507.第三回イベント、十日目・ゾンビパニックの激戦・中編
案内人は皆と共にゾンビパニックゲームを開始する。
荒廃した市街地の空地へと降り立ったメンバーは即座に探索班と脱出班に分かれる。
案内人、だぬ、未知なるモノがシルビアさん探索班。
格ゲー少女、りんりん、レイレイ、なのが脱出班に分けられた。
マイネたちは独自に森にいるアイネさんをなんとか倒そうとしているらしく、今回は不参加。
勇者ブレイドやフェノメノンマスクは本日ログインすらしていなかった。
他のプレイヤーが固まって戦闘態勢に入るのを横目に、二チームは行動を開始する。
「んじゃ、何かあれば連絡を」
「脱出路の確保、頑張ります」
「今度こそゾンビ化せずに終わらせるある」
「レイレイがゾンビ化した姿、そういや写真撮っといたよ」
「何してるあるかりんりんっ!?」
「撮ったのはなのなの」
「お前が犯人かーい!」
向こうは女性ばかりが集まったためか凄く楽しそうである。
案内人はちょっとだけ残念そうにしながらも目的地検索を開始する。
案内用スキルを覚えていっているせいか、カーナビなどについてそうなスキルがいろいろ生えているのだ。
その一つがこれ、目的地検索である。
目的地を入力すればそこへ向かうためのルートが構築されるのだ。
地図に映ったルート通りに向かえば目的地に辿り着けるのである。
今回は検索場所にシルビアさん、と入力した。
上手く行くか不安だったが、しっかりとルートが表示された。
だぬと未知なるモノは露払いだ。
迫りくるゾンビたちを撃破して案内人の通り道を空けるのが仕事である。
「早速来たな」
「わらわらわらわら、こいつらほんとどっから湧いてくんだろうな?」
だぬはぱちんこを取り出し、一体一体丁寧に頭を破壊していく。
未知なるモノは両腕にカションカションと鉛玉を補充し、腕を振る動きで散弾を発射、無数のゾンビを一気に破壊していく。
「おいおい。なんだその人間兵器は!?」
「砲戦花っていう植物系のモンスター捕食したら使えるようになったんだ。弾が必要になるけど、こういう時に使い勝手がいいからな。重宝してるぜ」
「軽々しく人間辞めやがって。俺なんざ何度死んでも人間のままだぜ? デスゲーム委員会マジ許さん」
なぜか自分からトラウマを掘り起こしただぬが一人激昂する。
案内人は苦笑いしながら地図を確認する。
「結構遠いな。たどり着けるだろうか?」
「辿り着けるかじゃねぇ、辿り着くんだ」
「そのための俺らだろ。露払いに存分に使ってくれ」
しばし、三人だけの突撃が続く。
遠距離での攻撃で進むべき方向をだぬが切り開き、群がる敵を未知なるモノが処理していく。
おかげで案内人は自分のペースで移動することだけに集中できた。
「あの角、曲がった先に複数ゾンビです!」
「クソ面倒臭ぇな」
「だぬさんこっち任せる。ちょっと行ってくるわ」
「おぅ、任せな」
だぬが武器をぱちんこからマシンガンへと持ち変える。
「だぬさん、それいつの間に手に入れたんです!?」
「前回死に戻る手前でな。使う前にゾンビになっちまってアイテムボックスにしまいっぱなしにしてたんだ。まさか使ってなければ持ち越し可能とは知らなかったぜ」
「確か何人かその辺りの報告してましたよ。情報はしっかり手に入れとかないとです。でも、今回は助かりますね」
前方の曲がり角に口から怪光線を放つ未知なるモノを見ながら案内人が告げると、だぬもうなずく。
「ほんと、こういう連射武器があるかどうかでだいぶ難易度が変わるからな。というか、一か所に集まるより移動した方が敵の襲撃率少なくないか?」
「あ、やっぱりそう思います? 結構ゾンビの数が多いですけど、一か所で戦ってた時と比べるとだいぶ少ないですよね? そのうちゾンビが増えすぎて身動き取れなくなる一か所での戦闘に比べると、移動している現状ではそこまで多くないというか、普通に移動できてますよね。今までより少ない人数なのに」
「案外、それがこのゲームの攻略ポイントかもしれんな」
角の掃討を終えた未知なるモノが合流し、再び三人での移動を行う。
そんな三人と別行動していた四人の女性プレイヤーたちもまた、同時期にゾンビの群れを掻き分け、脱出路の確保に邁進していた。
「ひえぇ、ゾンビだらけあるーっ」
「まだまだ移動の余裕あるでしょレイレイ。ほら、銃拾ったからこれ使って」
「真空波斬なのーっ」
こちらはナビ役がいない代わりに、四人ともが攻撃に参加できるので、探索班よりも気持ち楽に移動できていた。
「それにしても、どこまで向かえばいいんでしょうか?」
「わからないからまっすぐ行くあるよ」
「一人二人脱落するかもだけどとにかくひたすら、一歩でも前に向かうこと。なのさんもそれでいい?」
「任せてなの。皆が死んでも屍乗り越えて一人だけ脱出するの」
一人だけ仲間がいのない言葉を告げるなのにツッコミいれて、四人は姦しくもせわしないゾンビ撃破脱出路確保ゲームを楽しむのだった。




