511.第三回イベント、十一日目・コトリさんレイドバトル4
「さて、どうしましょうか……」
コトリさんは魔物たちの背後で静観しながら、今後の予定を考えていた。
自分のスキルの中で、今使っているモノはコトリの呪い、スキル上限解除、神眼、呪殺、神聖貪食、呪滅結界、コトリバコ、物理無効、精神汚染SSS、料理上手C、一族郎党皆殺し♪、闇への誘い、リンフォン、簒奪の御手、深淵の捕食、呪殺反射、亡者の誘い、七つの御霊、異界の王、汚染地帯、七変化、聖句箱、堕落の吐息それから封印されているスキルが、絶望之大地。
まだ使っていないスキルは正二十面体、聖絶、心象具現・呪怨胎災、輝くトラペゾヘドロン、クリフォトの実、絶技・失楽園の六つ。そのうち聖絶スキルはほぼ使う意味のないスキルだ。
神聖属性の存在を縛り付ける必要性が全くない、というよりはそんなことに時間を費やすよりは敵を屠ってしまう方が早い。
なので実質六つのスキルがまだ使われてないスキルだ。
有用なのは隔絶結界を創り出す正二十面体。ただ、これは神聖属性のみ素通りしてしまう結界だ。同じ属性攻撃は素通りさせてしまうので、弱点に気付かれると不味い。
しかもコトリさんの弱点属性ともいうべきが神聖属性。呪いの塊である彼女にとって絶対的に耐えきれるものではないのである。
とはいえ、レベル差のおかげでどれほど弱点属性であろうともダメージはほぼ皆無。
他の攻撃と大差はない。
それでも、神聖属性を食らってしまうと次の攻撃へのラグが出来てしまう。そこを確殺攻撃で攻撃されてしまうと詰む可能性が高い。
この結界を使うのは、追い詰められてからにした方がいいだろう。
となると、次の死が確定したところで使うスキルは、クリフォトかトラペゾヘドロン。
自力を底上げするか味方を増やすか。この状況ならまずは味方を増やすべきか。
魔物たちのレベルも999になっているので、攻撃は一撃一撃がプレイヤーにとって致命傷。
ダメージも攻撃力と防御力の関係で基本1。
防御無視攻撃ならそれなりにダメージが与えられるし、固定ダメージによる攻撃ならほぼ確実に同じダメージを与えられる。
極めつけの確殺ダメージ、そして自分以外の魔物に有効な即死ダメージ。
つまりプレイヤーたちのレベルでも十分戦えてしまうのだ。
おかげで隔絶した実力を相手にしようとも、プレイヤーたちは気にせず突撃、逆にレベル上げに貢献しているような状況だ。
残念ながら召喚モンスターであるため経験値自体はしょっぱい。しかしレベル差のおかげでその経験値でも楽々100レベルくらいまでは上がってしまうのだ。
少し失敗したかもしれない、と思いながらもコトリさんはさらに召喚を続ける。
しかし、徐々に魔物の群れが減っている。
今日中に全滅ということはないだろうが、この殲滅速度だとコトリさんにまで確殺ダメージ持ちが攻撃しに来る余裕が出来てしまうだろう。
「貴女みたいに!」
不意に感じた気配にギリギリで反応する。
呪殺弾を背後に振り返りざま放つと、背後に迫っていた女が慌てて鎌で切り裂きバックステップ。
「しっぱいなの」
「二度と同じ技を食らってたまりますか!」
「でも、なのに意識して、大丈夫なの?」
「は?」
「確殺ッ」
しまっ!?
とっさに背後の気配に反応する。
「なんちゃってある」
しかしそこにいたのはレイレイ。
確殺攻撃持ちではなかった。
「スキル発動。大衝撃!」
拳を握り、軽い威力でコトリさんの胴へと触れる。
刹那。コトリさんに襲い掛かる凶悪な衝撃。
スタンが入り、動きが止まる。
「これで、チェックメイトなの!」
さらになのによる確殺攻撃。
逃げることすらできずコトリさんの残機がまた一つ、削られた。
「っしゃーっ! ナイスある!」
「いいコンビネーションだったの」
二人はその場でハイタッチ。
エルダーリッチがフォローに入って来たのですぐにその場から退散する。
「くっ、また……いいようにっ」
復活したコトリさん、五度目の死を迎えた彼女は残る二つの命になったことで怒りに震える。
出し惜しみしている場合じゃない。
もはや全てにおいて全力でやるしかない。
何よりも、自分は一人、相手は数万人だ。
むしろここまで保たせているだけでも凄い方だといえるのだ。
だから、飲まれるな。怒りに飲まれて雑に動くな。
「絶望の「確定スキル封印、絶望之大地ッ!」そう来るわよねッ」
もう今日の時間はそこまでない、けれどここで安心するような余裕はない。
だからこそ、全力を持って相対する。
「スキル発動、コトリの呪い、神眼、神聖貪食、コトリバコ、一族郎党皆殺し♪、闇への誘い、リンフォン、簒奪の御手、深淵の捕食、呪殺反射、亡者の誘い、異界の王、汚染地帯、聖句箱、堕落の吐息」
「コトリさんの強化入るぞ、皆気をつけろ!」
「はっ、どれだけ強くなろうが確殺攻撃与えりゃ勝てるっつーの!」
「心象……あら、まぁ」
そう、出し惜しみなど不要。全力を持ってプレイヤー全てを駆逐する。
コトリさんの全力が今、解放されようとしていた。
が、それよりも先に、手にしていたリンフォンが三つ目の姿を完成させていた。




