525.第三回イベント、十三日目・三様の戦場5
ヨシキが始めたゲームは魔物・人生ゲームである。
ただの人生ゲームであれば双六やルーレットでマス目を移動し、そのマス目で起こるイベントでお金の増減などがあり、最終的に資金が多いモノが一位となるのだが、この魔物・人生ゲームでは自分の種族が存在し、その種族専用の人生を送ることになる。
ゆえに種族次第では一気に一位になる金額を稼げるし、スライムなどの最弱魔物に生まれてしまうとほとんど稼ぐことすらできず一生を終えることになる。
これが魔物・人生ゲームの面倒なところである。
ヨシキの他には二人のプレイヤー、そしてサユキさんが参加しており、それぞれ違う種族になったようだ。
種族もルーレットと双六で決めるので自分好みの種族になるとは限らない。そこも人生という訳だ。
さて、どのような種族になったかと言えば、ヨシキはバード、種類は不明の鳥になったらしい。
プレイヤーの一人はゴブリン。
もう一人はスケルトンだ。始まる前からすでに人生を一度終えてしまったようだ。
そしてサユキさんは……
「あれま人間だ。当たり引いたかも」
「マジかよ!? ツイてねぇな」
運ゲーになるのは仕方ないとはいえ、まさかこのゲームの勝ち組の一つにサユキさんがなるとは運がない。
しかも対抗馬になりそうなプレイヤーがいない。
ゴブリンやスケルトンで金を稼ぐのはかなり難しいのだ。
ともかく、始まった以上はこの種族でやるしかない。
ルーレットを回す。初めはヨシキの番だ。
出た数字の分マス目を進み、イベント。
すくすく育ちレベルが2上がった。
「なんでレベルが上がるんだ?」
「そういう仕様なんだよ。レベルが足りないと強敵を倒せない。ちなみに負けると死ぬ時もある」
「ちょっと、そういうの聞いてないんですけどぉ!?」
「俺らこのゲーム初めてなんですが!?」
「あー、俺も、人生ゲームはやったことあるが、これは初めてだ」
「「「なんでやった!?」」」
「いや、一番勝てそうなのが運ゲーってこれじゃねーかな、と。ほら、ゴブリンルーレット回せ」
「マジかよ、ったく巻き添え食らって死に戻りとかひどすぎる。あ、1だ」
冒険者の襲撃。ゴブリンの巣が駆逐されました。
親が必死に逃がしたおかげであなたは難を逃れました。
レベルが1上がった。
クラスが復讐者になった。
「なんでレベル上がった!?」
「だいたいのイベントで上がるみたいだぞ。上がり幅に差はあるみたいだが」
スケルトンがルーレットを回す。
起こったイベントは……
スケルトンは空を見上げた。
一日中見上げた。
クラスが星読みになった。
「クソゲーかっ!?」
思わずコントローラーを投げるスケルトンプレイヤー。
「あっはっは。君ら三人揃ってるのになんか負ける気がしないわー」
すくすく育ちレベルが2上がった。
「ホント引きがいいなあんた」
「ほんとにねー。自分でもびっくりよ」
クソムカつく女だ。ヨシキは舌打ちしながら二度目のルーレットを回す。
意外と引きはいいようで、次々にレベルアップしていくヨシキとサユキ。
他の二人は悲惨なもので、ゴブリンは住処を追われ、武器を奪われ、逃走の日々。
スケルトンはほとんど何もしないスローライフ。
レベルも上がることもなく、かといって何かしらの恐ろしいイベントも起きていない。
彼らが人生逆転を決めるのは難しいだろう。
つまり、ヨシキ対サユキの戦いになる。
四人プレイにしたはずなのにおかしい。
ヨシキは苦言をいいたくなるが、ともかくゲームを進めていかないことには意味がないとルーレットを回していく。
何度回したことだろう。
どれほど浮き沈みを味わっただろう。
終わってみれば、惨敗だった。
伝説級の霊鳥にこそなったものの、資金など集まる訳もなく。
勇者となったサユキの前では霞むほどの資金力。
家族やレベルを金額換算するも、魔王を打倒し王位を簒奪したサユキの資金力の前では勝利は難しかった。
ゴブリンはオーガになったものの、勇者に出会い途中で死亡。
スケルトンはスケルトンロードになり、スローライフを始めてマンドラゴラ栽培で大成した。
なので彼が2位、ヨシキは3位である。
「負けてんじゃねーか!?」
「だが、勝利への布石は見せれただろ、クソ、運が悪すぎた」
敗北確定でプレイヤーたちが消えていく。
すでに死に戻りしてきていた格ゲー少女が悲しそうな顔でヨシキを見ていた。
「あの、すいません、私、やっぱり格闘ゲームで勝ちたいです。だからパーティーゲームは……」
「わかってんよ。パーティーゲームは他の奴らに任せな、あんたは格闘で挑めばいい。ただ、一つ言いたいことがある。もしも次も負けるようなら……スタート地点で待つ」
それだけを告げ、ヨシキもまた死に戻るのだった。




