492.第三回イベント、六日目・メリッサ攻略戦・後編
「どうしましたー? もう終わりですかー」
迂闊に顔を出すとやられる。
メリッサさんの射撃スキルは正直チートといってもいいだろう。
未知なるモノはふぅっと息を吐き、残り二回となった六連ポッドミサイルを手にする。
『配置付きました』
「無茶をさせてすまんな」
『いえ、むしろお役に立てれて嬉しいです』
格ゲー少女と連携を密に取りながらタイミングを計る。
メリッサさんが目標地点に踏み入った瞬間、未知なるモノはミサイルを発射する。
「いけッ!!」
反撃の射撃で先ほど回復した的がまたペイント塗れになるが、これは必要な犠牲だ。
すぐにペイント落としを使って復活させる。
その間に、メリッサさんの背後に回った格ゲー少女が銃を発射。
メリッサさんの背面にあった的を直撃させる。
「OH!? いつの間に背後に!?」
「やっぱりな。ターゲッティングさえしとけば他の奴からの攻撃は無防備らしいな」
「ハッハー、なんのことかわかりまセーン。ワタシ索敵使えまセーン」
「面白い冗談だ。敵の居場所をそれだけ察知出来ていて索敵系スキルがないわけねぇだろ。おら、トドメだ!」
トドメ、というよりは最後の一回、ミサイルポッドを放出し、未知なるモノは走り出す。
すぐに反応したメリッサが銃撃を加えてくるが、ミサイルポッド自体を盾にして走り寄る。
「そら、俺にばっか気を取られてていいのかァ?」
「ワッツ!? 残念ながらワタシの的は残り全部前側デース」
つまり背後の格ゲー少女からではメリッサさんを銃撃してもペインティングができないのだ。
だから警戒するべきは目の前にいる未知なるモノだけでいい。
「お前らなんでそう傲慢なんだよ。ヒロキの奴はどういう教育してんだ!? レベルが強いからって慢心してんのかよ」
「行きますっ、スキル発動……影渡り」
「ッ!?」
不意に、目前まで迫った未知なるモノの影から格ゲー少女が現れる。
すでに銃で狙いをつけており、出現と同時に発射。
メリッサさんの的をまた一つペイントしていく。
「OH、シット! まさか二度までも!?」
「だから言ったろ俺にばっか気を取られていいのかってよ!」
「もっかい、影渡り!」
「ホワイ!? もう影は……ワタシの!?」
背後に現れた気配に驚き慌てて振り向いた。
そこには、両手を開いてホールドアップした状態の格ゲー少女。
「銃が、ない!?」
「そりゃそうだ。言っただろ、トドメだってなァ!」
格ゲー少女から渡された銃を手にした未知なるモノがメリッサさんの的に銃口を押し当てる。
もはや逃げ場のない状況。メリッサさんは即座に攻撃に転じた。
全ての銃器を未知なるモノに発射する。
それは、互いの武器で互いを屠る一撃だった。
全ての的を射抜かれ未知なるモノが消えていく。
残ったのは格ゲー少女。
そして、残っていたメリッサさんの的は未知なるモノの一撃によりべったりと汚れていた。
「か、勝った?」
「んふっ、残念デース」
どぱっと至近距離からの射撃を受け、格ゲー少女の的もまた、全て汚されてしまう。
「……え? なんで?」
「ペイント落とし、なんでワタシが使えないと思ったデース?」
と、メリッサさんが背中を見せる。
自分がペイントしたはずの背中の的、すでにペイントが落とされ的としての機能を取り戻していた。
「そん……な」
消えていく格ゲー少女が泣きそうな顔をする。
そんな彼女に、メリッサは銃を上に構え、ニカッとほほ笑む。
「ナイスファイト! また殺り合いマショ、ミス格ゲーガー……あら?」
勝利宣言をする直前だった。背中に衝撃。
唯一残っていた背中の的にべったりとペイントがまとわりつく。
「お前が言ったんだ、残りは三人、だとな」
ずっと、隠れていた銃のスペシャリスト。
マイネより未知なるモノが借り受けたメリッサ戦最強の助っ人が、未知なるモノが捨てたはずのスナイパーライフルを手に現れる。
「赫金の銃神……ジェイク?」
「任務完了だ。マイネ、第二ルートは開通した。広場で待つ」
『了解ジェイク。こっちはアイネさん相手に死に戻ったからそっち行くわ』
メリッサさんが敗北し、闇のゲームペイントショットが解除される。
元の広場へと戻ったジェイクは、仲間の到着までしばし、たばこに火を入れ、その場でくゆらせた。
「まさか、あの二人が居なきゃ俺すらやられていたとはな……まだまだだな、俺も」
未知なるモノと格ゲー少女。二人が気を引いてくれたから、メリッサさんはジェイクを忘れたのだ。
もしも、格ゲー少女が見つかるより、自分が先に見つかっていれば、ここに立っていたのはメリッサさんだっただろう。
「精進あるのみ、か」
吸い殻を地面に落とし、靴で踏み消す。
ちょうどやって来たマイネたちに、よお、と片手をあげるのだった。




