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480.第三回イベント、二日目

 イベント二日目、または現実世界一日目昼の部六時間。

 スタート地点にやって来たプレイヤーたちは即座に行動を開始する。

 現れたコトリさんが動き出すより早く、奇襲部隊は全速力で森に突っ込む。


「呪滅結界」


 フィールドが結界に阻まれスタート地点に居る全ての者たちがその場に閉じ込められる。

 難を逃れた者は数名。

 加速スキルをめいっぱい使ったおかげでコトリさんの結界が張られる前に脱出できたのだ。


「確定スキル封印、絶望之大地ッ!」


「あら?」


 プレイヤーの一人がスキルを使う。

 たった一つだけ確実に封印できる特殊スキル。

 おそらく彼だけだろう。これを覚えているのは。

 ゆえにこそ、この能力は今、ここで輝く!


「全員戦闘態勢! ここでコトリさんを鎮めるぞ!!」


「俺の能力は生存者一人につき一度きりだ、しかし相手が生きている間永続するスキルだぜ!」


「それってコトリさんが死んだら封印解けるのか」


「でも問題はないだろ、ここじゃヒロキチームは死んだ時点でもう戻ってこれないし、もっかい掛け直せばいい」


 もしも普通のステージであれば、コトリさんが死んだ後に復活すればまた絶望之大地を使ってくるだろうが、ここに関して死んでしまえばもうイベントには戻ってこれない。


「今回は案内人がいないぞ」


「未知なるモノさんはいるだろ。他のメンバーも結構強いのがいるじゃねぇか、全員で抗えばなんとかなる、はずっ。ほら、HPだって減ったままになるんだろ、削って行きゃ倒せるはずだ」


「そうさ、1ダメージだって極めればボスすら倒せる。皆、死力を尽くせ! どうせ何度だって死ねるんだ。遠慮はいらねぇ、死にまくりながらぶっ倒すぞ!!」


 まさに、プレイヤーだからこそできる必殺攻撃。その名をゾンビアタック。

 死んで復活して攻撃して死んで復活してを繰り返す。

 1ダメージだろうとログインしているメンバー全員が与えれば数千、数万のダメージに匹敵する。


「塵積って山となる、塵積、塵積っ」


「仕方ないですね、ちょっと遊んで差し上げます」


 コトリさんが懐から何かを取り出す。


「リンフォンだと!?」


「ちょ、前回イベントと一緒じゃねぇか!?」


「この六時間はダメージ与えるだけに留めろ、とにかくダメージを与え続ければ勝てる、今回だけで勝つ必要はないんだ!」


「っしゃ、俺の貫通を食らえッ!!」


「馬鹿!? 突出するんじゃねぇ!」


 コトリさんの攻撃は前回イベントとほぼ同じだった。

 周囲に簒奪の御手をまき散らし、呪われた相手を闇への誘いで呪殺し、深淵の捕食で遠距離を無力化していく。

 しかし、今回はプレイヤーもただやられるだけではなかった。


 たとえ死ぬとしても一撃。

 コトリさんに与えて消えていく。


「あ、そうだった、ダメージエフェクト!」


 格ゲー少女が今思い出したというように、スキルを使う。

 すると、1ダメージが何度も上がっているのが見えた。


「くっそ、防御力も高けぇ!?」


「貫通ダメージで8とか、なんだそれ!?」


「誰かバフかけろ! 防御力減らさないと満足にダメージ与えられないぞ!」


「てかHPバーがおかしくね!? 三つぐらいバーが緑なんですが」


「馬鹿どもが、ここは貫通じゃねぇ、固定ダメージ攻撃するんだよっ! くらいや「呪殺」あぼぁ!?」


 固定ダメージ持ちだったのだろう、残念ながらダメージを与える前にコトリさんの呪殺術を食らい消え去った。

 少しして、復活した男が再度突撃するも、すでにターゲッティングされたらしく、近づく前に呪殺されていく。


「って、ちょっと物理ダメージ通らないじゃん!? 私物理特化!」


「物理無効って書いてあんだろ、ステータス見てないのかよ!?」


「HPどんだけあるんだよっ、もう二時間終わって全然減ってねぇぞ!」


「減ってるだろ、緑から黒になってるとこドット数ミリあんだろが!」


「誤差の範囲じゃボケェ!」


 時に協力し、時に罵り合い、プレイヤーたちがコトリさんと激闘を開始する。

 そんな中、コトリさんの結界を超えた奇襲部隊は森の中をひた走っていた。

 メンバーはたった十名。

 しかし、精鋭ともいえる十名だ。


「目指すはヒロキ、一気に行くぞ!」


 彼らは三つのルートから外れた森の中を走っている。

 ルートを無理に向かう必要はない。

 そちらは他の奴らがやればいい。

 自分たちが目指すのは道なき道を攻略してのヒロキへの奇襲。


 成功すれば一撃でイベントクリアの偉業達成。

 どうせまだまだプレイヤーは来ないと油断しているヒロキの側頭部に風穴を開ける。

 そのためだけに、奇襲部隊は全力を尽くしていた。

 尽くしていた、はずだった。


「おい、なんか、メンバー少なくなってないか?」


「はぁ? 何言って……8人? いや、7?」


「と、止まれ! なんかやばい!」


「え、円陣を組め! 攻撃されてるぞ!?」


 とっさに円陣を組む。そのメンバーは、すでに六人に減っていた。

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