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513.第三回イベント、十二日目・ギーァ対勇者ブレイド1

「あー、もう、あと数秒で勝ってたのにぃっ」


 本日のイベント開始時間、スタート地点にやって来た格ゲー少女は未だに憤慨していた。

 前日。後一撃入れば勝てる。そんな状況で外部からの強制遮断がサユキさんの命を救ったのである。

 聞けば、コトリさん戦でコトリさんを放置しすぎたせいでリンフォンが完成してしまったらしい。

 まさか強制敗北になるとは想定していなかったプレイヤーたちはいっせいに退去させられ、イベントが中断されてしまったのである。


 その後イベント会場に飛ぼうとするが、内部が地獄に汚染されているためイベント開始できません、とかいうダイアログが表示されるだけで飛べなくなっていた。

 運営の方もこれはさすがにヤバい、と思ったのだろう。

 リンフォンの完成により十一日目のイベントが全滅扱いになってしまったこと、十二日目、つまり現実時間で夜間の部からはまたイベントが開始できることを公式板で告げていた。


 リンフォンを完成させてしまうとどうなるかを知ったプレイヤーたちは、運営へのクレームを入れるよりも次はどうやってコトリさんにリンフォン使わせないようにして倒すかを考察し始めたのだ。

 確かにクレーム自体はそれなりに入ったらしいが、イベント効果の一部なら仕方ない、と言った気風が漂っているためか、プレイヤーたちの表情は明るい。


 不満はあってもその向かう道はコトリさん、あるいはその主であるヒロキへの怒りだけだ。

 運営はヒロキのおかげで守られたと言えなくもない。実際問題起こしたのはコトリさんで、コトリさんがリンフォン起動させたのはプレイヤーたちが作り上げるのを阻止しなかったせい。つまりこれはイベントギミックが発動した結果なのだから、不満はあるが自分たちの失策でもあるから仕方ない。そんな考えが大多数のプレイヤーに浸透したおかげである。


「格ゲー少女はどうする?」


「もっかい挑みます。次こそ勝つ!」


「んじゃ俺らは引き続きコトリさん撃破組だな」


「コトリさんもさすがに焦ってるでしょ。確かあと二回死んだら終わりですよね」


「まだ二回あるのかよ。ってそうか七度の死だからあと二回殺したらもう復活しないのか」


「ってことはあと一回倒せば引くかもしれないな」


「引かせるのはさすがになぁ、次の確殺攻撃後はすぐ二度目の確殺攻撃できるようにスタンバっとくのがいいかも」


「なの、がんばるの」


「確殺攻撃持ってないある。りんりん、なの、がんばるあるよー」


「んで、マンホール少女はどーすんだ?」


「当然アイネさん撃破を目指すわよ」


 マイネさんだけやってるゲームが違うのではないか、と思えるほどに協力プレー皆無である。


「未知なるモノさん、こっちは本気で潰しに行くからさ、途中で強制退出なんてさせないでよ」


「おう、さすがに今回からはリンフォン対策にコトリさんを邪魔していくよ」


 プレイヤーたちもリンフォンへの警戒はかなり高まったはずだ。

 コトリさんがリンフォンを完成させるより早く彼女を確殺するために動くことだろう。


「よし、方針は決まったな」


「では行ってまいりま……ぁ」


 一人、サユキさんの元へと向かおうとした格ゲー少女。皆に手を振りながら走りだし、前を向いた瞬間、そこに黒い影が躍る。


「させんっ!」


 剣閃が首に振れる寸前だった。

 隣から割り込んできたブルーメイルの男が黒い影を蹴り上げる。


「ぎーぁ!?」


「あ、ぅ、ふぁっ」


 おくれ、驚きと共にしりもちをつく格ゲー少女。


「無事かい? この辺はギーァの狩場になっている、警戒しながら移動してくれ」


「ゆ、勇者ブレイドさん!? あ、ありがとうございます」


 手を差し伸べられ、思わず掴むと引き上げられる。

 間近に迫った美少年アバターに慌ててお礼を告げる格ゲー少女。

 少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら足早に立ち去る。


「おっと、未知なるモノさん、嫉妬させてしまいましたか?」


「まさか? それよりギーァは任せるけど、いいか?」


「ええ、絶対に倒してみせます!」


 やうやうしく礼をして、勇者ブレイドは森へと消えたギーァを探しに向かっていった。


「さて、私も行こうかね」


 マイネもテイムキャラ三名と共に森の中へと入っていく。

 同じく森からのショートカットを狙う者たちと合流し、アイネさん撃破に向けて走り出すのだった。


「ヒャッハー、ようやくログイン出来たぜェ!」


「俺らの獲物はどぉこぉだぁ?」


 不意に、イラっと来るような下っ端臭漂う言動が聞こえ、未知なるモノはスタート地点を見る。

 モヒカンに世紀末ファッションの男たちが四名、ログインしてきたところであった。


「ああいうのもいるんだな」


「プレイ内容はプレイヤー次第なの」


「ってかあいつら彩良さんとこ向かってったぞ?」


「ようやくログイン出来たって言ってたし、もしかして知らないんじゃないかな」


 とはいえ、ああいう手合いにわざわざ声を掛ける必要もないし、一度死ねば大体現状を理解するだろ、と結論付け、未知なるモノは他のメンバーとコトリさん討伐へと向かうのだった。

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