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517.第三回イベント、十二日目・コトリさんレイド5

「スキル発動、コトリの呪い、神眼、神聖貪食、コトリバコ、一族郎党皆殺し♪、闇への誘い、深淵の捕食、呪殺反射、亡者の誘い、異界の王、汚染地帯、聖句箱、堕落の吐息」


 戦闘開始と共に、コトリさんはスキルを発動していく。

 止めに入りたいプレイヤーたちだが、魔物たちに阻まれコトリさんのスキル発動を止められない。


「クリフォトの実、輝くトラペゾヘドロン」


 そして、新たなスキルが発動する。


「お、おい、今なんかヤベェスキル発動しなかったか?」


「クリフォトの実と輝くトラペゾヘドロン……ここにきて新スキル切って来たぞ!?」


 驚くプレイヤーたちの目の前で、魔法陣が生まれる。

 六芒星からゆらり現れるのは、無貌の生命。

 複数の這い寄る混沌が呼び出された。

 彼らは一瞬コトリさんに敵対しそうな雰囲気を出したものの、雰囲気を察して即座にプレイヤーたちへと戦いに向かう。


「ちょ、これまさか、ニャルラトホテプ!? しかも沢山!?」


「ぎゃー!? SAN値がけずれりゅぅ!?」


「魔物にエルダーリッチにニャルラトホテプ複数召喚!?」


「クリフォトの実の効果は!?」


「検証班から連絡来ました! クリフォトの実は周囲の負の感情を吸収し、自身の能力を強化するらしいです。トラペゾヘドロンは予想通りニャルラトホテプの使役です!」


「ちょ、周囲の負の感情吸収!? 能力強化スキル!? あのレベルでまだ強くなるの!?」


「心象具現・呪怨胎災」


 プレイヤーたちを絶望が飲み込む。

 そんな中、コトリさんはさらにスキルを唱える。

 広場の全てを飲み込むように、暗黒の泥が世界を包む。


「ちょ、まだ新スキル!?」


「嘘だろ!? まさか全力投球!? あと一回死んでも問題ないんじゃねーのかよ!?」


「使ってないスキルは残り二つだぞ!?」


「ってか、皆気付いたか! コトリさん、今回リンフォン使ってねぇ!」


「え?」


 一人のプレイヤーがはたと気付いた。

 コトリさんは今回、リンフォンを完成させようとしていない。

 つまり両手が開いてる状態で視線や注意がリンフォンに向いていないのだ。

 地獄の解放がなくなった代わりに、コトリさんはプレイヤーたちに全集中できるようになったのである。


「おい、コトリさんどこ行った?」


「え? 何言ってんだ、コトリさんはさっきからずっと動いてね……いねぇ?」


「馬鹿! お前の側面から来てるぞ!!」


「なっ!?」


 驚くプレイヤーがそちらを振り向いた時、彼の視界には目いっぱいに開かれた掌があった。

 少女の綺麗な掌が、一瞬ののち、彼の視界を奪いつくす。


「簒奪の御手」


「おご、オ゛オ゛オ゛オ゛ボァ?」


「ぎゃあぁ!? 生命力吸われて一瞬でミイラに!?」


「こ、コトリさんが動き出したぞ!? 全員気を付け、あ……」


 今までの大決戦から一転、ラスボスが動き出したことでプレイヤーたちが混乱を来す。

 さらにコトリさんに意識を割けば、魔物たちの襲撃に死に戻り、魔物たちに意識を割けばコトリさんに触れられ命を落とす。

 戦場はさらに混沌と化し、漆黒の森に視界も阻まれ、闇の飲まれてプレイヤーたちが急激に散っていく。


「お、おちゃらけ大根さん、前衛持ちません! すぐに追加の助っ人を!!」


「全員で前衛に出てんだよ! 追加人員なんざ死に戻り組だけじゃい!!」


「ああっ!? 確殺が呪殺された!? 皆確殺持ちを守れ! コトリさんに狙われてるぞ!!」


「馬鹿野郎! タンクがそっち行ったら誰がニャルラトホテプ相手取るんだよ!?」


「エルダーリッチの魔法も厄介だぞ、タンク役こっちにも!!」


「魔王軍の進軍にプレイヤー軍持ちませんっ!」


「馬鹿野郎、耐えろ! お前らが持たせなくて誰が持たせるんだ! 死力を尽くせーっ、俺は死に戻る」


「おちゃらけ大根ーっ!!?」


 無数のプレイヤーが死に戻る。

 何度も何度も、何分も何時間も繰り返し、しかしコトリさんに致命傷を与えられないまま半分の時間が減っていく。

 本日の時間、あと半分。


「まだ死んでないメンバーは結構いる。ステータス半減が無けりゃある程度戦いにな……」


「さぁ、絶望を見なさいプレイヤー。絶技・失楽園」


 その日、世界は震撼した。

 曇天が具現地帯を覆い尽くし、黒き光の柱がその場にいた全てのモノに降り注ぐ。

 逃げ場など、なかった。

 悉くが呪われし光の群れに焼き尽くされ、呪詛に塗れて死に絶える。


 あとに残るは呪詛の塊、そしてそれが呼び出した呪いの眷属だけである。

 あまりにも圧倒的な大群砲撃に、プレイヤーたちはなすすべなく消し飛んだ。

 一斉に死に戻ったことでスタート地点にものすごい数のプレイヤーが一瞬で復活し、一時期サーバーがパンクしたのだが、それもまたイベント伝説の一つとして語り継がれるだけとなった。

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