ!?」
それは、イベント終了も間際のことだった。
急にバックステップで距離を取る彩良さん。
一瞬どうした? と思ったユウだったが、確信的に叫んでいた。
「ぼさっとすんなジェイク! 奴を逃がすな!」
叫ぶと同時に本能的に飛び出していた。
踵を返して逃げようとする彩良さん向けて一気に加速する。
彩良さんのくるぶしにジェイクの弾丸が一発。
バランスを崩された彩良さんが傾ぐも、すぐに体勢を整える。
しかし、その一瞬でユウは追いついていた。
彩良さんの肩を掴むと、ぐいとひっぱり、焦る彩良さんを殴りつける。
どしゃりと床に倒れた彩良さんの腕を蹴り飛ばし鎌を手放させる。
「まっ……」
「悪りぃな彩良さんよ。ホラーの時間はここで終わりだ」
拳を手で包み、ぽきりと鳴らす。彩良さんに馬乗りになり、拳を振り上げた。
先ほど、バックステップする手前、彩良さんが何かに気付いた様子だった。
ユウは理解するより早く動き出し、今、ようやく理解した。
ホラータイムが終ったのだ。つまり、怯える者たちよりも、倒せると考える者たちが迷宮内に上回った。ゆえに、彩良さんとテケテケさんの復活タイムがなくなったのである。
「じゃあな!」
握りこぶしに力とスキルを蓄えて、少女は全力で振り下ろす。
彩良さんは逃げることすらできなかった。
スキルが乗りまくった拳が顔面を貫く。
地面を陥没させ、ユウはしばし拳を突き出したまま状況を見守る。
しかし、彩良さんが復活してくる気配はもう、なかった。
少し遅れ、彩良さんの体が光の粒子に変わっていき、迷宮もまた、消えていく。
「ふぅ、ほんと心臓に悪い戦いだな畜生」
勝利を確信しつつも、またどこかから出てくるんじゃないかと気配を探ってしまうユウは、そんな行動をしている自分に思わず舌打ちするのだった。




