47.神隠し隠連暮(かくれんぼ)・11
スーパーメレオン星人が四つん這いになる。
巨大な体躯を二足歩行で支えるのは無理だったようだ。
天井に頭がついて凄く動きづらそうだったせいもあるかもしれない。
攻撃パターンは単純。
俺達の一人、もっともタゲを取った人物に向って口から破壊光線を吐きだし、咆哮。そして舌の鞭が一定範囲に放たれ縦横無尽に打ち据える。
恐らくHPが減ればさらに攻撃パターンが増えるんだろうけど、この二種類しか攻撃方法がないようだった。
タゲ取りはスーパーメレオン星人に最もダメージを与えた相手を優先して来るので、今はテケテケさんをおっかけている最中だ。
逃げながら鎌で切りつけまくっているので一番ダメージを与えてくれているのだ。機動力も高いしテケテケさんはメインアタッカーだな。
さらにテケテケさんに意識が向うとハナコさんが遠距離からの鬼火攻撃。
こっちの威力も馬鹿にならないので一瞬だけタゲがハナコさんへと向う。
破壊光線が襲いかかったり鞭攻撃が襲ってくるが、ハナコさんは幽体なので物理攻撃は全てすり抜ける。
正直に言おう、ハナコさんが居る時点で勝ち確なのである。
実際このスーパーメレオン星人。幽霊への対抗策が全く無い。
破壊光線がもしかしたら、という不安はあったモノの、完全な物理属性だったようだ。
御蔭でハナコさんへのダメージが一切通らない、ずっと私のターン状態なのである。
あ、体力半分切ったら完全擬態し始めた。
でも透明になっただけでその場から動けてないからダメージ喰らって完全擬態が解けるという無限Kill状態に入ってしまったらしい。
透明になる→鬼火で大ダメージ→透明化解除→透明になるを繰り返し始めたのだ。
恐らく透明になったあと動いて攻撃、とかのパターン行動を取ろうとしているのだが、透明になった時点でキャンセルされるために同じ行動を繰り返すことになってしまったらしい。
一応、これは後で運営に伝えておこう。ハメ殺し対策がされるはずだ。
でもとりあえず伝えるのは戦い終わった後だな。今は忙しい、というか、敵に塩を送るとかしたくない。
体力がレッドゾーンに突入すると、再び行動パターンが切り替わった。
周囲のメレオン星人に舌を絡めて食べ始めたのだ。
しかも一体食べるごとに体力が回復して全能力がアップする。
残った数が少なかったからすぐに打ち止めになったけど、それでも結構食われた。
「グレートマン、こっちはもういい。何か嫌な予感がする。子供たちの傍で防衛に回ってくれ」
「ウァッ!」
未知なるモノさんに言われてグレートマンがこちらに来る。
テイム主であるマイネさんの元に戻ったその刹那。
ぎょろりとスーパーメレオン星人の視線が俺達に向けられる。
「マズい、燦華と緑香をっ」
「ウァッ!」
鋭い舌が襲いかかる。
が、ソレを事前に弾き返すグレートマンのグレートバリア。
バリア、張れるのか……
「ちょっと、こっちだって言ってるでしょ!? なんで攻撃対象変えるのよ!?」
「攻撃対象じゃねぇ、捕食吸収対象だ。弱い奴から食われるぞ。絶対に守り切れッ」
テケテケさんが憤慨し、未知なるモノさんが最後のメレオン星人を撃破する。
「ヒロキ、他に敵は!?」
「居ませんっ。あとはその巨大生物だけですっ」
「了解、ハナコさんテケテケさん、俺も参加するぜっ」
言うが速いか、スーパーメレオン星人の脇腹に向うと、思い切り手刀を突き入れ、切れ込みに両手を差し込むと、力一杯引き裂いた。
スーパーメレオン星人が声にならない悲鳴を上げる。
「お、美味っ。味はともかく破壊光線覚えた!」
未知なるモノさんが人外過ぎるんですが!?
「あんたが一番死にやすいんだから攻撃喰らわないでよっ」
「内側に入りゃ問題ねーだろ。内から食って来る」
戦法がえげつない!?
「仕方ない。そんじゃおねーさんが逆側でタゲ取りするわ。一気に入りなさいっ」
「任せろ」
『大きいの行くわよッ。【赤いちゃんちゃんこ着せましょか?】』
どうやら必殺スキルみたいなものらしい。
俺達には聞こえないがスーパーメレオン星人には赤いちゃんちゃんこ着せましょか~とハナコさんが歌うように尋ねているんだろう。
しかし相手は言葉をしゃべらないので答えない。
どうするのかと思って見ていれば、どうやら時間経過でも発動するようだ。
突然スーパーメレオン星人の全身が何もしてないのに切り裂かれて全身真っ青に染まる。
青いちゃんちゃんこぉ!?
『あらごめんなさい。血が赤じゃなかったから青いちゃんちゃんこなのね』
こわっ。赤いちゃんちゃんこの能力ヤバ過ぎでしょ!?
恐らくだけど呪い属性のスキルだ。
正しく返答しないと呪いが時間経過で発動し、大ダメージ、状態変化に出血、貧血、癒えない裂傷(呪)が付与されるらしい。しかもこれ、呪い解かないと解除されない状態異常だ。
「ケケケケケケッ、ナイスハナコ! ならおねーさんもッ」
悲鳴を上げるスーパーメレオン星人が意識を逸らしたその刹那。
スーパーメレオン星人が怒りと共にハナコさんへと伸ばした舌を、根元から切断する。
「これが【魂狩り】よっ! 次は尻尾、そして下半身。最後に首ぃっケケケケケケケケ」
遠距離攻撃を失ったスーパーメレオン星人が暴れ出す。
ソレを待っていたのが二人の男女。
「ウァッ!!」
攻撃が来なくなると察した瞬間、バリアを止めたグレートマンが飛び出す拳を放つ。
さらに稲荷さんが神通力で起こした竜巻がスーパーメレオン星人向けて発生する。
「切り裂かれるがいいっ」
さすがにこれは、過剰攻撃……この面子だけで普通にレイド戦しちゃってるよ。




