表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

526/1123

523.第三回イベント、十三日目・三様の戦場3

 暗い通路を歩く。

 少し先に見えるのは暗闇。

 どこに繋がっているかすらわからない迷宮の通路。


 下手に動けば敵に出会う。

 出会ってしまえば死ぬだけだ。


 しかし、動かなくても敵は現れる。

 出会ってしまえば死ぬだけだ。


 動くも死亡、留まるも死亡。

 運よく敵と遭遇しない以外、生き残る道はない。

 まさに幸運に祈りを捧げるボスステージ……な、訳がない。


 ユウは壁や床を調べながらゆっくりと前進していた。

 壁はレンガ調、床は石づくり。石と石の間をセメントで塗り固めて凸凹しないようにと研磨した歩きやすい通路ではあるが、音が響くのは少々いただけない。


 ここの敵であるホラー存在に歩くだけでそこに誰かいると伝えているようなものなのだ。

 なので、ユウはひとまず音を立てないように慎重に移動していた。

 これで出会うのかどうか、まずはお試しである。


 ここに入ってから絶えず聞こえている悲鳴。

 これはプレイヤーたちが出会ってしまった悲鳴だろう。

 よくよく聞けば、トイレは嫌だー、とか、テケテケさんだー、とか、口裂けでたぁー、など、三種類の悲鳴が聞こえているのが分かる。

 つまり、ここにはハナコさん、テケテケさん、彩良さんの三名が敵として出現していると言っていいだろう。

 

「彩良さんにゃ会ってないが……他の二人には面識がある。正直ホラーとして出会うと確かに怖ぇよな。でも……見知ってる奴がホラーで襲ってくるってのは、幽霊屋敷のホラーパターンにしか思えねぇんだよな。つまり、恐怖とは思えねぇ」


 しかし、とユウは思う。

 未だに誰も倒せたという報告はなかった。

 ここに来るまでに板やらスレやらいろいろ見てみたが、撃破報告はなかった。

 なのに、倒したけど死ななかったという報告はたまに見た。


「さて、あーしの考えが正しけりゃ。あの板にあった情報が役立つはずだけども……」


 とある板の情報を思い出す。

 それは眉唾物のようなものだった。

 普段倒せていた敵が急に復活してきて倒せなくなったという掲示板にあった発言内容。

 その結論は、倒すべき敵からB級ホラーの敵になったから死ななかったんじゃないか、とそれこそ冗談として告げられていた発言だったが、それがどうにも正解なような気がして、試してみたいとは思っていたのだ。


 ちょうどいい機会が巡って来たと言っていい。

 ただ、何が理由でホラーになるのか、そこが問題だ。

 なので、ひとまずホラー要素になりうる可能性をいくつか考えた。


 一つは場所。

 ホラー系の場所にいる場合に限り死亡無効になるのではないか。というものだ。

 ただ、これだと運営側へのクレームが鳴りやむことはないだろう。

 この迷宮自体は彩良さんのスキルだということは分析班がすでに伝えてくれている。

 

 彩良さん、テケテケさん、ハナコさんの新スキルは見えないらしいが、なんとなく、そこに何かこの状況に呼応できるスキルが隠されているように思える。

 つまり、何かしらの行動を起こせばホラーから戦いに戻すことができるはずなのだ。

 その方法はまだわからないのだが。


 二つ目は時間。

 一定時間のみに限り無敵状態になるスキルを持っている場合。

 しかしこれもこれでイベント中ずっと無敵、というのも卑怯な話だ。

 ならばこれも違うと思っていいだろう。


 三つ目、ガッツスキルで耐えているだけ。

 とはいえ、そんな何度も連続でガッツが入るスキルには制約もあるはず。

 スレや掲示板を見るに、何度も倒しているのが確認できる。

 何なら十数回彩良さん殺したのに、という強者もいた。


 以上三つの可能性を否定した場合、他の可能性としては……

 考えながら歩く。

 不意に、前方に気配が生まれた。

 まさか遭遇したか? と不安に思ったユウだったが、会話が聞こえてきたので安心する。

 どうやらプレイヤーと合流出来たらしい。


「何よ、すぐに襲われて殺されるっていうから警戒してたのに全然出会わないじゃない、ねーグレートマンさん」


「うぁ」


「警戒するに越したことはないぞマイネ」


「今のところ、気配は前方に存在する一人だけだな」


「ちょ、いるんかい!?」


「だが、人間だ。プレイヤーだろうな」


「なんでぇマイネかよ」


 隠れようかと思ったけど問題はなさそうなので合流する。

 相手次第では隠れてやり過ごそうかと思っていただけに、少し肩透かしを食らった気分でユウは姿を現した。


「あら、あなた確かヒロキの知り合いよね」


「おぅ、あんたのことはヒロキン動画で何度かみたぜ。とりあえず状況報告しねぇ? 一応攻略の糸口はあるんだが確証が出来なくてよ」


「え、それほんと!? ソレ皆で共有できればクリアの可能性高くなるんじゃない?」


「つっても、あーしらの認識を変えるだけだぞ?」


 どゆこと? と小首を傾げるマイネ。

 ユウはどう説明したもんだ、と面倒くさそうに頭を掻くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] つまり、〝ホラーであると言えるし、そうでもないとも言える。どう捉えるかだ。まだまだ心眼が足りぬ。〟という事かな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ