490.第三回イベント、六日目・作戦会議
「うおぉぉぉっ!! 普通にスタートできる! スタート地点にラスボスがいねぇ!!」
プレイヤーたちは感動していた。
本日イベント六日目。
前回の五日目でコトリさんが撤退したことで、スタート地点が完全開放されていた。
ログインしてきたプレイヤーたちは、自由行動が解放されていることに感動を覚え、イベント開始からしばし、仲間たちと喜び合う。
「よぉ、未知なるモノ」
「だぬさん、今日は朝昼晩とイベント参加かい?」
「休み取ったんだよ。コトリさんを倒すためにな。まぁ最初の朝だけで予定通りの道連れ使えたからなんとか貢献できたがな」
「皆さん、ここに居ましたか、早速作戦会議しましょう」
二人に遅れ、案内人、格ゲー少女が合流する。
「作戦会議あるか、せっかくなので私たちも情報提供するね」
レイレイが仲間の元に向かおうとしたところで聞こえてきた未知なるモノたちの会話に寄ってくる。
「君は?」
「私はレイレイ、あっちにいるのがパーティー仲間のりんりんと……なのなの? さん」
「プレイヤーネームはなのになってんぞ?」
「えーっ!? でも自分の名前なのなの、って言ってたある!」
「何の話してんのよレイレイ」
レイレイがいつまで待っても近づいてこないので、二人がこちらに来たらしい。
そのまま未知なるモノたちに合流する。
最後に、マイネマイネが正義の味方たちを引き連れログインしてくる。
「おー、スタート地点完全開放されてるのか、いいねー」
「つってもこの先もヤベェのばっかだけどな。とりあえず現状確認からはじめっか」
「じゃあ俺からだな。皆が第一ルートって呼んでるルートに行ってきた。蛇々利さんのステージだな」
「マインスイーパーでしたっけ、どうでした?」
「ああ、うん、ありゃやべぇわ。精神が殺される」
「精神が!?」
「負けても死に戻りじゃねぇからな。永遠六時間のマインスイーパーに強制的に付き合わされる。しかもあの女ミスらねぇんだ。マインスイーパーをやるために生まれてきたようなNPCだぜ」
「そりゃもう、デスゲーム宣言前に殺すのが一番じゃねぇか?」
「そりゃそうかもしれんが、そんな相手のフィールド無視で殺害って、汚名を背負う覚悟がねぇと、これは楽しむイベントだろ?」
「ヒロキが楽しむだけのイベントになりそうだけどねー、なんなら私が即行向かってマンホールで斬ろうか?」
「おいおい、なんだこの物騒なマイネさんはよぉ、こいつこんな性格なの?」
「だぬさんはあんまり接点なかったからな。こいつ正義の味方以外はだいたいこんなもんだぞ。邪魔なら殺せばいいじゃないって精神だ」
「正義の執行者と言ってくれたまえ未知なるモノ君」
「えっと、それで、メリッサさんルートはどうでした?」
このままだと話が進まないとみた案内人が未知なるモノに促す。
「ああ、メリッサさんなら多分今回で攻略できそうだ。前回は勝手がわからず初期状態で遭遇したせいで何もできなかったがな」
「あの人卑怯。火力違いすぎ」
「そう、火力が違いすぎるせいで勝てないんだ。けどある程度の威力ある水鉄砲があれば十分対処できそうだ」
「ならメリッサルートは未知なるモノたちに任せりゃいいか。さすがに俺ぁマインスイーパーをもう一日は無理だぞ。心が壊れちまう」
「だから私が……」
「あー、えっと散紅さんステージなんですけど、ちょっと皆さんにお聞きしたくて」
「あん?」
「あそこの闇のゲームはアスレチック脱出インディアンポーカーなんですが」
「ゲーム内容聞くと一人だけイカレてるよな」
「アスレチックコースをインディアンポーカーしながら脱出するゲームだっけか」
「その、アスレチックとインディアンポーカーはわかるんですが、脱出というワードに引っかかってまして」
皆、想定していなかったようで、脱出? と怪訝な顔をする。
「普通にアスレチックコースをインディアンポーカーしながらゴールを目指すなら脱出とは言わないんじゃないかな、って」
「言われてみりゃそうだが、ゴールを脱出と言ってるだけじゃねーのか?」
「そういわれるとそうなんですけど……」
「つまり、あんたこういいたいのね。アスレチックコースをインディアンポーカーしながら、脱出するゲーム。あの闇のゲームはアスレチック脱出とインディアンポーカーの二つのゲームを融合したものじゃなく、アスレチックコース攻略ゲーム、インディアンポーカーゲーム、そして脱出ゲームの三つを複合させたゲームだって」
「そう、多分それです!」
今まで疑惑でしかなかった考えが、急に形を持った。
そうだ、と案内人は納得する。二つのゲームを同時にやってると考えていたから違うのだ。三つのゲームの複合、そしてアスレチックコースの攻略にはインディアンポーカーが邪魔でインディアンポーカーを成立させるためにはアスレチックコースをクリアして散紅さんの元へ辿り着かないとゲームにならない。
でも、ここに脱出ゲームが混ざったのなら。
「アスレチックコースを攻略せず脱出するルートがある!?」
それが案内人が引っかかっていた考えの答えだった。
「おいおい、こりゃもしかしたら一気に攻略進むんじゃね?」
「実際見つけるまでどれくらいかかるかわかりませんから何とも言えませんけど、今までよりは攻略できる可能性が高いかと思います」
「なら俺もアスレチックコース手伝うぜ、見つけようぜ案内人、俺たちでメスガキ攻略法をよぉ!」
「だぬさん、なんか活き活きしてません?」
「そりゃもうメスガキわからせとか、やりがいしかね……おい、待て、違う、そんな白い眼で見ンじゃねぇ! 俺はただ純粋に、いや、そうじゃなくて、ああ、説明が難しい、未知なるモノ、なんとかしてくれっ」
「俺に振られても……そういやレイレイさんだっけ、君らも情報共有できるみたいだけど、どんな情報かな?」
「あ、そうですそうです。実は私たち外の森迂回したあるよ、そしたらアラクネ服飾店のアラクネたちが森に蜘蛛の巣張ってたね。ヒロキの奴NPCの知り合いにも声掛けてるみたいある」
「アラクネ服飾店っていやぁ、あのアラクネだらけの店か。意外と良い品多いんだよな。え、アレが敵なのか!?」
「あくまで奇襲しようとしたら出会うみたいですよ。私たちが左側の森を迂回しましたけど、右の森迂回しても他の誰かが奇襲防止してると思います」
「油断したの。蜘蛛に辱められたなの」
ゆるせんっと憤慨するなの、しかし彼女の言葉に意識を向けているメンツはいなかった。
「ルート内の間の森はアイネさん、外はアラクネか。ヒロキの奴本当に万全の体制でイベントに臨んでやがるな」
「板で情報拾ってるが、動画解析班から闇のゲームイベント一部開放されたってよ。ただ、どこで誰が仲間になったかがわかるだけでゲーム内容とかは不明らしい」
「攻略しないと次が出てこないわけか」
「あと、アイネさんの知り合いと出会ったときの動画も放出されたらしい」
それはちょっと見たいかも、と思いながら、未知なるモノは戦いに向けて情報交換を終えるのだった。




