表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

527/1131

524.第三回イベント、十三日目・三様の戦場4

 そこはまさに戦場だった。

 テインさんの守る広場では、無数の魔物、野良となったニャルラトホテプ数十体、ティンダロスの猟犬一個大隊、プレイヤーの皆さん、テインさんが入り乱れて戦いを行っていた。


 コトリさんと違い、テインさんは一所に留まることはなく、位相転移や角を通るのスキルで相手からの攻撃を回避して移動するため、確殺攻撃もさらに当たらなくなっていた。

 彼女との対決においてプレイヤーたちが一番に苦戦するのは、彼女の持つ死体安置所の臭いというそこいらじゅうに漂ってしまう激臭だ。


 耐性のないものほどその場で気分が悪くなり吐き散らすなどで隙が生まれ、魔物たちに蹂躙されていく。

 魔物の補充がなくなったため、しばらくすれば魔物たちも消えていくだろうが、今しばらくは面倒な戦いとなるだろう。


「クソ、あの臭いどうにかならねぇのかよ!?」


「つか、この青い膿が気持ち悪いんだけど!? なんかまとわりついてるのどーしたらいいんだ!?」


「焼けば落ちるぞ。あと死に戻れ」


「ざけんな! 俺はテインさん倒すために要るんだよ! 死んでたまるか!」


「があぁ! 魔物がうぜぇ! レベルが高すぎるせいで一番邪魔じゃねぇか」


「確殺攻撃持ちは魔物撃破から始めてくれ! ニャルラトホテプやティンダロスの猟犬は他のメンバーで囲め! テインさんはうっぷ。うおえぇぇぇ」


「ぎゃあぁ!? おちゃらけ大根さん俺の傍で吐かないで!?」


「あ。死んだ」


 隙を見せてしまったおちゃらけ大根が魔物の一撃を食らって死に戻った。


「仕方ねぇ、こっちで指示出すぞ!」


「待ってました未知なるモノさん! 任せた!」


「俺の確殺が光って唸る! 食らいやがれぇ!!」


 テインさん向けて一人のプレイヤーが襲い掛かる。

 刹那の内に角を通って移動したテインさん。

 プレイヤーが空を殴りつけ、背後からテインさんの舌がプレイヤーの胴を穿つ。


「おふん!? ぎゃあぁ!? なんか穴空いた!? 俺のお腹に穴空いてるんですが!?」


「おま、なんともねぇのか!? 死ぬだろそんな大穴空いてたら!?」


 胴を貫通する大穴を空けられたプレイヤーだったが、その体に倦怠感はない。

 ただ、攻撃力が目に見えて衰え、体力も半分になっているのだけはわかった。


「クソ、コレ攻撃力低下攻撃だ!」


「テインさんの舌に気を付け……っと、訂正だ、ティンダロス関連の舌攻撃に気をつけろ!」


「ぎゃあぁ!? 未知なるモノさんみたいに捕食された!?」


「おま、テインさんに肩食われてんじゃねーか!?」


「美女に噛みつかれちった。なんだこの高揚感?」


「やべぇ性癖に目覚めやがった被食者プレイとかやめろ、そんな扉を開くんじゃねぇ!」


「で、でも痛くないんだ。痛くないけど俺の肩が美女に……うへ、うへへ」


「キモッ」


 テインさんはティンダロスの猟犬に指示してくだんのプレイヤーを撃破する。

 死に戻ったのでついでに精神も元に戻るといいのだが、周囲のプレイヤーが冥福を祈りつつもテインさんへの攻撃を行っていく。


 確殺攻撃を放つと高確率で角を通るスキルを使われ逃げられる。

 戦闘自体はそこまで不安になるようなことはなく、全力で戦えば決して勝てない敵ではないということだけは確かだが、テインさんの回避力が異様に高いせいで攻撃が当たらない。


 たまに辻ヒールが全体に飛んでくるので、プレイヤーたちも死に戻りは少ないが、それでも一進一退。

 なかなかに歯ごたえのあるボス戦であった。

 ただ、プレイヤーたちはまだ気づいていなかった。

 テインさん戦、その一番の厄介な特性が、牙を剥こうとしていることに、彼らは未だ気付いていなかったのだ。


「そろそろ、時間だ」


「あん? 何の時間……うっ!?」


「どうしたラ……ぐぅっ!?」


 突如、プレイヤーの一部が苦しみだす。

 なんだ? と困惑するプレイヤーたちの目の前で、ぎょぼぁっと苦しみだしたプレイヤーたちが異形へと変質し始める。


「なんだ!?」


「これは……ティンダロス交雑種!?」


 青い膿が体に付いたまま放置しすぎたことで、プレイヤーの一部がティンダロス交雑種へと変化を遂げる。

 暴走しているのか、敵味方関係なく襲い掛かってくる交雑種たちに、プレイヤーもさすがに焦る。

 とはいえ自分たちにまとわりつく青い膿を取り切ることは不可能に近く、次々に交雑種が増え始める。


「あ、青い膿を先に倒せ! 火炎系スキルで体ごと焼くんだ!!」


「くそったれ!!」


「ぎゃあぁ熱い、あっつい!!」


「お前痛覚遮断してねぇのかよ!? 馬鹿か!?」


「臨場感があるし現実味でてくるからつけてあるんだよ! クソ、焼死とか無理だから切っとこ」


「意外と苦戦するな。もっと押し切れるかと思ったんだが……」


 さすがに一筋縄ではいかない、と未知なるモノは一人言ちる。

 まだ時間はあるモノの、本日イベント中に削り切れるかは不安であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 目隠し眼帯と首枷と手枷と足枷と腕枷と太腿枷を着けた狐耳美幼女による()確殺攻撃によるプレイヤーの足止め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ