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499.第三回イベント、八日目・ネネコさん攻略戦・後編

「来いやぁ――――ッ!!」


「ブオルァ――――ッ!!」


 ネネコさんとゴブリアが叫ぶ。

 さすがに回し一丁だけだと垢バン云々でややこしくなるため、Tシャツを着たネネコさんと、アイドル衣装がはち切れそうなほどの筋肉を持つグリーンスキンが土俵の上で対峙していた。

 河童VSゴブリンの異種格闘技戦。

 正直意味不明で両方プレイヤーではなくテイムキャラなのでプレイヤーの出る幕がなくなっているが、皆周辺で応援を行っている。


 一部ネネコさんを応援しているプレイヤーもいるが、ほとんどがゴブリアにネネコさんを倒してもらい、楽して次のステージに行こう、というメンバーばかりである。


「はっけよーい……のこった!」


 いつの間にか行司役を務めているのはタヂさん。皆いつの間にか来ていた彼に疑問はあるものの、敵対してこない様子なので指摘せず放置することにしたらしい。

 タヂさんの声に反応し、ぶつかり合う河童と巨漢女。

 両手同士を掴み合い、中央でギリギリと押し合う。


「のこったのこったっ」


「ぬぎぎぎぎぎぎぎっ」


「ぐぬぅぅぅぅっ」


 力は同等。

 これはレベル差は関係なく、相撲は技術、と考えるネネコさんの固有フィールドにより、力が拮抗しているためである。

 押し合いではらちが明かぬと理解しながら、相手が力で押してくるため押し返さなければならず、ここにしばしの膠着状態が確定した。


 動きがないため、タヂさんが割り入ろうとした瞬間だった。

 ネネコさんが急に力を抜き去る。

 支えがなくなったゴブリアが手前に倒れ、ネネコさんがニヤリと笑む。


「出直して来ぉい」 


 ゴブリアの手から自分の手を離し、ゴブリアの回しを掴み取るネネコさん。

 引っ張り上げようとして、動きが止まった。

 倒れかけたゴブリアがそのままネネコさんに体を預け、両手でネネコさんの回しを掴んだからである。


 浮き上がったゴブリアだが、回しを持ったままだったのでネネコさんのバランスが崩れ、ゴブリアを持ち上げたまま後ろに倒れ始める。


「くっ」


 ギリギリで足を後ろに踏み止まり、ゴブリアを下ろす。


「チャンスね!」


 側面向けてネネコさんを投げ飛ばす。

 しかし投げ飛ばされたネネコさんは真横にスイングされただけで地面に着地し、踏ん張った。

 体を横に振ってしまったゴブリアをそのまま力を加えて押し倒す。


「まだまだァ!!」


 これもゴブリアは耐えきった。

 足を後方に送って踏ん張り利かせ、ネネコさんの一撃を耐え切る。

 再びの膠着。


 互いに汗だくとなりながら、女二人がニヤリと微笑む。

 好戦的な笑みに、嬉しくなったらしく、それを見たタヂさんまで好戦的な笑みを浮かべていた。


「せぁッ!!」


 ネネコさんの外掛け。

 ゴブリアの首投げ。

 ネネコさんの河津掛け。

 ゴブリアの蹴返し。

 ネネコさんの外無双。

 ゴブリアの内無双。

 

 互いに耐え切り相手を倒そうと技を繰り出し失敗する。

 もはや勝負は着かないか? と思われた時だった。

 ずるり、汗により滑った腕をがしりと両手で掴み、一本背負い。

 ゴブリアが宙を舞い、放物線を描いて背中から地面に激突した。


「決まり手は一本背負い! それまでっ!!」


 プレイヤーたちから落胆の声が漏れる。

 ゴブリアが倒され、光となって消えていく。


「そんなゴブリア!」


「次はあんたか? さぁ、相撲しようかぁ!」


 ゴブリアをテイムした少女が無理矢理ネネコさんの前に連れてこられる。

 怒りに満ちた顔を向けるも、ネネコさんは爽快な笑みを浮かべて構える。


「はっけよーい……のこった!」


「行くだ!」


 ぶちかましを行ったその刹那。


「決まり手は、叩き込み! それまで!!」


 ネネコさんは何が起こったか理解できなかった。

 相手に突っ込んだと思った瞬間には自分の目の前が地面に覆われていたのだから。


「ご、ごめんねネネコさん。私、女子相撲優勝してるんです」


「なん、それ……?」


 ネネコさんが光となって消えていく。

 まさかの出来事に誰も彼もが言葉を失い、土俵の上で起こった光景を見送った。

 誰もがネネコさんが勝つだろうと思っていた。

 何よりあの巨漢で唯一勝てそうだったゴブリアが負けたのだ。

 絶対に誰も勝てない、そんな諦めがプレイヤーたちにはあったのだ。

 誰が、ゴブリアのマスターが圧勝するなどと気付けただろうか?


「おめぇさん、いい相撲するじゃねぇか」


「あ、はい」


「ナイスファイトだ。儂から加護をくれてやろう」


 しかもネネコさんに勝ったことでタヂさんに気に入られたらしく加護まで持っていた。

 プレイヤーたちが我に返り勝利に沸いたのは、固有空間が解除され、広場へと戻って来たところであった。

 皆は勝者である少女を称えようとしたものの、彼女は大勢でいることが苦手らしく、ささっとどこかへ消えてしまっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分顎を掠めて脳を揺らしたんだ、 刃牙でやってたんだ間違い無い(笑)
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