504.第三回イベント、九日目・新たなる脅威
いくつかの板にツチノコさん撃破の報告を掲示。
あとは他のプレイヤーがいろいろな場所で報告してくれるだろう。
すでに耳の早いプレイヤーが未知なるモノたちの居る凍った広場へとやって来ていた。
「うわっ、凍ってる!?」
「何やったらこんなことに!?」
「激闘だったのはわかる。っていうか格ゲー少女さん大丈夫? 凍ってるじゃん?」
「誰か凍結解除できるスキルか道具持ってないか?」
「あ、私、状態異常回復スキル持ってます」
プレイヤーの一人が回復を買って出てくれたおかげで格ゲー少女が復帰する。
「ツチノコさん撃破おめでとうございます」
「弱点突いて何とかなったが、ツチノコさんだけでもヤバいわ。というか土瓶神とか他のキャラと同時出現してたら勝てなかったかもしれん」
「え、そんなに?」
「禍福調整が鬼だぞ。パーティーの連携ミス誘発してくるから死に戻った瞬間パーティー不和で最悪解散するかも」
「うげ、ウチ血の気の多い奴結構いるからそれ食らったら瓦解確定だぞ」
「せっかく仲良くなれたパーティー潰すとか、ヒロキは何考えてんだよ、外道め! あ、外道少年だったわ」
「ともかく、他の奴らに合流される前に撃破出来たのは行幸だな」
「次のステージは見に行かないんです?」
「ああいや、さすがに激闘だったからな。俺らはちょっと休憩させてくれ。残り時間も少ないし、最後の方でちょっと顔出しするだけにするよ」
「了解、じゃあ俺らで偵察行ってくるわ」
見知らぬプレイヤーが偵察を買って出て通路へと向かいだす。
その刹那、悲鳴が上がった。
「なんだ?」
悲鳴に驚き立ち上がった未知なるモノ、その目の前には、先ほど偵察を買って出たプレイヤーの頭を刈り取り着地した、黒い生物。
「ギ――――ァ!」
「あ、あれって……ギーァ!?」
「大会に出てきてた謎生物!?」
「俺が運営に投げた卵から孵った奴!?」
「アレ生み出した犯人テメェかよ!?」
ギーァは着地と共にギーァと鳴いて、立体機動で動きながら周囲のプレイヤーたちを狩り始めた。
「クソ、止めるぞ!」
「飛んで火にいる夏の虫! ギーァ、ここがテメェの死に場所だァ!!」
生みの親とでもいえばいいのか、プレイヤーが槍を突き出しギーァを串刺しにする。
が、貫かれたギーァの姿が霞のように消え去った。
「残像ッ!? はっ!?」
驚いた彼はすぐに気づいた。
しかし、彼が振り向くより先に、彼の首が宙を舞う。
真後ろに回り込んでいたギーァの忍びの一撃が決まり、暗殺されてしまったのである。
「か、囲め!」
「下手に動かれるスペースを無くすんだ!」
プレイヤーたちがわらわらと押し寄せる。
さすがに移動する場所がなくなってしまったからか、中央に立ち止まるギーァ。
微振動を行いつつ、周囲に視線を走らせる。
「へ、へへ、逃げ場はねぇぜギーァちゃぁん」
「俺の胸で眠れ、ギーァ」
と、ギーァに一斉攻撃をしようとした、瞬間だった。
突如そのプレイヤーたちの一部が近くのプレイヤーに斬りかかる。
「は?」
「オラ、死ねギーァ」
「ぎゃあぁ!? なんで俺!?」
「こっちはギーァじゃないわよ!?」
「どうなって……まて、何人か混乱、いや錯乱してやがるぞ!?」
「錯乱って、なんで!?」
「ギーァが何かしたのか!?」
「待て、ギーァ、どこ行った?」
錯乱するプレイヤーをなんとか無力化している最中、ギーァの姿を皆が見失っていた。
そして、ギーァの秘剣が牙を剥く。
「なん……」
ギーァを囲う人波の外から見ていた未知なるモノは絶句した。
たった一度、剣閃が走った。
否、一瞬の時間、六つの剣閃が同時に走った。
遅れ、剣閃が走った場所にいたプレイヤー、ことごとくが八つ裂きにされ死に戻る。
「お、おいおい、ギーァまでチート化してんじゃねぇか……」
「ギーァ」
包囲網を突破したギーァはそのまま広場を駆け抜け去っていく。
「おい、待て!? あっちはスタート地点だぞ!?」
「ギーァの奴何しに向かって……まさか、遊撃!?」
「い、急いで皆に連絡しねぇと!」
「あ、後を追います、被害が出る前に食い止めないと!」
勇者ブレイドがギーァを追って去っていく。
少しずつ攻略を進めていたプレイヤーたちをまた足止めする要素が増えた。
ギーァが遊撃を始めることで各ルートへ向かうプレイヤーたちの一部がルートを進む前に死に戻るようになったのである。
さらにギーァは神出鬼没。
森に隠れ近くを通るプレイヤーを狩り、移動しては繰り返すゲリラ戦法でプレイヤーたちを苦しめだしたのである。
止めに向かった勇者ブレイドも、スタート地点に向かったと見せかけて森に飛び込み息を殺していたギーァの罠にかかり、背後から襲撃されて死に戻った。




