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510.第三回イベント、十一日目・コトリさんレイドバトル3

「っし、今日こそ引導渡してやんぜ!」


 とある広場に入る直前の道に、プレイヤーたちが勢ぞろいしていた。

 コトリさん撃破部隊第一陣である。

 二陣以降は一つ前の広場で待っており、参加メンバーがある程度減ると追加メンバーとして波状に参戦予定である。


 各陣営内に確殺攻撃持ちが紛れ込んでいる。

 そして陣営メンバーのほとんどが魔物たちやコトリさんの攻撃を防ぐための肉盾。

 本命は彼らの合間を縫ってコトリさんに確殺攻撃を当てる部隊となる。


「全員清聴。本来だぬさんが声掛けするのが通例になってるが、だぬさん今回ログインできないってことで、不承このおちゃらけ大根が旗振り役やらしてもらう」


「うぉー、誰か知らんががんばれー」


「そうだ、帰れーっ」


「頑張って帰れーっ」


「か・え・れっ。か・え・れっ」


「やめろよ!? 俺の繊細なグラスハートが粉みじんになるだろぉーっ!? とりあえず誰かが旗振りしろってことでなんか俺がやることにされたんだよっ、嫌ならお前やるか! 喜んで任せるぞ!!」


「どうぞどうぞ」


「誰か知らんが帰れーっ、あ、間違えたがんばれーっ」


「かぁえぇれっ、かぁえぇれっ」


「ああもう、全軍突撃ッ!!」


 何を言ってももうダメだ、と諦めたおちゃらけ大根。おちゃらけ要素はゼロで早々に突撃指示を発布した。

 プレイヤーたちが我先にと広場に雪崩れ込む。


「絶望の「確定スキル封印、絶望之大地ッ!」またお前かッ!」


 封印を行った瞬間、そのプレイヤーが呪殺されて死に戻る。

 しかし彼の貢献はこの一撃だけで充分なのだ。

 再び絶望之大地を封印されたコトリさんは他のスキルをフル稼働させてプレイヤーを妨害。

 異世界の魔物たちを呼び出し、傍にエルダーリッチを侍らせる。


「なんか、こうしてみると魔王と勇者たちの激戦だよね」


「普通にこれがラストバトルでいいんじゃないあるか?」


「お仕事行ってくるの」


 魔王コトリ率いる魔王軍とプレイヤー第一陣が激突する。

 次々に現れるタイラントゴリラやタイキックカンガルー、ボーンドルフィン、ディノレクス。

 多種多様な魔物たちの隙間から、エルダーリッチの魔法が襲い掛かる。

 まさに軍団戦。


 プレイヤーたちは死力を尽くし魔物を倒し、あるいは倒され死に戻る。

 数の上でも実力の上でも魔王軍は上回る。

 一匹の魔物を倒すだけで数百のプレイヤーが死に、そしてスタート地点から復活して参戦する。


 徐々に数を減らす魔王軍。

 コトリさんの異界の王スキルにより魔物が増えてはいるが、駆逐する速度の方が上回っている。

 さすがに数千人を超えるプレイヤーが一斉に入れ代わり立ち代わり戦っていれば、魔王軍の軍勢が削られていくのである。


「すっげ、勝ててる!」


「行くぜ野郎ども!」


「素材だ素材!」


「経験値、経験値を出せぇ!!」


「もっと寄こせバル〇トスッ!!」


 なぜだろう? 死に戻っているはずなのに彼らの眼に絶望はない。

 むしろ今まで以上にらんらんと輝き血走り、涎を流しながら獲物に斬りかかっているようにすら見える。


「ヒャッハーッ、汚物は消毒だァ―――ッ!!」


「敵のレベルが高いせいで経験値極旨ーっ」


「スキル経験値も溜まる溜まる、ヒャッホーゥ」


 おちゃらけ大根は愕然としていた。

 作戦では順次消えていく味方を補充する予定だった。

 今は補充予定のプレイヤーまでこぞって参戦し、死に戻ると即座に走ってここに戻って来ては死地に飛び込んでいく。


「集団戦サイコーッ!」


「ああ、もう、めちゃくちゃじゃねーか……俺も経験値ほすぃーっ!!」


 指揮官、職務放棄。

 おちゃらけ大根もまた参戦し、スライム一体を屠って死に戻る。

 そしてスタート地点に戻って来た仲間たちと我先にと競い合い、再び戦場へと向かっていく。


「ギーァ!」


「邪魔だボケェ!!」


 経験値やドロップアイテムに飢えたプレイヤーたちに襲撃をかけようとした黒い影だったが、彼らの気迫に押され、怯えたように別ルートへと逃げ去っていった。


「うおっしゃぁ! ラスキルいただきぃ!!」


 タイラントゴリラが倒れる。

 コトリさんもさすがに虎の子が打倒され始めると舌打ちせざるを得ない。

 このままでは早々に物量が逆転、コトリさんが劣勢に立たされるだろう。


 平均的レベル差は900以上。なのにこちらがどんどんと押されている。

 だが、焦りはない。これはこういうものなのだ。

 プレイヤーたちがそれだけ優秀で、コトリさん自身は倒されるべき存在でしかない。

 だから立ちはだかることはできるが、いつかは敗北が確定している存在。


 ヒロキにテイムされているから死んでも次がある。

 でも本来は、なかったはずのモノだ。

 プレイヤーたちがレベルが低いからと下に見てはならない、否。もはや見られるわけがない。

 次々に敗北する味方を見て考えが変わった。ヒロキとも話し合い、自分の敗北もありうるのだと理解した。


 どうせ負けることがほぼ確定しているイベントなのだ。プレイヤーたちを楽しませるイベントなのだ。

 ならば盛大に、抗おう。

 コトリさんは自分のスキルを確認する。

 すでに使い続けているスキル。まだ奥の手として残しているスキル。

 全てを確認し、全てを出し尽くすつもりで、覚悟を決める。

 さぁ、全力で楽しもうプレイヤー共。呪いのコトリバコのレイド戦を!

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