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496.第三回イベント、七日目・散紅さん攻略戦・後編

「一応、この矢印はここを差してるんだけど……」


「とりあえずよ、穴の側面の壁、どっちか入れるかもしれねぇ、確かめるにゃ二人死ぬ可能性があるが……」


「どうせ死に戻るだけでしょ、私が行くわ。キカンダーさん、一緒に死んでくれる?」


「お供しよう、こちら側でいいかな?」


「お願い!」


 マイネとキカンダーが迷わず飛び降りる。

 壁際を触りながら降りて行った二人は、そのままどこかに引っかかることも横穴に当たることもなく遥か彼方に消え去った。


「あー。ダメだな。キカンダーはこのイベント中は死亡扱い、マイネは死に戻った」


 グレートマンとキカンダーは消えたが、もう一人残っていたジェイクが頭を掻きながら告げる。


「マジかよ、両方違うってか?」


 壁際には何もない?


『あーあー、聞こえる案内人君。マイネマイネより報告、壁に鍵穴は無し、扉も無し、以上』


 死に戻ったマイネから連絡が来る。

 やはりこの穴自体もフェイクらしい。


「でも、矢印はここを差して……」


 ふと、違和感を覚えた。

 なぜ、こんな事を思ったのか、案内人は自分自身に問いかける。

 何がおかしいと思った?

 そう、それは矢印の位置だ。


 矢印は穴の中を指し示しているが、その矢印が存在するのは……上?

 ふと見上げたその先に、黒い穴があった。

 空中に、ともすれば気付くはずもないくらい、しかし一度気付けば不自然なほどに。

 目線から少しだけ上にずれた場所に、それはあった。


「だぬさん、一番背が高いので、あそこに鍵を、入れて貰えませんか?」


「あそこ? って、おいおい、ありゃ空中だぞ? なんであんな場所に……」


「ちょっと常識にとらわれ過ぎていたのかもしれません。ここは現実世界ではなくゲームの中なのですから、空中であろうとも鍵穴があってもおかしくないんです。だってそこの座標に鍵穴を指定すれば、ゲーム世界でならば普通に存在できるのですから」


 そうだ。矢印が下を向いているからこのステージの下に何かある、という訳ではなかったのだ。

 この矢印はそのまま、矢印の先端がある場所に鍵穴があるというひっかけ。

 そしてそれは人の目線からずれた上空だった。


「グレートマンさんがいないのが悔やまれるの」


「よっと。何とか刺せたな。次のジャンプで回せってか。おりゃっ」


 なんとか落とすことなく回すことが出来た。

 すると、空間から扉が出現し、独りでに開かれていく。


「あらー、見つかっちゃったかぁ」


 不意に、散紅さんの残念がる声が聞こえた。


「じゃ、じゃあ行ってきます」


 まずは自分が、と案内人が扉の中へと入る。

 するとそこは……広場に繋がっていた。

 ゲーム開始前の場所へと脱出した案内人。

 広場へ一歩、踏み出した時だった。

 内包されていたアスレチック脱出インディアンポーカーのステージが崩壊を始める。


 慌てて脱出してくるだぬたち。

 他のプレイヤーも近場のメンバーから脱出を始めるが、ほとんどのプレイヤーはゲームの崩壊に巻き込まれた。

 当然、その中にいた散紅さんもまた、崩壊に巻き込まれて消えていく。


「脱出って、一人脱出しただけで、クリア扱いなのか……」


「実は散紅さんステージが一番楽にクリア可能だったって訳かぁ……」


「あんのメスガキ、分からせる前に負け逃げしやがった! 畜生ッ!!」


 ダヌが思わず叫ぶ、女性陣から白い目で見られているのには気づいてないらしい。

 ともかく、これでこの第三ルートもまた開通したと言っていいだろう。


「先に、向かいましょう皆さん」


「あ、ああ、そうだな」


 案内人たちは広場を後にし、道の先へと歩きだす。

 その先には、また広場。

 どうやら何度か広場を挟んでヒロキの居る場所に辿り着くようだ。

 そして、その広場には、二匹の蛇が、待っていた。


「おお、ツチノコさんじゃん」


「アレがツチノコ? どう見ても頭三つの蛇と壺に入ってる蛇だけど?」


「首に黄色の輪があるなの、土瓶に入ってるし、土瓶神なの」


「まぁった変な進化しやがって、ヒロキのテイムキャラはどうなってんだよ、なぁ案内人」


「そ、そうですね」


 どうやらここは普通に戦いになりそうだ。

 皆が武器を構えた次の瞬間、ツチノコさん一号が三つ首でツチノコさん二号を抱え上げる。


「なんだ?」


 とりゃっとばかりにツチノコさん二号を投げ飛ばし、だぬの真ん前にツチノコさん二号が落下、壺が盛大に割られた。


「お、おいおい。全然届いてねぇ……あん?」


 ちくり、嫌な感触を覚え、だぬは自分の腕を見る。

 何かに、噛まれた跡があった。


「か、鑑定! 鑑定をしろ! 何かいるぞ!!」


「何かって何が……あ、こ、これは……マダにー……さん?」


 呪いの壺に詰め込まれていたマダにーさんの群れがプレイヤーへと襲い掛かる。

 そそくさと逃げ出すツチノコさん二号は広場近くの森へと入り、予備の壺に体を沈めて、土魔法で地面を操りツチノコさん一号の傍へと戻って来た。


 当然、プレイヤー側は大パニック、だぬの体が吹き飛びマダにーさんが群れで飛び出したことでさらに被害が拡大していった。

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[一言] マダにーさんスプラァッシュ!!(他人の体消費)
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