526.第三回イベント、十三日目・三様の戦場6
「えっと、つまり、怖がるなってこと?」
ユウと合流したマイネ一行は、ユウから可能性の情報を伝えられていた。
「いろいろ考えた結果。それが可能性高そうって思ってな。この迷宮内にいるメンバーの脳波で戦闘かホラーかが決まってるんじゃねーかなって。前にそういうゲームやったことあってよ。ずっと皆が怖がってるせいで戦闘にならずにずっとホラーゲームやらされたことがあるんだわ」
「なるほど、ホラー状態だから口裂けさんもテケテケさんも倒せないってことか。可能性は確かにあるけど、どうしろと?」
「残ったメンバーがあーしらだけになれば全員が恐怖を覚えることなく戦って倒せると思えば勝てるんじゃねーかな、と」
「な、なるほど、確かにそれなら……いや、さすがにこのメンツだけ残されるとかないでしょ。後から後から他のメンバーも入ってくるだろうし……ってか掲示板で呼びかけたらいけるかも」
早速マイネが掲示板に書き込みを行う。
「ケケ……」
「チッ。もう来ちまったか」
「まだ半数以上残ってるはずよね。今回は諦める?」
「いいや。せっかくだから最後まで抵抗してみるかね」
今書いた掲示板のおかげでホラーと戦闘が反転するかもだろ。と告げてみると、マイネもマンホールを握り、好戦的な笑みを浮かべる。
「素晴らしい案ね。徹底抗戦、いいじゃない!」
闇より現れしはテケテケさん。
両手で体を支えながら、鎌を咥えて近づいてくる。
「あら、あらあらあら、お久しぶりねぇユウちゃん」
「ちゃん付けすんじゃねーよ。つかホラーのくせに無駄に近所のおねーさん風味だしてくんじゃねーよ」
「ケケ、いいじゃない。どうせ私は死なないのだし、あなた達の死に戻りは確定してるんだから、知り合いには少しだけでも会話したいじゃない」
「あっれぇ、おかしいなぁ。私の場合は問答無用だったんだけどー?」
「だってマイネ戦闘狂じゃん。彩良が出会った瞬間マンホール頭に打ち下ろしされたって憤慨してたわよ」
「仕方ないじゃない、敵になったんだから出会った瞬間殺すべきでしょ」
「ね?」
「物騒だなオイ。俺らでも敵に出会ったらまずはメンチからだぞ?」
マイネさんは戦闘狂。ユウとテケテケさんの間で共通認識となった瞬間だった。
「ええい、どっちの味方だあんたは! さぁ、テケテケさん撃破を目指すわよ!!」
「っと、そうだった。やろうかテケテケさんよ」
「ケケケ。さぁ、ホラーの時間の始まりよ!」
テケテケさんが走り出す。
マイネがマンホールを手に応戦。
マンホールと鎌が激突、鈍い金属音を響かせる。
「えげつない威力ね。マンホールがゆがんでるっ」
「ってかマンホール歪むだけなのかよ!? 相手のレベル250以上だぞ!?」
「どるぁ!!」
「ケケケッ」
気合と共にテケテケさんを弾き飛ばし、追撃の振り下ろし。
テケテケさんは鎌を振るってこれを弾き、反動で自身の体を遠くに飛ばす。
さらに両手で地面に着地し、素早い手さばきで走り出す。
「ケケケケケッ!」
「グレートマンさん、キカンダーさんお願い!」
「任せろ!」
「ウァッ」
前衛をマイネが務め、彼女の隙をキカンダーとグレートマンが埋める。
さらに後衛にいるジェイクがテケテケさんを撃ち抜いていく。
銃弾に射抜かれながらも、風穴開けたままテケテケさんは攻撃を切らさない。
全身が穿たれ血だらけになりながらも、むしろより凶悪な面で襲い掛かってくる狂気のテケテケに、さすがにマイネも押され出す。
「おい、怯えてどうする! 向こうの思うつぼだぞ!」
「そ、そうは言われても!」
「チッ、今回はダメそうだな」
情報が出回るまではしばし待った方がいいか。
ユウはため息を吐いてふと、気付く。
背後の暗闇に、何かいる。
「いつの間にか悲鳴、止まってんな……」
「ねぇ……ワタシ、キレイ?」
暗がりから、もう一つの怪異が現れる。
マスクをした女は頬まで裂けた口をニィとゆがめる。
「うっそだろ……いや、むしろ好機か?」
大きな鎌を振り上げ、走り出す口裂け女。
ケタケタと笑いながら急速接近。
危険な大鎌がユウ向けて振り抜かれる。
「おっと!」
が、これをかかとの裏で受け止めるユウ。
靴に食い込んだ鎌は、しかしそれ以上進むことはなかった。
「天界の装備でも食い込むのかよ!?」
その装備品は、彼らが天界に赴いた際、天使の一人から買ったものである。
鍛冶を営むというその天使は天界にある鉱石を使って作った非常に強力な装備の一つ。
空を蹴りつけ天高く跳ねることのできる飛空靴である。
ユウの奥の手となった天界シリーズ装備と天界で手に入ったスキルを駆使し、目の前に現れた彩良さんの撃破に乗り出すのだった。




