表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

483/1112

480.第三回イベント、二日目・森を統べし者

「クソ、奇襲失敗か!?」


「焦るな、敵を見定め倒せば終わりだ!」


「おそらく運営が放ったNPCだろ。さっさと潰して先を急ぐぞ!」


「油断するなよ。相手はあの外道少年だ!」


 円陣を組んで敵を見定める。

 深い森の中、風に揺れる木々の合間に、何かが走る。


「そこっ!」


 六人の英雄は一斉に動いた。

 一人は槍を投げ飛ばし、一人は魔法で皆にバフを掛ける。

 大盾を構えた男の背後で魔術を練り上げる少女。

 サラリーマン風の男が名刺を手裏剣の如く投げ、少年が目を閉じ集中する。


「右だ! 来るぞッ!!」


「こっちだと!?」


 少年の言葉に想定外の場所だと焦るプレイヤーたち。

 しかし、彼らの意識がそちらに向いてしばし、森は何の変化も見せなかった。


「おい、どこだよ?」


「来ない?」


「いや、近づいてる。なぜだ!? 俺の索敵レーダーにはもう目の前に赤い点が……」


「はっ! 上だッ!!」


 気付いたサラリーマン風の男が叫ぶ。

 皆が見上げたその刹那。

 真上より落下してきたソレが槍を投げた男の頭を砕く。


 一人のプレイヤーが死に戻りする中、空よりの急襲者が地面に降り立った。


「ようこそ、ワタシの庭へ」


「あ、アイネ……だと」


 アイネルシャントーハス・プレハラリアーマ・フェスフェスフェヘリヘ。

 宇宙からの刺客は今回、ルートを外れてくるであろうプレイヤーたちの迎撃のため、遊撃隊隊長としてここにいた。

 そう、遊撃隊、隊長である。


「はっ!? か、囲まれてる!?」


「おい索敵係、なんで気付かなかった!?」


「わ、わからない、急に赤い点がいくつも、な、なんだよアレ!?」


「ワタシの親族、皆で狩りする」


「親族以外も居るがな」


 一気に距離を詰めてくるアベイユ星人たち。

 さらに黒とオレンジの触手を持つ女性がタンク役の男を絡め捕る。


「ちょ、待って、俺男!?」


「だからどうした?」


「まっ、なんかしまりがやば……ア゛―――――――ッ」


「ちょ、ヤバいじゃん、タンクと突撃役がいなくなったらどうやって勝てと!?」


「というか、こいつら強すぎる!?」


「狩る、姉のように、なる」


「アイネ姉のように、強く」


 迫りくるアベイユ星人の群れに、プレイヤーたちはなすすべなく倒されていく。

 それはそうだろう、たった六人に倍以上のアベイユ星人たちが襲い掛かっているのだ。

 それもレベル250平均の凶悪な宇宙人たちが、である。


 多くても100、先行部隊ということもあり、そこまでレベルは高くない彼らがいくら奮闘しようとも、圧倒的なレベル差と数を覆すことなどできないのだった。

 結果、死に戻った彼らはスタート地点へと舞い戻り、対コトリさんゾンビアタック組に加わらずをえなかったのである。


「あー、くそ、死んだっ!」


 早速呪滅結界内に戻された奇襲班は、互いに顔を合わせた段階で任務失敗を悟る。

 正直、上手く行くなんて思ってはいなかった。

 もしかしたら行けるかな、程度の試みだ。


 なによりまだあきらめる気など全然ない。

 アイネさんが常道以外を守っていると分かっただけでも儲けものだ。

 常道を行く分にはアイネさんとその親族に鉢合わせることもないとわかったのだから。


 アイネさんが一番恐ろしいのはその尾に付いた卵管だ。アレを刺されて卵を産まれたが最後、そのプレイヤーは腹から爆発するように殺され、精神的なトラウマまで植え付けられる。

 奇襲さえしなければ出会うことがないというのであれば、幾分嬉しい誤算であろう。


「しかし、強かったな」


「アイネさんに急襲されて頭を割られたんだが?」

 

「よかったなアイネさん受け止められて」


「物理的に粉砕されたんだが!? びっくりしたわっ」


「私それを間近で見せられたんだけど。人がスイカ割りされるとかなにこのトラウマ」


「全てヒロキが悪いんだ。あいつのせいだ」


「絶対殺す」


「せめて一撃は殴りたいよな」


「おい、そっち終わったなら手伝え、コトリさんに全集中してくれっ」


 そこは死山血河の地獄絵図だった。

 沢山の死があった。

 あらゆるプレイヤーが死に絶えていた。

 死んでも蘇り、特攻してはまた死んで、コトリさんのHPを少しずつ削っていく。


「お、おいおい、なんか全然削れてなくね?」


「HPバー6分の1くらいしか減ってないんじゃない?」


「むしろ削った方だよッ、俺らの全力叩き込んでようやくこれだぞ。もう時間も少ない。多分この状態で続くなら削り切るのは六日後だ」


「しかもまだスキル隠しまくってんだよコトリさん。最悪十日はここに縛り付けられるぞ」


「なんか方法ねぇのか?」


「朝いた奴が俺なら勝てるとか言ってたけど、あいつ朝イベントしかログインできないんだ。明日の朝だから四日目の戦闘だな。上手くやってくれりゃいいが……」


「コトリさん硬すぎ。っていうかステータスおかしいだろ。少し前まで450レベルだぞ、なんで倍近くレベルアップしてんの!?」


「それだけ特級呪物集めたんだろ。ったく、なんだよハッカイって。化け物じゃねぇか、コトリさん一人いればレイドボスとして十分すぎるっつの」


 まったくだ、と不満を漏らしつつも、この場の誰もまだ、諦める気持ちなど一人も持っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ