500.第三回イベント、八日目・お早いお帰りで
「よし、ともかくネネコさん撃破!」
プレイヤーたちは勝利に沸いていた。
今までのメンバーは数日掛けての攻略だったが、ネネコさんは二日目での撃破、かなりのハイペースだと言える。
プレイヤーたちは互いに連絡を取り合い、ネネコさんステージの解放を報告し合う。
未知なるモノたちも驚きながらそちらに向かう、と連絡を入れてはいたが、気の早いプレイヤーたちがすでに次の広場向けて走り出していた。
さらに進め、と駆けるプレイヤーたちが広場へと辿り着く。
「あれ? 誰もいない?」
「姿が隠れてるとか? とりあえず中央迄行ってみようぜ?」
「中央も何も、誰もいないなら次に向かって突撃だろ!」
と、数名のプレイヤーが広場を走り抜けて次の道へと向かおうとする。
勢いよく駆け抜けていく、はずだった。
広場を通り抜けたその刹那、周囲の森から飛び出したディノレクスに首を噛みつかれて絶命する。
あまりにも突然出現したティラノサウルスのような恐竜型エネミーに、皆の足が止まった。
そこへ、暴れサイが森から突進してきてプレイヤーたちを蹴散らしていく。
「クソ、やっぱり罠か!? 敵は誰だ?」
「異世界に出てきた魔物たち!? ってことは異世界からの誰かか?」
「異世界系ってそんなのも味方になってるのかよヒロキンの野郎」
「げぇ、爆裂ハリネズミ!?」
「待て、アレは……メーメーさんの群れだ!? おい、待て、アレは……」
血の気の多いプレイヤーが魔物たちを斬りに向かう。
そうして向かってしまった相手は、100体近く存在していたメーメーさん。
しかも彼らのレベルは……
「おい、なんか全員レベルがおかしいぞ!?」
「レベル999!? バグじゃねーのか!?」
「ってかそのレベルって……」
プレイヤーたちがまさかと気付いた時だった。
森の中から、黒い和服の少女が現れる。
「コトリさん!?」
「えぇ。まだ八日目だぜ。再戦早くない!?」
「はは、お早いお帰りで」
「異界の王……」
ぼそり呟いたコトリさん。
その周囲に魔法陣が生み出され、新たなるタイラントゴリラが召喚される。
また、プレイヤーの一人が切りかかったメーメーさんにより、無数のメーメーさんがリンクし、一斉にプレイヤー向かって殺到する。
「があぁ!? 馬鹿野郎! メーメーさんに攻撃する馬鹿がいるかよ!?」
「すでに死に戻ったのにメーメーさんたち俺ら全員をターゲッティングしてんぞ!?」
「絶望之大地」
「ちょま!?」
もはやコトリさんに遠慮はない。
コトリバコを設置し、即座にリンフォンを作成し始める。
汚染地帯で自分周辺を守り、聖句箱でエルダーリッチを召喚。
さらに等間隔で異界の王を発動し、ランダムで魔物を呼び出していく。
「おい、誰か確殺スキル持ち呼んで……うぼぁ!?」
「クソ、このままじゃまた進めなく……あらばっ」
「絶望之大地はもういいって、っていうかスタート地点じゃないから無限キルはされないけど死に戻り確定は……たわばっ」
「お前ら死ぬときに何か言わないといけない病にでも……あ、死ぬ、ちにゃぁっ」
先行組が軒並み消し飛ばされ、遅れてきた後続が絶望之大地の効果範囲外で立ち往生を開始する。
「封印できる奴は?」
「今はログインしてない。確殺スキル持ちも判明してるメンツは全員ゾンビ祭り中だ」
「ってことは今進めるのはここまでか、っていうかコトリさん復活するの早いって」
「別に人員不足じゃないんだしもう少し暇しててもいいのよ? なんつって」
「ゴブリアさんとネネコさんの戦いで結構な時間経過してたからなぁ。それまでの時間も合わせて、未知なるモノさんたちがここに来てもすぐにタイムアップしそうだね」
「今北産業。コトリさんがでたんだって?」
「おお、未知なるモノさん! ほら見てくれ、なんか動物に囲まれたコトリさんがいるんだ。まさにファンタジー」
「いや待て、動物? どう見ても魔物だよな。しかもヤバそうなの一杯いるんだが?」
「おー、聞いたとおりにメーメーさんいるあるな。というか広場に入った瞬間絶望之大地で継続ダメージと呪い受けまくりながらメーメーさんに囲まれて次々体当たりからの森の動物さんに愛玩されて死滅すると、地獄はここあるか!?」
「異世界転移で出てくる魔物じゃない。メカニカルベアはまだ出てないみたいだけど」
「レベルがおかしいの」
「コトリさんが呼び出したことでレベルもコトリさんに合わせてあるんでしょうね。りんりんさん、狙撃出来そうですか?」
「無理っす。魔物に囲まれすぎてるし、ここから狙っても最悪当たるのはエルダーリッチかな」
「ここまで多いと隠れて暗殺も無理なの」
「だぬさんたちもいないし、今回は見合わせだな。さすがにコトリさんが出た場合は総力戦になるし、他のメンツを呼ぶにしても今回はもう時間だ」
「他のとこを優先するか、コトリさんを倒して先に進むか……迷いますね」
今回のコトリさんはただ倒せばいいだけではない、無数の魔物が邪魔になるためどうしてもコトリさんの隙をついて確殺、という行動に結び付けられないのだ。
結果、本日はコトリさん攻略は見送りとなり、作戦会議が各所で開かれることとなったのであった。




