495.第三回イベント、七日目・散紅さん攻略戦・前編
「さて、どうするよ?」
第三ルートに第一ルート攻略の一報が届いた時、案内人とだぬは仲間たちと試行錯誤中だった。
アスレチックコースの中に脱出のヒントがちりばめられているということまではわかったのだが、その先が分からない。
「とりあえず、情報を一度整理しましょう、まずはアスレチックコースの種類から」
入り口のアーチを潜りスタート。
まずは普通の通路から片足ケンケンパ。
ロープウェイで泥川を越えて斜めの通路を駆け上がる。
縦に設置されたネットを掴みあがる。
高低差のある場所へ大ジャンプ
一際細くなった一本道をバランスを取りながら抜ける。
回転する足場に乗り離れた向こう岸へ。
壁しかない通路を両手足の踏ん張りで登る。
時間差で出現する足場を飛び越え向こう岸へ。
ロープ一本を上り最終ステージへ。
傾斜120度の坂を駆け上がって散紅さんの居る場所へ。
散紅さんとインディアンポーカーして勝利。
こうやってやることを並べてみると確かに無謀でしかない。
しかも通路の側面に落下すると死亡扱いである。
「脱出するにしてもルートが見つからんのはどうすりゃいいんだ?」
「んー、どっか落下しても問題ない場所とかないですかね?」
「泥水はどうなの?」
「もしかして泥の中に何かあるとか?」
泥水、といえば入り口近くにあるロープウェイで超える泥川だ。
しかしこれに流されるとコースアウト扱いで死亡するのだが……確かに泥川に落ちただけならまだ死亡扱いにはならず、飛び上がって泥まみれになりながら先行するプレイヤーも確かにいる。
「確かに泥の中なら何かあっても見えないか」
「汚れ仕事はやってやるよ。ちょいと泥の中探ってみるわ」
だぬが率先して泥浚いへと向かう。
「んー、他に怪しいところねぇ。グレートマンさんは全体的に見て回ったんでしょ、気になるとこあった?」
「うぁ!」
え、あるの!?
皆して驚く。
グレートマンが指し示したのは、高低差ジャンプステージ。
その最初一つだ。
最初なので簡単なモノにしているのだろう、最初の足場と同じ高さの足場で空き場もそこまで開いてないので、落ちる方が無理というほどに初心者用の場所だった。
その後は少し高く、少し低く、ぐっと低く、かなり高くとジャンプの仕方次第では攻略できない足場になっている。しかもその足場と足場の間にある間隔も徐々に遠ざかっているのでかなり大変なのだ。
「ウァ!」
「え、一度落ちてみたい!? 死ぬかもしれないけども仕方したら脱出可能かもって? うーんわかった。飛行能力持ちがもしかしたらいなくなるかもだけど、今日一日の辛抱だと思えば、うん、行ってきて!」
マイネにお願いされ、グレートマンが飛んでいく。
「さて、他に何かあるかな?」
「まさか絵文字がミスリード用だったなんてねぇ。案内人さん、ミスリードだと思わせるミスリードって可能性はないですか?」
「多分、ないと思うよ、アレは脱出について気付いた相手をミスリードさせるだけのものだと思う。でも脱出方法は他にあるはずなんだ。どこだろう? ちょっとでも違和感があれば教えてほしい」
「そういえばこのアスレチックの諸注意書かれてたアーチに掛けられたプレート、アレって取り外せないっけ?」
「やってみましょう。すぐに!」
少しでも可能性があればやってみよう。きっとそのどれかが答えに繋がると思うから。
案内人はすぐにアーチに駆け寄り、諸注意の看板を両手で掴む。
掛けられていただけだったので簡単に取り外せた。
そして、その裏には……泥川を表す絵に矢印があり、鍵の絵が描かれていた。
さらに、高低差ステージと思しき絵に下矢印があり、扉の絵が描かれていた。
「予想通りに行きそうなの」
「これ、最初に取ってれば……いや、うん、とりあえずドブ浚いならぬ泥浚いで鍵を見つけよう。川の流れで流されないようにされてるはずだ」
「だったら川の中じゃなくてほら、ちょっと突き出てる斜めの通路の下側、あそこに貼られてない?」
方針が決まれば動きは速かった。
皆でだぬの元へと向かい、場所を伝えると、すぐに鍵は見つかった。
まさかの鍵出現に周辺にいたプレイヤーからも歓声が上がる。
ふと、案内人が見てみれば、ゴール地点でこちらを見ていた散紅さんが爪を噛んで睨んでいた。
「どうやら、これで脱出方法は見つかりそうだね」
「まずは扉の所に行ってみましょ。グレートマンさんが待ってるはずよ」
泥川から上がった泥まみれのだぬを加え、一行はグレートマンのいる高低差ステージへと向かう。
しかし、グレートマンの姿はどこにもなかった。
「あー、ダメだ、グレートマンさん死亡扱いになってる」
「そんな、なんで?」
「ここからは見えないし、下に降り過ぎて死亡扱いになったんでしょ」
脱出迄あと少し、というところでまたも暗礁に乗り上げた。
案内人が散紅へと視線を向けると、何とも小ばかにしたような、にやにやとした笑みを浮かべて見返してきていた。




